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色々と間違ってる異世界サムライ

作者:モッチー7
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第1話:月鍔ギンコの転送先は……

浪人perspective

俺は剣の天才だ。
無敵と言えるだろう。

いいか、教えてやる。
剣の強さは殺した数で決まる。俺はもう20人は殺した。

そこで、俺はもっと強い人間を斬る為に旅に出た……
だがつまらん。
この俺が強過ぎる―――

「ん?」

気付けば俺は剣の鯉口を切っていた。
「……」
よく視ると、元服して間もない小娘であった。
「……強き者と見受けました……」
だが、その目は光に乏しく、隈もハッキリと見える。
「ぜひ立ち合いたく候」
……気狂いか?
「貴殿なら、この首、斬り落として下さるか?」
……やはり気狂いか?それとも、若さ故の命知らずか?

ま、向かってくるのであれば斬って殺すのみだ!
「よし、殺してやる。俺は天才だから、女子供でも容赦しないのだ」

受けてみるか?
一刀両断剣を!

月鍔ギンコperspective

これで何人目であろうか……

某は既に100を超える浪人に戦いを挑み、そして斬って来た……
にも拘らず、某の望みである『誉高き討死』は未だ手に入らず……

死に様を美しく飾りたいと願うのはヒトの性……だと言うのに……

事の始まりは5年前の……父上との最期の会話でした。

「そうか……戦に往くか」
「はっ!武士は矢弾飛び交う合戦にて散るが誉!わた……某もその様に死にとうございます!」
怒涛の如く押し寄せる敵兵相手に一騎当千に斬りまくり、そして討たれて死ぬのです!
後に残すは骸のみ!
「はあぁ……」
「お前の剣は天才だ。剣の道で成功も名声も意のままだぞ」
「立身出世興味無し!」
「では、女として生きるのは?お前は器量も―――」
「父上!」
某は躊躇無く斬った!
某の顔と……某の未練を!
「某、女に非ず!侍に御座候!」
そんな某の姿に、父上も覚悟を決めた。
「よく言った!最後の稽古……真剣勝負!」
「さらば!父上!」

父上との最初で最後の真剣勝負を終えたその1年後、某は関ヶ原におりました。

某は西軍の先鋒隊に志願し、無事に先鋒隊に加えて貰う事が出来ました。
合戦における先鋒隊の役目は捨て駒……某の望みである『誉高き討死』に相応しい死に場所に思えました……
その……心算でした……

「間合いに敵を入れねば死にはせん!長槍にて蹂躙せよ!蹂り―――」
某は敵の間合いを臆せぬ!
「ひとつ!」
「え?」
「ふたつ!みっつ!」
「何だあのチビは!?」
「鬼かあいつは!?」
無論、1人だけ圧倒的に強くても、大勢同士のぶつかり合いである合戦が相手では大局は変わらない。
それでも、某は命の限り敵を斬った。
「自軍を勝利に導く事!武士の務め!」
そんな某の目に、東軍の鉄砲隊の姿が映りました。
「面白い!異国の武器に挑んで散るも一興!」
「撃て、撃てえぇーーーーー!」

だが、その後の某の記憶が曖昧なのです……

東軍の鉄砲隊に戦いを挑んでから関ヶ原での合戦が終わるまでの某の記憶がございません……

ただ言える事は……気付けは全てが終わっていた……
……それだけです。

どうやら……敵の鉛球が鉢金に当たってそのまま意思を失っていた様です……

「誰ぞ……生きている者は!?誰ぞおりませんか!?」
だが……返事は無い……
「戦は!?西軍は勝ち申したか!?」
……まさか……某を差し置いて皆……
「あぁあ……全て骸か……?1人残らず!」
彼らはみな務めを全うしたのだ。
誇りの為に命擲つ一兵卒となり、死ぬまで戦い抜いた……正に武士の死に様だった!
……某を除いては……
「某には、そこもとらが輝いて見えます!某1人除け者は嫌ですぅーーーーー!わああ……うわあぁーーーーー!」

某は死に場所を失った……
それでも『誉高き討死』への未練断ち切れず、辻斬りの真似事をして某に武士の死を与えてくれる最上の敵を誘き寄せようとしたが……
「聞いたか?剣鬼の噂」
「聞いた聞いた。なんでも関ヶ原の落ち武者だってんだろ?」
「戦に敗けた上に生き残っちまって、死に場所を探してるんだってな?」
「馬鹿だなー。折角拾った命、面白可笑しく生きりゃ良いのによー」
「で、そんなに強いのか?」
「そいつが戦うの観たぞ!ありゃあ産まれる世界を間違えた……化物だよ」
「アイツの勝利は、もう見飽きたなー」

そして……絶望の果てにお寺に逃げ込んでおりました。
「フム……死すべき時に死ねなんだ罪とは……業の深い」
「某を殺せる人間など、もうこの世にはおらぬのでしょうか?」
「忘れる事です!不毛な戦など。さあ、仏にお祈りなさい。血に塗れた貴女の人生も赦されましょう」
住職殿はそう言って下さるが、某は……違うのだ。
某も彼らの様に、熱く、戦いの果てに死にたいのです。
だから……
赦しはいらぬ!
敵が欲しい!
私が鬼なら、悪鬼羅刹の蔓延る地獄の世へ!
いっそ―――
「いいよ」
……え?
……今、大仏様が喋らなかったか?

「は……早く逃げるんじゃ!こっ……この村はもう……おしまいじゃあ!」
悲鳴!?それも老人のもの!
弱者を虐げる輩は侍として許せぬ!
「外道め!成敗いた……」
……は!?
ここは何処?
某は仏殿にいた筈では?
見慣れぬ建物、見慣れぬ着物、異形の生命……
……と言うか……衆道……?
「行け……いぎ……んああーーーーー!いぐあああああ!」

思い出すは父上に対して行った『桃太郎』に関する質問。
「父上はこの“鬼”と戦った事はありまするか!?」
「はっはっはっ、ギンコ、そんなものお伽噺だ」

まさか……お伽噺に迷い込んでしまったのか!?某は!
でも……
「いいか、この野郎!爺も婆も関係ねぇ!今日の仕事は犯して殺す!それだけだこの野郎!テメェらの守備範囲の広さを教えてやれこの野郎ーーーーー!」
血と鉄の匂い、怒号と悲鳴、斃れる音、散らばる骸……
これは、合戦だ!

……混ざりたい!
しかし、どちらに就いてどちらを斬れは良いのだ?
視たところ、優勢なのは異形の軍。正に鬼の様な怪力。
あれではこの村に勝ち目は―――
「うっひょー♪1匹見っけ!」
某を犯す気か!?
「悪いが村ごと犯せって命令でなぁ―――」
気付けは、某は某を犯そうとしていた鬼を輪斬りにしていた。
「!?」
ついでに某の目の前で老人を犯していた鬼の頚も斬った。
「な!?」
「おッ!」
うーーーーーむ……観れば視る程奇怪な生き物と光景……世の中にこんなものがおるのか?
それとも、夢でも見ているのか?
「な……なんなのだ……おぬしらは……」
「大した答えはねぇなぁ。俺らは魔王様の命令でこの村を襲って犯してるだけさ」
「……そうか……なら腹は決まった。異形共、やはり斬るのは貴様等だ」
そして、襲い掛かって来る鬼どもをすれ違い様に全て斬り捨てた。
「そこもとらの力量(うで)……下の下!」
「!?」
「え……えっ!?」
「何時の間にか、魔族がバラバラに!」
あっという間に骸と化した鬼どもを背に、某は鬼の棟梁と思しき者と対峙していた。
「ほう、みたところレベル100の壁は突破しているようだな」
「?……何の事だ?それより、貴殿ならこの首、斬り落として下さるか?」 
 

 
後書き
本日の異世界サムライ第2巻に合わせ、わたくしめの愚作の連載を始めました。
タイトル通りの『色々と間違ってる』なので、異世界サムライ第1話の大仏様の「いいよ」からのローゼンガーテン・サーガ第1話の変態野盗による村襲撃に繋ぐと言う強引をやりました。
我ながら賛否両論の同人小説ですが、ま、馬鹿が馬鹿な事を書いている感覚で読んでいただけると幸いです。 
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