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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第2章】StrikerSの補完、および、後日譚。
【第10節】背景設定2: ミッドの歴史と地理について。(前編)
前書き
公式の設定では、「ミッドの歴史」について特に何も語られてはいないようですが、この作品では、『ミッドチルダは元々「無人の世界」だった』という設定で行きます。
今から三千年ほど昔、「遠からず滅亡することが確実となった世界」から、その無人世界にある六大陸の中でも最小の、北半球の中緯度地帯にある「東西に長く伸びた長方形」のような形をした大陸に、数十万人規模の人々が大挙して移住し、その大陸のおおよそ「中央のあたり」に拡がる、大きな「内陸湖」の南岸部に居を構えました。
これが、ミッドチルダの歴史学上の用語で言う〈最初の人々〉です。
(一説によれば、〈アルハザードの民〉が〈大断絶〉に際して、彼等をこの「始まりの土地」へと移してくれたのだそうですが、実を言うと、『それ以前に〈最初の人々〉が一体どの世界に住んでいたのか』については、今もよく解っていません。)
「ミッドチルダ」という単語も、元来は彼等自身の古典語で、単に「中央のあたり」を意味する言葉でしかなかったのですが、それがそのまま「自分たちが今、住んでいる地域」という意味で用いられるようになり、居住域の拡大に伴って、その単語がいつしか「その大陸、全体」を意味する地名と化し、さらに後の時代になってから「その世界(惑星)、全体」を意味する名称へと転用されたのです。
ミッドの人々はただ単に、『今から1800年ほど前に初めて他の世界と交流を持ち、「自分たちの世界、全体」を表す名前が必要となった時に、「昔からある名前」をそのまま使ってしまった』というだけのことで、少なくとも当時はまだ『自分たちの世界が「次元世界全体」の中心だ』などと本気で考えていた訳ではありません。
また、「ミッドチルダ」という単語がもっぱら「世界の名称」として用いられるようになってからは、その大陸は正式には〈第一大陸〉と呼ばれ、〈ミッドチルダ世界〉と「一応は」区別されるようになりました。
しかし、他の五大陸には今も基本的に人間が居住していないため、普通に「ミッド」と言えば、現在でも「ミッドチルダ世界の第一大陸」の意味に受け取られてしまうことが多いようです。
(Vividにも、しばしば「ミッド中央」という用語が出て来ますが、これも正確には「ミッドチルダ世界の、〈第一大陸〉の、中央部」という意味です。)
【実際、Forceのコミックス第6巻には「ミッドチルダ東端部」という表現が出て来るのですが、もしも、ここで言う「ミッドチルダ」が〈地球〉と同じような「独立した一個の惑星、全体」の名前であるのならば、そこに「東の端っこ」など存在するはずがありません。
したがって、ここで言う「ミッドチルダ」は、決して「惑星全体」の名前ではなく、「惑星上の一定領域」の名前であるはずです。
(例えば、日本列島の存在する場所は、あくまでも「ユーラシア大陸の」東端部であって、決して「地球の」東端部ではありません。それと同じ話です。)
しかし、本来の設定では、「ミッドチルダ」は明らかに〈第1管理世界〉の名称であり、地球が丸ごと〈第97管理外世界〉と呼ばれている以上は、本来は「ミッドチルダ」もまた「世界(独立した一個の惑星)、全体」の名称であるはずです。
私は『この矛盾を何とかしよう』と自分なりに考えて、上記のような設定に辿り着きました。
また、VividおよびForceのコミックスを読んでいると、「ミッドチルダ」という単語が「もっとずっと狭い領域」を指す用語として使われているような気もするのですが……この作品では、ミッドチルダ世界の〈第一大陸〉の総面積を「地球のオーストラリア大陸よりもわずかに広い程度」と想定して、話を進めることにします。】
【なお、他の五大陸について、ごく大雑把に説明すると、以下のとおりとなります。
まず、〈第二大陸〉は、第一大陸の南西方向にあり、赤道を中心に北回帰線(ミッドでは、北緯18度線)のあたりから南回帰線のあたりにまで拡がる「ミッドで最大の大陸」です。面積は第一大陸の4倍あまりで、平地のほとんどを熱帯雨林に覆われた「密林の大陸」となっています。
次に、〈第三大陸〉は、第一大陸の北東方向にあり、概形は「直径の側を北に向けた半円形」です。面積は第一大陸のほぼ2倍ですが、全体的に標高が高く、内容的には「巨大高原と巨大氷河の大陸」となっています。
(ミッドの海面が今なお「わずかながら」上昇を続けているのは、この巨大氷河が極めてゆっくりと溶け続けているからなのです。)
そして、〈第四大陸〉は、第一大陸のはるか南方、南半球の中緯度地帯にあり、面積は第一大陸の3倍ほどです。歴史的に見ると「大陸移動」において長らく孤立していたため、他の五大陸とは生物相が随分と異なっており、(せいぜい鰐のようなサイズの、小型のモノばかりですが)何種類もの竜族が今も普通に生息しているため、一般には「竜の大陸」と呼ばれています。
(当然ですが、生態系保全のため、管理局の「自然保護隊」に属する専門家たちを除いて、人間の上陸は一切許可されていません。)
また、〈第五大陸〉は、第四大陸の東方にあり、南半球の赤道付近から高緯度地帯にまで長々と南北に伸びた「山岳の大陸」ですが、東西の幅がかなり狭いので、面積は第一大陸の2倍たらずとなっています。
この大陸の南端部を形成する火山列島とその延長である海底山脈は、昔からこの惑星上では最も火山活動の激しい地域でしたが、一連の海底火山が莫大な量の溶岩を何百年にも亘って噴出し続けたことによって、ベルカ世界で「聖王戦争」が始まった頃には、とうとう第五大陸は第六大陸と地続きになってしまいました。
その〈第六大陸〉とは、俗に言う「南極大陸」です。概形は「南極点を中心とした、きれいな円形」で、面積は第一大陸のほぼ4倍です。昔は大陸全体が氷床に覆われていましたが、旧暦の時代の温暖化により、それらの氷床は「すべて」融解しました。
その結果、一時期は大陸全土で「地肌」がむき出しになり、表土の流出が続いていましたが、今では(主に、コケ類ですが)植物もそれなりに生えて来ています。
(実は、この二つの大陸が「地続き」になったこと自体が「旧暦の時代の温暖化」の直接の原因なのですが……詳しくは、また「第一部」でやります。)】
なお、その〈第一大陸〉には当初、「家畜化できそうな動物」が全く住んでいませんでした。
(ついでに言うと、サルのような霊長類も、ネズミのような「小型の」齧歯類も、また、両生類の類も全く生息していませんでした。)
草食動物も、山羊や野牛など、妙に気性の荒い生き物ばかりで、『群れごと飼いならして、計画的に毛や乳や革や肉を手に入れる』という作業が(つまり、「牧畜」という作業が)全くできませんでした。
(現存するウマやウシやブタやヒツジなどは、すべて、ミッドチルダが1200年ほど前に「聖王家直轄領」となった後に、ベルカ世界からもたらされたものなのです。)
肉食動物の山猫や狼たちも、「突然この世界に現れた、二足歩行の奇妙な生き物」を警戒して、全く「人間」に近づこうとはしなかったため、人間の側としても、長い間、彼等を家畜化してイエネコやイヌのような「良き隣人」にすることができませんでした。
ネズミがいないので、イエネコもまた「必要不可欠の存在」という訳ではなかったのですが……優秀な猟犬がいないのでは、「狩猟」も、できることは限られて来ます。
それ故、ミッドチルダにおける〈最初の人々〉が、「農耕」と「漁労」を中心とする生活を送り始めたのは、全く当然の成り行きでした。
(幸い、穀物の種だけは、最初から大量に持ち込まれていたようです。)
その「内陸湖」は最初から塩水湖だったので、飲み水や灌漑用水などは別の場所に求めざるを得ませんでしたが、それでも、その内陸湖には魚が極めて豊富に生息していたため、〈最初の人々〉は誰も飢えずに済んだ、と伝えられています。
こうして、ミッドチルダには「魚食文化」が根づいて行きました。
(あるいは、〈最初の人々〉は「元の世界」でも伝統的に農耕と漁労が中心の生活を送っていたのかも知れません。)
後に、人口の増加に伴い、「分派」が内陸湖の周辺を離れて遠く別の土地へと移住する際にも、彼等の多くは「漁労」が可能な河川域や海岸部に新天地を求めました。
そして、当時は惑星ミッドチルダ全体が今よりもずっと寒冷な気候だったため、彼等はもっぱら大陸の南側に住み着き、やがて、ミッド人は「東西に長く伸びた〈第一大陸〉の南側半分」に広く分布するようになって行きました。
もちろん、『当時のミッドでは、狩猟や採集が全く行なわれていなかった』という訳ではありません。さまざまな野草や果実が採集の対象となる一方で、狩猟の対象となったのは、もっぱら「空を飛ぶことのできない大型鳥類」でした。
大型鳥類は当時、その第一大陸で「食物連鎖の頂点」に立っていたからでしょうか。哺乳動物と違って、人間に対する警戒心がとても低かったため、単純な罠でいくらでも簡単に捕まえることができたのです。
しかし、そうした乱獲の結果、第一大陸の南側半分(人類の居住域)では、大型鳥類は早々に絶滅してしまいました。
この一件が「ちょっとしたトラウマ」になり、後に、ミッド人の意識を大きく変えてゆくことになります。
また、ミッドの人々は最初から、自分たちの言語に適した「28文字から成る、独自の表音文字」(いわゆる、ミッド文字)を使用しており、決して「未開な人々」ではありませんでした。
しかし、当初は文明も「古代氏族制」の段階で、公共の教育機関も無く、識字率も低く、宗教もまた、良くも悪しくも原始的な「自然崇拝」でした。
また、最初の1200年ほどは、ミッドが「他の世界」と交流を持ったことは一度も無かった、と言います。
(もちろん、アルハザードとの交流も、全くありませんでした。)
そうした中で、最初にミッドチルダを訪れたのは、今で言う〈第35管理外世界・号天〉の人々でした。
今から1800あまり年前。〈号天〉では「第五統一王朝」の時代で、ちょうど〈アルハザード〉が「次元世界からの撤退」を完了した直後のことです。
以後、百数十年間に亘って、〈号天〉からは実にさまざまな文化と文物が断続的に流入し続け、ミッド人の意識と暮らしぶりを大きく変えていきました。
【なお、〈外35号天〉はかなり歴史の古い世界で、その独特な文化は大昔から周辺の諸世界に大きな影響を及ぼして来ました。現代でも、ミッドで普通に「東方の宗教」と言ったら、それは「号天を経由して渡来した宗教」という意味の用語です。
(よく似た文化のある〈管10ルーフェン〉や〈管11セクターティ〉も、元々は〈号天〉の植民地だった、という設定で行きます。)
しかしながら、今から1600年あまり前、いわゆる〈次元世界大戦〉の直前の時代に、局所的な〈次元震〉が発生し、それに巻き込まれた〈惑星・号天〉は、自転軸の傾きが「18度たらずから21度あまりにまで」大きくなってしまいました。
この天変地異によって、〈号天〉の人口は一挙に半減し、その勢力は軍事的にも政治的にも経済的にも文化的にも著しく後退しました。
(中には、『そのおかげで、〈号天〉は〈次元世界大戦〉の折りにも、〈ゆりかご〉から直接の攻撃を受けずに済んだのだ』などと言う人もいますが、それは単なる結果論です。)
〈号天〉は、その後も長らく「過去の栄光を取り戻そうと、時おり近隣の世界に戦争を仕掛けることができる程度の国力」は維持していたのですが、今から800年あまり前に(ベルカ世界で「第二戦乱期」が始まる少し前に)再び「揺り戻し」のような〈次元震〉に見舞われた結果、さらに荒廃し、今ではもう他の世界に対する影響力を完全に失ってしまっています。】
二度にわたる天変地異によって、今ではもう見る影もなく没落してしまっていますが、その当時の〈号天〉は実に強大な国家でした。
ミッドを訪れたのは、ルーフェン経由でやって来た「交易商人の船団」だったので、それ自体は決して「軍事的な脅威」ではなかったのですが、その高度に発達した文化と文物は、ミッド人の意識を打ちのめすには充分なものでした。
何しろ、当時のミッド人にとっては、次元航行船を見るのも初めてなら、「全く言葉が通じない人間」を見ることすら初めてのことだったのです。
(当然ですが、当時はまだ「全自動翻訳機」などありませんでした。)
もちろん、当時のミッドには「惑星全体を代表できるような政府や組織」は、まだ存在していません。「この世界の名前(自称)」を訊かれても、「ミッドチルダ」と答える以外には、どうしようもありませんでした。
端的に言って、当時のミッドは『個々の氏族が統治する「個々の都市」を中心とした、何百もの伝統的な地域共同体が「なんとなく」一つにまとまっているだけ』といった状況で、まだ「国家という概念」すら明瞭な形では存在していなかったのです。
ただ、国家という「地域的なまとまり」が無かっただけに、地域間の「政治的な対立」や「軍事的な衝突」もまた存在していなかった(少なくとも、表面化はしていなかった)ことは、ミッドの歴史において、とても幸運なことでした。
やがて、「始まりの土地」にそのまま住み続けていた人々が音頭を取る形で、「何百もの地域共同体」は次第に「一個の国家」にまとまっていきます。
そして、その土地に新たに築かれた巨大都市パドマーレが、そのまま「ミッドチルダ中央政府の首都」となったのでした。
【巨大都市とは言っても、それはただ単に『当時のミッド人の普通の感覚としては、格別の大きさだった』というだけのことで、実際には、パドマーレの最初期の人口はせいぜい10万人程度だったようです。
(なお、当時の〈号天〉の人々にとっては、「人口10万人」というのは単なる「辺境の小都市」のサイズでした。)】
また、〈号天〉から伝わった「表語文字」は、ミッドでは古来、〈号天文字〉と呼ばれており、その文字で書かれた「文章語」は、ミッドでは今でも「古代ベルカ語」と双璧を成す「古典教養」として(あるいは、「高等教育を受けた証」として)扱われています。
【漢字は、日本では一般に「表意文字」と呼ばれていますが、言語学的に言うと、『個々の文字が個々の「単語」を表現している』という意味で、「表語文字」と呼んだ方がより適切なようです。
また、上記の「文章語」は、要するに「漢文」のようなモノだと思ってやって下さい。昔の漢語と同様、当時の〈号天〉でも「話し言葉」と「書き言葉」は、相当にかけ離れていましたが、ミッドで古典教養になっているのは、あくまでも「書き言葉」の方だけです。
(ちなみに、古代ベルカ語も「方言の差が激しい言語」だったため、古典教養となっているのは、やはり「標準化された書き言葉」の方だけです。)】
なお、〈号天〉は太古より『異形の竜族が多数、生息する』という、生態学的にも特異な世界であり、さらには、『有史以来、一貫して男尊女卑社会で、父系主義にこだわり続けているため、今も「管理世界の一員」になることを(つまり、「法の下での、男女の平等」を受け入れることを)積極的に拒み続けている』という前近代的な世界でもあります。
【ちなみに、ベルカやミッドでいう「苗字」は基本的に「家族名」であり、「現在の所属」を表示した名前なので、結婚によって嫁入りした女性や婿入りした男性は、当然に自分の苗字を変えます。
(もしくは、「元の苗字」の後ろに「新しい苗字」を付け加えます。)
しかし、〈号天〉でいう「姓」は、基本的には「出身部族名」であり、「本来の出自」を表示した名前なので、結婚によって変わることは決してあり得ません。
しかも、徹底した父系主義で外婚制なので、男性が婿入りすることも、同じ姓を持つ男女が結婚することも、絶対にあり得ません。
結果として、『結婚した女性は、その家族の中で生涯、「異分子(別の姓の持ち主)」として扱われ続ける』ということになります。
こうした家族制度を始めとする、さまざまな生活習慣それ自体が「男尊女卑を当然とする感覚の温床」となっているので、〈号天〉の人々のそうした「感覚」はいつまで経っても是正されないのです。】
さて、ミッドとの初接触から百数十年の時を経て、〈号天〉は最初の天変地異に襲われ、それ以来、〈号天〉系の人々が次元航行船で遠路はるばるミッドを訪れることは絶えて無くなってしまった訳ですが、これもまた、ミッドの歴史においては、とても幸運なことでした。
他の世界からの「文化の流入」が一旦は途絶えたことで、『外来の要素を織り込みながら、自分たちの文化を再編する』ための時間的な猶予が与えられたからです。
それからさらに三百年余の時を経て、ベルカ世界からの船団が初めてミッドチルダ世界を訪れた時には、ミッドはすでに文化的にも経済的にも「それなり」の世界に成長していました。
それから百年ほどして、ベルカ聖王家は「ミッドチルダを含めて、その周辺にある合計12個の世界」を「聖王家直轄領」と定め、以後、五百数十年間に亘って統治しましたが、それらの諸世界は植民地としての搾取や収奪を受けることもなく、むしろ聖王家の庇護の下に順調な発展を遂げていきました。
もちろん、ミッドチルダも、です。
(ミッドには元々「王」と呼べるほどの権力者はいなかったので、首都パドマーレを築いた後も、長らく政治形態は「貴族合議制」でした。直轄領となってからは、聖王家の直臣たるフランカルディ家が「総督家」として土着し、ミッドの現地貴族たちの上に「事実上の王家」として君臨することになります。)
【なお、〈号天〉と接触した頃には、ミッドの総人口もすでに八千万人を超えていましたが、当時のミッド人は、まだ牧畜の経験が無かったために「人畜共通感染症」に対する免疫をほとんど持っておらず、号天人が不用意に持ち込んだその種の病気によって、ミッドは当時、歴史上で初めての大規模な「人口減少」を経験しました。
(この時代に、わずか数十年で、総人口は「ほぼ半減」したそうです。あるいは、その際の危機意識が求心力として働き、国家形成を急がせたのかも知れません。)
その後、ミッドの総人口は再び増加に転じ、ベルカ世界と接触した頃には、もうほとんど二億人に届こうとしていましたが、現実に大量の家畜が持ち込まれたことによって、再び大規模な「人口減少」に見舞われました。
その後は聖王家の庇護もあって、ミッドの総人口は速やかに回復し、ベルカ世界の滅亡と急速な海面上昇の時代にも、また多少の「(実質的な)人口減少」がありましたが、その後は、再び着実な増加を続けて行きました。
そして、旧暦の末には、ミッドの総人口はついに十億人の大台に乗りましたが、その後はずっと横這いを続け、現代では晩婚化と少子化によってまた微妙に減少し始めているのでした。】
さて、ミッド人は「大型鳥類の絶滅」を教訓として、かなり早い段階から「生態系の保全」には心を配って来ました。
また、『自分たちは、この世界の本来の住人ではないのだ』という知識も正しく伝承されていたので、彼等はやがて『この世界の本来の生態系は、なるべく「手つかず」のままで保存しておきたい』と考えるようになりました。
そして、前述のとおり、他の五大陸はいずれも人間の居住にそれほど適した環境ではなかったため、第一大陸の南半分に広く分布するようになったミッド人は、パドマーレを首都として〈中央政府〉を樹立すると、それら五つの大陸を「すべて」自然保護区域に指定し、自分たちの居住域を「自発的に」第一大陸のみに限定しました。
(ミッド人のこうした「生態系保全への欲求」は、現在、管理局の内部で「自然保護隊」が相当に巨大な勢力となっている原因のひとつでもあります。)
【なお、〈九世界連合〉の時代には、他の五大陸にもようやく「自然保護隊の駐留地」など、最低限の施設が築かれました。
また、統合戦争の時代になると、第二大陸の北東部にだけは、限定的に「資源供給特区」が設置され、木材の伐採や地下資源の採掘なども行なわれるようになりました。
したがって、今では第一大陸以外の五大陸も決して「完全に無人」という訳では無いのですが、いずれも人間の活動は最低限に抑制されており、中央政府の政策論争でも「資源供給特区の閉鎖と原状回復」がしばしば提案されている、といった状況です。】
ただし、その反動として(?)ミッド人は〈第一大陸〉だけは、自分たちの都合に合わせて随所で地形を大改造しました。
巨大な運河を掘って「内陸湖」と外海をつなぐ一方で、山を削り、海を埋めて、元々なだらかな地形が多かったその大陸を、さらに平たく伸ばし、何かと使い勝手の良い「低地」ばかりを拡げてゆきます。
しかし、旧暦260年代から始まった「温暖化」で海面が20メートルほど上昇した結果、それらの「低地」はあらかた海に沈んでしまいました。
その結果、ミッドの〈第一大陸〉は、今や「運河や水路」が内陸部にまで隈なく張り巡らされたような地形となっており、特に〈中央部〉・〈東半部〉・〈西半部〉の三領域は、運河と呼んで済ますには少々幅の広すぎる帯状の海、二筋の「大海廊」によって、お互いに完全に分断されてしまっています。
【ごく大雑把に言って、東西の大海廊は、どちらも「南北長が1800キロメートルほど、東西幅は平均12キロメートルほど」といったところでしょうか。どちらも「完全に」ではありませんが、「ほぼ」直線になっています。
また、「南北1800キロメートル」は、惑星ミッドチルダでの緯度に換算すると、およそ16度の距離で、実際に、この〈第一大陸〉はおおよそ北緯28度から北緯44度にかけて(日本で言うと、「奄美大島」の辺りから「国後島」の辺りにかけて)拡がっています。】
【以上、ミッドチルダを「本来は大陸の名前」としつつ、その大陸の中央部(首都近辺)に「港湾施設」があることを正当化するための設定でした。
また、Vividのコミックス第3巻の巻末にある「インターミドル豆知識⑤」には、(都市本戦の後は)『ミッドチルダ中央部ほか、2つの都市本戦で優勝した計3人で、都市選抜が行われます』と書かれています。
名前は「都市選抜」ですが、これは実際には「ミッドチルダ世界の代表」を決める戦いなので、この点からも、『ミッドにおける人間の居住区域は、全体として「三つの領域」から成り立っている』という状況が伺えます。
そうした点も考慮して、この作品では〈第一大陸〉を帯状の海である「大海廊」によって三つの「領域」にキッパリと分け隔ててみました。】
【裏設定としては、『三領域とも、外形はほぼ正方形で、大きさは1800キロメートル四方程度なのだが、実際には四隅も少し欠けており、今では「昔の陸地」の一割ほどが水没しているため、陸地部分の面積は、今では三領域を合わせても810万平方キロメートル程度で、惑星ミッドチルダの「陸地総面積」のうち、わずか十六分の一を占めているに過ぎない』といったところでしょうか。
なお、惑星ミッドチルダの半径は地球よりもほんの0.7%ほど大きいだけで、大した差はありません。当然に、全表面積は地球より1.4%ほど大きいのですが、海面が上昇した現在では、陸地の占める割合が約25%と地球よりだいぶ小さくなってしまっているため、実際の「陸地総面積」は地球より一割以上も狭くなっています。
(ちなみに、地球では、陸地が29%あまりを占めています。)
また、「810万平方キロメートル程度」というのは、地球で言うと、日本の20倍以上の面積ですが、一方、ミッドの総人口は現在、10億人あまり(日本のせいぜい8倍余)なので、ごく大雑把に言って、「人口密度は全体として日本の四割ほど」という計算になります。
そのため、大陸の随所に「手つかずの自然」や「事実上の無人地帯」は意外とたくさん残っており、実際、〈ゆりかご〉が埋められていた「オルスタリエ地方の南部」も、そうした無人地帯(自然保護区)のひとつでした。】
【また、物理的な現実としては、〈第一大陸〉の東端部と西端部は、それぞれ首都クラナガンとは2時間ほどの時差があるのですが、日常的な生活としては、ミッド人は全員が「首都標準時間」に基づいて生活をしています。
と言うと、何やら『東半部や西半部の人々が、大変に不便な暮らしを強いられている』かのように聞こえてしまうかも知れませんが、実際には、(あくまで、『最大でも2時間程度であれば』の話ですが)一度「その土地その土地の時間感覚」に慣れてしまえば、それほど不便という訳でもないようです。
また、この大陸の南北の近海には「大きな島」が全く無いのですが、東西の近海には「6000平方キロメートル級」の島がひとつずつあり、それぞれ「朝早の島」、「夜長の島」と呼ばれています。
(現在では、「朝早の島」は丸ごと自然保護区になっていますが、「夜長の島」は丸ごと某大富豪の個人所有となっています。)
ちなみに、この作品では、『Forceのコミックス第6巻には、「レゾナ東中央拘置所」の所在が「ミッドチルダ東端部」と書かれているが、これはあくまでも「大陸の中での東端部」の意味である』という「解釈」で行きます。
(間違っても、「朝早の島」は、あんな物騒な場所ではありません。)】
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