イベリス
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第九十八話 母の法事その九
「お陰でな」
「健康診断で何もなかったら」
「それでな」
「いいのね」
「一つでも問題があるとな」
父はどうかという顔で話した。
「もうそれでな」
「嫌になるのね」
「歳を取るとな」
どうしてもというのだ。
「何処か悪いところも出て来るしな」
「よく言われることね」
「咲も聞くな」
「何処が悪いとか痛いとか」
「そうなるんだ、誰もな」
それこそというのだ。
「髪の毛が薄くなったり太ったりはましなんだ」
「身体壊すことに比べたら」
「最悪亡くなるってこともな」
こうなる事態もというのだ。
「あるしな」
「お父さん位の歳になったら」
「小学校や中学校のクラスメイトもな」
彼等もというのだ。
「お父さんの歳だと皆揃ってるとかな」
「ないの」
「あまりないだろうな」
父は悲しい顔になって答えた。
「皆少しずついなくなるんだ」
「そうなの」
「だからな」
それでというのだ。
「髪の毛が薄くなったり白くなったりな」
「太ったりは」
「まだな」
「ましなのね」
「身体を壊さないならな」
「いいの」
「いや、内臓が悪くなったり」
父は娘に真顔で話した。
「肩や腰や膝が悪くなったりな」
「そうなるのね」
「癌とか糖尿病とか脳梗塞もあるんだ」
「病気ね」
「特に癌になるとな」
この病気になると、というのだ。
「とんでもないんだ」
「命に関わるわね」
「そうなるからな」
それ故にというのだ。
「お父さん位になると色々心配になるんだ」
「健康診断の結果は」
「本当に何もないならな」
それならというのだ。
「最高だからな」
「今度何も出なかったら」
「嬉しいな」
「そうなのね」
「それだけでと言われてもな」
そうであってもというのだ。
「凄く嬉しいんだ」
「健康であるだけで」
「咲もわかるからな」
「歳を取っていったら」
「ああ、今のうちから覚えておくんだぞ」
「今のうちにね」
母も言ってきた。
「そうしたことも覚えていってね」
「歳取ると身体が悪くなっていくのね」
「今は何もなくてもね」
若いうちはというのだ。
「十代なんて何も心配いらないでしょ」
「身体のことはね」
それはとだ、咲も答えた。
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