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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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正義

 
前書き
100年クエスト編も進めたいけどまだ原作がそこまで進んでないのが難点。 

 
シリルside

『グレイティス選手の勝利となります!!よってここからのターンはグレイティス選手に引き継がれます!!』

グラシアンさんとの戦いに勝利したグレイティスさんは扉を開き進んでいく。

「あいつといい昨日の二人といい・・・何なの?あのギルド」
「とても初参加とは思えない強さよね」

ルーシィさんとミラさんの言う通り、あの強さは明らかにおかしい。しかし、進んでいくグレイティスさんの様子を見て俺はあることに気が付いた。

「あの人・・・なんかふらついてません?」

グレイティスさんの足取りがどこか重たく見える。それに顔から吹き出す大量の汗が尋常ではない。

「グラシアンの攻撃をまともに受けてからねぇ。今になって効いてきたんじゃない」
「ならいいんですけど」

昨日の競技パートに出てきたシルフェさんもだったけど、何か違和感がある。それを見て昨日のリオンさんの言葉を思い出していた。

「タブーを犯してるか」

その言葉の意味も真相もわからないけど、何かが引っ掛かる。ただ、それ以上のことは何もわからないため俺たちは何もすることはできずゲームの進行を見守るしかなかった。

















あれから何回かターンが回っていくと、これまではなかなか出会うことがなかった参加者同士が次々に遭遇し、バトルが行われている。

「天竜の翼撃!!」
「きゃああああ!!」

なかでも今勢いに乗っているのはこの少女だろう。俺たちの代表として参加したウェンディが連続で敵と遭遇してしまったもののそれを瞬く間に撃破したのだ。これにより彼女は次のターンでの進行回数が一気に増えるため、相当有利になったと言える。

「すごいよウェンディ!!」
「ホント・・・強くなったわよね」

彼女には届いていないけど最大限の拍手と歓声を送っている。その間にも彼女は次々と扉を開けており、このまま行けば一位通過すら見えてきそう。

「あれ?」

しかし俺はそこであることに気が付いた。彼女の進んでいく道筋にある人物がいることに。
















ウェンディside

ロッカーさんとベスさんを倒した私はまずは自分のターンを使いながら進んでいきます。これまで進んでいく中で法則がわかってきたような気がしていました。

(今までの進行方向は右か左の二択。正面の扉はずっと不正解になっているみたい)

カミューニさんの言っていた二通りはこういうことでいいのかな?と不安を感じながらも進んでいきますが、意外とその通りに進めていることに驚きを隠せません。もしかしたらこのまま行けば一番でゴールできるかも。

(そうしたらシリルに褒めてもらえるかも)

彼ならどんな結果でも褒めてくれるとは思いますが、一位を取るとは思ってないでしょうしどんな顔をして迎えてくれるのか非常に楽しみ。そう思いながら進んでいると、次に開いた部屋の中に見覚えのある人物がいました。

『ウェンディ選手!!グラシアン選手と遭遇です!!』

そこにいたのは剣咬の虎(セイバートゥース)のグラシアンさん。なんですけど・・・彼はこちらに気付く気配も・・・いえ、それどころか起き上がることすらできずに壁に血塗れになってもたれ掛かっています。

『ウェンディ選手、少々お待ちいただいてもよろしいですカボ?』
「は!!はい!!」

念話で聞こえてくるマトー君の声。恐らくこんな状態の彼では戦えるわけがないと判断してギルドの皆さんに棄権するかどうか確認しているのでしょう。ただ、もし仮に棄権したとしてもすぐに治療ができるの?

『グラシアン選手は棄権となりましたカボ。ウェンディ選手!!一分以内に次の扉をお選びくださいカボ』
「は・・・」

返事をしかけて私はあることに気が付きました。それは今まで目の前にいる彼の息がかなり細くなっているということです。

「あの!!グラシアンさんの治療は・・・」
『今衛生兵(ヒーラー)が向かってるカボ。気にせず進むカボ!!』

耳を澄ますと確かに足音がこちらへ向かってきているのが聞こえます。でも、今の彼はすぐにでも治療が必要な状態であることは明らか。それがわかった私はすぐに行動に移りました。

『ウェンディ選手!!早くしないと時間が・・・』

マトー君の念話が聞こえてきますが私はそれを気にすることなくグラシアンさんへ治癒魔法をかけます。王国の衛生兵(ヒーラー)さんたちが来るまでに少しでも治療しなければ、そんな想いが勝ってしまいました。

















シリルside

「ウェンディ・・・」

自身のターンを消耗してでも目の前の命を助けるために治癒魔法を使っている彼女。そんな彼女に会場からは拍手が巻き起こっていました。

「ウェンディらしいですね」
「そうね」

しばらく彼女は治癒の魔法をかけて彼の傷口を塞ぐと、ようやくやってきた衛生兵(ヒーラー)の方に彼を引き渡しました。ルールを覆すことはできないということでこのターンは終了してしまったけど、それでも彼女らしさのある行動を見て誰も責めるようなことは言わなかった。

「あとで褒めてあげないとね」

それどころかそんな感情が芽生えてくるほど。そんなことを考えながらゲームの観戦へと俺たちは戻るのだった。

















第三者side

「ハァ・・・ハァ・・・」

壁に手をつき乱れる息で懸命に視界を保とうとしている大柄の男。彼は霞みつつある視界の中、自分のターンを今か今かと待ち構えていた。

(今は誰のターンだ?我に回ってくるまでどれくらいかかる)

中でゲームを進行しているプレイヤーは他のプレイヤーたちの状況がわからない。それは意図的にバトルを避けるようなことができないようにという意図があるが、自身のターンを待つ彼らにとっては大きな負担を与えていた。

(まもなくだと思うが・・・このままでは意識が途絶える・・・)

その中でも彼の受けているダメージは大きかった。ただ、彼は自身がまもなくゴールに辿り着けることはわかっていたこともあり、大きな焦りはない。

(二択を外したがこれでゴールはわかった。あとは我のターンがくれば・・・)

この状況から抜け出せる。そう考えていた大男だったが、ここで想定外の事態が起きる。

ガチャッ

「!!」

扉の開く音。それが今までにないほどに大きく響いたことでそちらを振り向くと、そこには見覚えのある顔があった。

「メェーン。ようやく会えたよ」

そこにいたのは青い天馬(ブルーペガサス)のエース、一夜だった。
















『一夜選手!!グレイティス選手と遭遇です!!』

実力者であるグラシアンを倒したグレイティス。そしてここにいる観客たち全員がその実力を把握している一夜。この二人の戦いがゲーム終盤に見られることに今日一番の歓声を上げている。しかし、狩猟豹の頭(チーターヘッド)の待機場で待つ面々は気が気じゃなかった。

「まずいわね」
「あぁ。この場面で遭遇するとは」
「強いのか?あいつ」

女性陣二人はグレイティスの見るからに不調な様子から心配しているようだが、長身の男・・・スカイシーは一夜のことをよくわかっていないのかそんな問いを後ろにいる人物へと投げ掛けていた。

「あぁ。性格はあれだが、実力に関しては申し分ない」
「ほぅ」

それを聞いてなぜか嬉しそうな表情を見せているスカイシーだが、その後ろから彼の横へと並んだ青年は顔こそ見えないものの、険しい表情をしているのは誰から見ても明らかだった。

「まずいな。ここで一夜と戦っては勝ち目がない」
「棄権でもする?」
「それはできん」

ショートヘアの女性の言葉にすぐさま返したのはスカイシー。ただ、その理由を他の面々もわかっているようで驚いた反応を見せるものはいなかった。

「ここで棄権すれば不正がバレる可能性があるからな。ここは負けてもいいから凌ぐことが優先だ」
「私はバレても困らないけど?」
「そりゃああんたには関係ないからね」

笑っているもの、タメ息をついているもの、それぞれが反応を見せる中、口数の少ない青年だけは深刻な表情をしている。

「そう思い詰めるな」

そんな彼にスカイシーは声をかける。だが・・・

「お前の無力は今に始まったことではない」
「!!」

その発言に彼の胸ぐらを掴む青年。しかし、すぐにそれに気が付いたロングヘアの女性が割って入り引き剥がされる。

「やめなさい、二人とも」
「すまん」

申し訳なさそうにしている青年。それに対しスカイシーは不敵な笑みを浮かべるだけだった。
















「??」

歓声に包まれている会場。そんな中明らかに不自然な動きを見せていた狩猟豹の頭(チーターヘッド)。それにほぼ全ての人間は気付いていなかったが、たまたま一人の女性がその現場を目撃していた。

(今・・・何か揉めてた?)

水色の長い髪をしたその女性はすぐに何事もなかったように試合を見つめる彼らを見て違和感を抱きながらも、それ以上は気にすることなくこれから行われるバトルへと視線を戻した。
















シリルside

グラシアンさんを倒したグレイティスさんと昨日のタクトさんの敵討ちに来た一夜さん。恐らくこの競技パートの山場になるであろう二人の戦いに俺は瞬きすることも忘れて見入っている。

(グラシアンさんを倒したあの人をどうやって攻略するんだ?)

一夜さんも強いことは強いけど、はっきり言って波が大きいのが難点。突然思いも寄らない大金星を上げたかと思えば今度は一撃で負けてみたりと展開が読めない。ただ、今の彼は昨日のタクトさんの分を取り返そうとしているはず。その彼なら恐らく前者のような戦いになるだろう。

『それでは30秒間のバトル、スタートです!!』

合図と共に動き出したのは一夜さん。彼はポケットから二つの小瓶を取り出す。

『力の香り(パルファム)とスピードの香り(パルファム)零距離吸引!!』
「「「「うわっ・・・」」」」

自身の魔法である香りによる能力向上を最大限に引き出すためなのはわかるんだけど、なぜカメラもそれをドアップで映すのだろうか。おかげで会場にいた全員が青い顔をしている。

『はぁっ!!』

そんなことなど知るよしもない一夜さんは相手と同等なまでに巨大化した身体で、それを感じさせないほどの動きを見せながらグレイティスさんへと連打を入れる。

『一夜速い!!グラシアンを破ったグレイティス!!全く反応できていないぞぉ!?』

あまりの猛攻に反撃できない様子のグレイティスさん。しかし、彼はただそれを受けていたわけではなかったようで・・・

『その程度・・・か!!』

無駄な動きが多かった一夜さんのわずかな隙を突き、彼へと反撃の一撃を叩き込む。

『ぬっ・・・』

それによりバランスを崩しかけた一夜さんだったが、それを容易く姿勢を整え敵を視界へと捉える。両者共に余力がいまだに見える状態。

「残り時間は20秒・・・」

わずか数秒でのこの攻撃のやり取り。どちらが勝ってもおかしくないその戦いを俺は静かに見つめていた。

















レオンside

「「これはおかしい」」

グレイティスの一撃を見た俺とシェリアの声が被った。それを見ていたサクラはこちらを見ながら首をかしげている。

「何がおかしいんですか?」
「おおーん?」
「違和感でもあったのか?」

俺たちが何に気が付いたのかわからない様子のサクラたちは首をかしげている。それに答えようとしたところ、リオンくんが代わりに解説してくれた。

「今の一撃、グラシアンとの戦いの時の威力だったら例え一夜でも踏み留まることはできなかったはずだ」
「なるほど!!それができているってことは・・・」
「グレイティスの力が落ちているってことか」

敵の魔法すら撃ち抜くほどの力を見せていたはずのグレイティスだったが、今はそれが見えない。もちろん一夜の攻撃が彼の予想を上回っていて対応しきれなかった線もなきにしもあらずだが、さっきの戦いからの彼の動きを見ている側としてはそれは考えにくい。

「やっぱり黒だな」
「うん」
「そうだね」

昨日のシルフェの時に感じた違和感。それがグレイティスの戦いを見て疑念から確信へと変わった。

「問題はどいつが主犯だがという点だが・・・」

狩猟豹の頭(チーターヘッド)の待機場所へと視線を向けるが、誰がリーダーなのかわからない。それどころかマスターの姿すら見えないところを見ると、もしかしたら・・・

















第三者side

互いにぶつかり合う巨大な肉体。使う系統が互いに接近型ということもあり、その戦いはまさしく火花を散らすものへとなっていた。

だが・・・

「ぐっ!!」

現在押しているのはリベンジに燃える男だった。

『一夜強い!!このまま押しきれるかぁ!?』
『この一年でまたずいぶんと強くなったなぁ』
『うむ。スピードパワー共に格段に上がっておるねぇ』

防戦・・・いや、防御すらできないグレイティスに次々と拳を突き出す一夜。残り数秒ではあるが、これは勝敗が決したかに思われた。しかし・・・

「ふんっ!!」

グレイティスは最後のコンマ数秒に全てを賭けていた。

「これで・・・終わりだ!!」

一夜の攻撃を払ったことによりわずかに彼の体勢が崩れたことを確認するとすぐさまその顔面へと渾身の一撃を突き立てる。逆転の一手になり得るその攻撃ではあったが、一夜はそれを逆手に取った。

「ぬぉ!!」
「なっ・・・」

一夜は向かってくるその拳にあえて頭を叩き付けたのだ。互いに衝突したその一撃。それが勝ったのは男の強い決意だった。

「ぐっ・・・うっ・・・」

変形した右手を抑えながらその場にうずくまるグレイティス。それと時を同じくして二人の耳に響いてくる銅鑼の音。

『勝者一夜!!これにより一夜選手はグレイティス選手のターンも獲得することができます!!』

昨日の仲間の無念を晴らした男は魔法の効果が切れたのか、身体が元へと戻る。その時・・・

「!!」

うずくまっていた大男が突然立ち上がると、その小さくなった人物の胸ぐらを掴んだのだ。

『グレイティス選手!!バトルは終了カボ!!速やかにその手を離すカボ!!』

会場が彼の暴挙にざわつく。ルール違反を犯そうとしているのではないかとどよめいていたところ、彼は突然怒りに満ちた表情で一夜へと話しかけた。

「我に勝ったのだ。このゲーム、一位でゴールしてみせよ」

敗北したことへと腹いせなどではない、自分が強者であるからこその敵へとエールだった。それを受け取った一夜は一瞬キョトンとした表情を見せた後、思わず笑ってしまった。

「メェーン。私は君たちを勘違いしていたのかもしれないな」

明らかに度の越した攻撃をしていた前日。しかし今の男の言葉を聞いてそれが彼らなりの正義であることを理解した一夜。大男は彼の胸ぐらを掴んでいたその手を離すと壁へ倒れるようにもたれ掛かる。

「また次、戦える機会を楽しみにしているよ」
「・・・あぁ」

傷だらけになった一夜はゆっくりとした足取りで次の扉へと手をかける。残された男は懸命に狭くなっていく視界の中、意識を保っていた。

「次があればな・・・」



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
競技パートとしてはここで大まかなところは終了です。
次からはバトルパートに入ると思います。
実は一番盛り上がる組み合わせがこの日だったりする件について。 
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