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怠け者エルフと真面目オーク

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第一章

               怠け者エルフと真面目オーク
 エルフの魔術師エルミア=コーンウォールは大学の魔法学部を首席で卒業し大学院でも優秀な成績を収めた。
 論文も実践もずば抜けており母校の大学の教授にも若くして就任した緑の切れ長の目と長いブロンドの髪の毛に細面は如何にもエルフというものだ。そしてその外見はエルフ達の中でも話題になる程のものだ。
 だが彼女には難点があった、それは何かというと。
「いやあ、面倒臭いわ」
「またそんなことを言って」
 自身の研究室で椅子に座ってだらけている彼女にだ、助手であるアログ=ポーツマス大柄なオークの青年である彼が言った。二人共魔法使いのローブでありエルミアのそれは魔術師としては最高位の金色のものだ。アログはそれなりの位の赤いものだ。
「教授は優秀ですから」
「いや、私出来るだけよ」 
 エルミアはだらけた顔のまま自分の後ろにいるアログの方を振り向かず言葉を返した。
「動きたくないのよ」
「働きたくないですか」
「就職はしてるし」
 それでというのだ。
「もう後はね」
「何もされたくないですか」
「書いた本の印税もあるし」 
 そちらの収入もあってというのだ。
「寝ていても収入あるし」
「それならですか」
「働いたら負けよ」
 エルミアは言い切った。
「もうね」
「駄目な人の台詞ですよ、今のは」
「それでもいいのよ、駄目でもね」
「いいのですか」
「収入あるからね」
「ところがそうはいきません」
 それでもとだ、アログは一四三センチとエルフにしてはかなり小柄な彼女に言った。アログは二メートルあるので好対照だ。
「今も教授にはです」
「お仕事の依頼来てるわね」
「お薬の開発に論文に」
「私医学とか薬学とか錬金術にも通じてるしね」
 魔術師として優秀なだけでなくだ。
「それでね」
「そして全部私が受けておきました」 
 アログはエルミアの後ろに立って述べた。
「そうしておきました」
「いつも通りなのね」
「はい、そうさせて頂きました」
「相変わらず真面目ね」
「働かないと負けです」
 アログは真剣な面持ちで言い切った。
「人は」
「どんな種族でもよね」
「はい、ましてや教授は優秀なのですから」
「働けっていうのよね」
「そしてです」 
 働いてというのだ。
「そのうえで、です」
「世の為人の為によね」
「貢献して下さい」
「だるいわ」 
 だが、だった。
 エルミアはそう言われても動かない、自分の椅子に座って机にうっぷしたまま眠そうな目で言うだけだった。
「だから言ってるでしょ」
「働いたら負けですか」
「私はネオニートになるわ」
 不労所得によって生計を立てていくというのだ。
「実際収入あるし」
「教授なのにですか」
「教授でもよ。そのお給料と印税でね」
「暮らしていかれますか」
「子供の頃から夢だったのよ」
 今度はこう言ったのだった。 
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