イチイの実
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第三章
「若し今後この実を持って来た者が出たなら」
「褒美ですか」
「それを与えられますか」
「そしてその褒美は」
妖艶に微笑んだまま述べた。
「私自身よ」
「何と、イシュタル様と床に入る」
「その褒美を与えられますか」
「この度の戦の相手は駄目だけれど」
彼はというのだ。
「何しろ私を侮辱してのことだから」
「それは当然ですね」
「そもそも実も許しを得る為のものだったので」
「そうよ、けれどまたくれるのなら」
それならというのだ。
「いいわ」
「そうですか」
「そうされますか」
「ええ、そして他にもね」
女神はさらに言った。
「美味しい実を持って来て私を喜ばせてくれたら」
「床ですか」
「イシュタル様の床にですか」
「共に入ることを許すわ」
「わかりました、ではです」
「そのことを世界に知らせます」
従神達も応えてだった、そのうえで。
女神の前には常に多くの果物がある様になった、そこには当然イチイもあり。
女神は食し満足した時はその果実を持って来た相手と寝た、そのうえでこんなことを言ったのであった。
「イチイの赤は最高ね」
「それを見ただけで、ですか」
「そそられますか」
「この地にはないものだから」
それ故にというのだ。
「尚更そう思うわ」
「そうなのですね」
「そしてそのイチイの実を持って来たのなら」
「他の果物は私が満足したらだけれど」
自分と寝るという褒美を与えるがというのだ。
「イチイの実ならね」
「確実にですね」
「褒美を与えられますね」
「そうするわ」
こう言ってだった。
イシュタルはイチイを求め続けた、そしてそれを捧げる者は後を絶たなかった。メソポタミアの神々の話の一つである。
イチイの実 完
2023・7・14
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