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星河の覇皇

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第八十四部第一章 梟雄の復活その一

               梟雄の復活
 ティムール軍は二度目の敗北で意気消沈していた、戦場であった防衛ラインから命からがら撤退した兵士達は損害を受けている乗艦の中で話した。
「また負けたな」
「ああ、それも散々にな」
「何で急に魚雷が来るんだ」
「横から後ろから」
「それがわからないな」
「本当にな」
「あのせいで負けた」
 その魚雷のせいでというのだ。
「今度の戦いもな」
「折角防衛ラインを敷いたのにな」
「全部駄目になったな」
「このまま勝てるのか?」
「どうだろうな」
「わからなくなってきたな」
「死んだ奴も多いからな」
 前の戦いでというのだ。
「この艦でもいるしな、戦死した奴」
「ああ、ウマルな」
「駆逐艦の攻撃受けた時に死んだな」
「飛んできた破片が宇宙服突き破ってな」
「いい奴だったのにな」
「折角この戦争終わったら実家に戻ってタクシーの運転手になるって言ってたのにな」
 それがというのだ。
「死んだな」
「ったくよ、いい奴程死ぬな」
「残念だな」
「けれどあいつ天国に行ったな」
 こうした言葉も出た。
「戦争で死んだからな」
「ああ、ジハードでな」
「ジハードで死んだからな」
「それだとな」
「ちゃんと天国に行ったな」
「天国で幸せに暮らせるな」
「そのことは祝っていいな」 
 イスラム独特の考えも出た、イスラム教ではジハードで死ねば天国に行けると考えられているので戦争がジハードと定義されていれば戦死者は全て天国に行くとされるのだ。これは死を恐れずに戦う士気を鼓舞する意味もある。
「それじゃあな」
「まだいいな」
「そうだよな」
「あいつも天国に行ったなら」
「それが救いだな」
「それだけでもな」
 こう言って同僚の戦死のことを慰めようとする、死んだ者達だけでなく生き残った彼等の悲しむ気持ちもだ。
 そしてだ、彼等はこうも話した。
「しかしまた負けるなんてな」
「嫌なもんだな」
「オムダーマン軍は動きが止まったけれどな」
「それでもな」
「また来るだろうしな」
「その時はな」
「辛い戦いになるな」
 こうした話にもなった。
「今度は前以上にな」
「勢いも落ちたな」
「こっちはな」
「それで敵は波に乗ってるだろうしな」
「前以上に辛い戦いになって」
「どうなるかわからないな」
「飯もな」
 食事の話も出たが。
「まずいな」
「調味料とか変わってない筈なのにな」
「食材もキッチンもな」
「全然変わってない筈なのにな」
「まずく感じるな」
「どうもな」
「今はな、負けてるとな」
 どうしてもというのだ、兵士達は今は食事を摂ってはいないが先程の食事のことを思い出してそうして話をしているのだ。 
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