片付けなくてはいられない姉
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第一章
片付けなくてはいられない姉
渋谷鈴子は非常に真面目で潔癖症の女の子だ、だから自分の部屋はいつも奇麗にしている。しかし。
彼女の妹の由香は整理整頓が苦手でいつも部屋をちらかしている、それですずこはいつも彼女を叱っていた。
「奇麗にしなさい」
「何処に何があるかわかってるからよくない?」
「よくないわよ」
時分より三つ下の小学三年の妹に言うのだった、姉はきりっとした顔立ちで大きな目がやや吊り上がっている、妹はおっとりした顔立ちで大きな目はやや垂れている。二人共黒髪でセミロングにしているが妹の手にはいつも熊のぬいぐるみがある。
「いつもね」
「奇麗にしないと駄目なの」
「そうよ、お風呂も毎日入ってね」
「私入ってるよ」
「入って身体の隅から隅まで奇麗に洗って」
こう言うのだった。
「そうしないと駄目なのよ」
「そうしてるのに、私」
「私から見たらまだよ、兎に角あんたはお掃除をね」
自分の部屋のというのだ。
「それをね」
「しないと駄目なの」
「そうよ、汚いとね」
それならというのだ。
「女の子は駄目よ」
「そうなの」
「そう、ちゃんとお掃除しなさい」
「そんなに汚くないのに」
由香はいつも姉に言われて困った顔でいた、だが。
由香の友達は彼女の部屋を見ても特に汚いとは思わずそれは二人のお好み焼き屋をしている両親もそうで鈴子が言う程かと思った。
そして鈴子の部屋を見るとだ。
「何かな」
「埃一つないわね」
「ベッドまでそうでな」
「まるで自衛隊の隊舎ね」
「子供でこんなに奇麗ってな」
「逆に極端よ」
「清潔なのはよくてもな」
それでもというのだ。
「これはな」
「どうもね」
「ああ、ちょっとな」
「これが普通と思ったら」
「由香に言うことも問題だしな」
「他の人にまで言うと厳し過ぎるわね」
「そうなるな、これが若し整理整頓以外のことにもなったら」
夫は妻に話した。
「そうなったらな」
「鈴子が周りから嫌がられるわね」
「由香も困ってるしな」
「他のことでも由香に言うと由香も余計に困るし」
「他の人にもあれこれ言うとな」
「かえって鈴子が嫌われるわ」
「そうなるからな」
だからだとだ、両親は彼女のことを考えてだった。
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