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合昏

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第一章

                合昏
 中国の五帝の最後の一人舜の話である。
 舜には二人の妻がいた、二人は姉妹でそれぞれ蛾皇と女英といった。
 どちらもほっそりとしていて色白で流麗な目鼻立ちと奇麗な髪の毛を持つ美しい女であった。舜の先の帝である尭の娘であったが。
 尭が舜の徳と資質を見て彼を自分の次の帝とした時に姉妹揃って彼の妻とした、それで二人でだった。
 夫を支えたが三人の中は極めて睦まじく。
 舜は常にだ、二人に言っていた。
「そなた達がいればな」
「それでいい」
「そう言われますね」
「そうだ」
 威厳と慈愛に満ちた顔で言うのだった。
「余はな、天下を治めるにもな」
「私達がいればですか」
「助けになりますか」
「傍にいてくれるだけでな」
 まさにそれだけでというのだ。
「充分だ」
「そうなのですか」
「そう言ってくれますか」
「心からな。それでだ」
 舜は妻達にさらに言った。
「これからも永遠にだ」
「共にいたい」
「そう言ってくれますか」
「人は死ぬ」
 舜はこのことも言った。
「それこそ神仙にならぬ限りな」
「では神仙になるのですか」
「私達は」
「いや、余は天下を治める帝だ」 
 舜は神仙になるかと聞かれこう返した。
「だからな」
「それで、ですか」
「神仙になることはないのですか」
「なることは出来てもなることはしない」
「それよりもですね」
「天下を治めることですね」
「そして跡を継ぐ者を決めれば」
 その後はというと。
「後は世を去る、そしてそれからか」
「魂が神仙となる」
「そうなるのですね」
「それからもそなた達と共にいたい」
 永遠にというのだ。
「その様にな」
「わかりました、それでは」
「今はこうして共に暮らし」
 姉妹は舜の言葉に微笑みそのうえで彼に応えた。
「そして魂となっても」
「永遠にいましょう」
 二人も舜に誓った、そしてだった。
 三人で仲睦まじく暮らしていった、舜は見事に天下を治めやがて禹を次の天下の主に任じてから世を去った。
 この時にだ、舜は妻達に微笑んで告げた。
「悲しむことはない、そなた達もな」
「はい、世を去れば」
「そうなればですね」
「また余と共にいられる、今の別れはほんの一時の別れだ」
 それに過ぎないというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「私達はですね」
「嘆くことなくな」
 そのうえでというのだ。
「暫し待つのだ、そしてな」
「私達がこの世を去れば」
「その時はですね」
「永遠に共にいられる時だ、ではな」
「はい、またお会いしましょう」
「暫し別に暮らした後で」
 二人は夫の言葉を受けてだった。
 舜が世を去るのを見届けた、その暫く後でだった。
 二人は湘江の岸で世を去った、すると。
 この時から不思議なことが起こった、ネムノキの葉がだ。 
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