FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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特別なキス
前書き
ゴッドセレナ人形だったのか・・・と考えると別にあいつの代わりの奴出さなくてもいい?
何か意味があるなら案自体はあったけど、他にやりたいこともあるから出さなくて良さそうならその方がいいんですよね。
「んん・・・」
手が痺れてきたことで目が覚めた。そこは見たことがない和室となっており、隣には上半身裸のナツさんとグレイさんが俺と同じように手を天井から吊るすように縛られている。
「ナツさん?グレイさん?」
「起きたか、シリル」
「ここは?」
「わかんねぇ。けど・・・」
怒りに満ちた表情で前方を見据えているナツさん。彼の視線の先には何がいるのかと思いそちらを見ると、そこには巨大な温泉があり、金髪の女性がそこから上がってくる。
使いと思われる女性たちに身体を拭かせ、浴衣を身に纏った女性・・・セレーネは俺たちの方へと歩み寄ってくる。
「待たせた、日に三度の湯は欠かせなくてな」
「男の前で堂々と風呂とは・・・変態かよ」
「おい!!これほどきやがれ!!」
俺たち男性陣が目の前にいたにも関わらずゆっくりと温泉を堪能していたセレーネにさすがのグレイさんも顔を赤くしている。しかし、ナツさんは怒りの方が勝っているようで拘束されているとは思えないほど大暴れしていた。
「ドラゴンには元々・・・衣服を着用する習慣がなくてな。まぁ、この姿でいふ時は人間の習慣に合わせた方がよかろう?」
「あ・・・あの・・・」
仕方なしといった表情のセレーネだけど、俺は一つどうしても聞かなければならないことがある。
「どうした?小さき竜」
「なんで俺だけ上を着てるんですか?」
ナツさんとグレイさんはズボンだけ履いて上半身は裸なのに、俺は上を着ていて・・・逆に下を履いてない。しかもこの上着、ナツさんが着ていた上着だ。お陰で足の付け根のところまで隠れていて、なんだか妙に恥ずかしい。
「男の娘の彼シャツという奴なのだろ?お前たち人間が好きな」
「知識が偏ってる!!」
どこかの氷の神を思い出すような偏っている知識に突っ込まずにはいられない。しかし、そんな突っ込みどころ満載の発言にも隣にいる二人は反応してくれない。
「ここはどこなんだ?」
「俺たちは確か凍らされて・・・」
一緒にいたはずのウェンディとエルザさんの姿が見えない。どこかで同じように捕まっているのかと匂いを探ってみるが、周囲からは二人の匂いがしない。
「ここは黒月山。エレンティアでもっとも月が美しく不気味に見える場所。エレンティアの月はな、満ち欠けがないのだ。私がこの世界を気に入った理由の一つ・・・」
「いいから勝負しろ!!それが目的だろ!?」
荒ぶっているナツさんだったがセレーネは人差し指を振りながらそれを否定する。
「それは少し違うぞ。私の目的は"楽しむ"ことだ。人間を喰いたいわけでも世界を手に入れたいのでもない・・・優雅な月を見ながら酒を呑み、宴を開く」
彼女のその言葉に俺たちは顔を見合せた。その願望はアルドロンのような悪いドラゴンとは思えないものだったからだ。
「お前・・・もしかしていい奴なのか?」
ナツさんが確認のために問いかける。しかし、その瞬間にセレーネの表情が一変した。
「私が楽しむためなら世界の一つや二つ、どれだけ汚れて歪んでいっても構わないの」
「ふざけんなぁ!!」
「やっぱ悪い奴かー!!」
悪魔のような表情とはまさにこのことと言わんばかりの彼女の笑いにそう叫ばざるを得ない。そんな彼女は俺の方へと近付くと、顎へと手を当て顔を覗き込んでくる。
「私・・・この魔力にあふれたエレンティアをもっともっと魔力で溢れさせて、そしてらどうなるか見てみたいの」
「爆発しちまうって言ってたぞ」
「でも・・・その前に・・・あなたたちと遊びたくて招待したのよ、黒月山に。さぁ!!宴の時間よ!!」
グレイさんの言葉に一切のリアクションも見せず手を叩くセレーネ。それを待っていたのか、部屋の中へと至るところから浴衣に身を包んだ女性たちが雪崩れ込んできて、俺たちを囲うように旅館でよく見る小さなテーブルとそれに乗せられた料理を準備していく。
「なんなんだこれは・・・」
「??」
「くっそー!!いい匂いさせやがって!!」
「食べる?はい、あーん」
「いるか!!」
そのまま踊ったり歌ったりを始める女性たち。さらには彼女たちは俺たちの身体を触りながらさらに歓声を上げている。
「こいつら・・・何が目的なんだ?」
「囚われた男を肴に女が酒を呑む。実に愉快ではないか」
「やっぱりこいつど変態だぁ!!」
嬉々とした表情で答えるセレーネに突っ込まざるを得ない。だが、彼女たちはそんなことなどお構い無しのようだ。
「ホレ・・・皆の者!!歌えや踊れ!!月夜に狂え!!宴じゃ宴!!」
セレーネのそのかけ声でさらに加速していくお祭り騒ぎ。そのあまりのテンションに俺たち三人は圧倒されるしかない。
「さて・・・頃合いか」
長い長い宴会がいつまでも続くのかとグッタリしていたところ、セレーネの目付きが変わったことに気が付いた。
「ヨウコ、例のものは」
「はっ!!準備できておりますなれば」
「女体の天国から鬼女の地獄へ」
セレーネが手を上げると彼女の真後ろにあった月が巨大化し、目映い光を放つ。
「なんだ!?」
「これはあの時の・・・」
「月がでかく・・・」
光へと飲み込まれた俺たち。そのあまりの光に目を閉じると、次に身体に衝撃が走り目を開ける。
「いったたたた・・・ここは・・・」
周囲を見渡すとそこはどうやら洞窟のよう。すると、先程まで隣にいたはずの二人がいないことに気が付く。
「あれ?ナツさん?グレイさん?」
どうやら別々の場所に転送されたのかと思っていると、脳内にセレーネの声が響いてくる。
『そこは黒月山の最下層。魑魅魍魎の妖怪どもが住まう場所・鬼ヶ月。そなたたちは別々の場所にいる、妖怪どもを撃破してここまで登ってこれるかな?
私たちはそこでもがくそなたたちの様子を肴に宴を楽しむの』
そう言って高笑いしながら声が彼女の声が途切れる。
「むぅ・・・ということはとりあえずここを進まなくっちゃいけないわけか」
どこをどう進めばいいのかもわからないけど、とりあえずは先に行かないことには話にならない。そう思って足を前へと進めていたところ、覚えのある匂いに気が付きそちらを向く。
「ウェンディ?どこ?」
その匂いは恐らくウェンディのものだと思い声をかける。すると、目の前にゆっくりとした足取りで小さな少女が現れた。
「うん、でも今日から化け猫になったんだ」
「なっ・・・」
頭には猫耳を付けて手も肉球のついたものへと変化しているウェンディ。何のコスプレかと思っていたけど、その耳とお尻から這えている尻尾が彼女の動きに合わせて動いているところを見ると、もしかしたらマジで這えてるのかもと錯覚させる。
「ねぇシリル、今日は私といっぱい遊ぼうにゃん!!」
「え?その格好で?」
「うん!!殺しちゃうぐらい楽しんじゃうに!!にゃあ!!」
可愛いんだから怖いんだかわからない発言をしているけど、とりあえず可愛いという感情が勝っているのは内緒。でも何がどうなってこんなことになってるんだ?
「どうしたの!?ウェンディ!!あいつらに変なことされたの!?」
もしかしたらエルザさんやルーシィさんもおかしくなっているのかと思って問いかけると、彼女の後ろから巨大な足音が・・・地響きを立てながら近付いてくる。
「ウェンディを傷つける人は許さないわ」
「あい」
「そうそう~」
ウェンディの何倍もの巨体を揺らしながら現れた三頭の虎。だが、それから発せられた聞き覚えのある声に俺は唖然としていたのだった。
第三者side
「とりあえず、ナツとシリルを探すしかねぇか」
頭をかきながら歩み始める青年。その足取りは気のせいなのか、いつもよりも重たいように感じる。
「つーかあの女ども、変態の集団かよ。男の裸を肴に酒を呑むとか・・・」
彼は先程まで受けていた辱しめのことを思い出しながらグチグチと文句を言っている。その際仲間たちの名前を出しながら一人芝居をしていたところ、たまたま最愛の女性の名前が出てきてその場に立ち止まる。
「ジュビア・・・」
「ジュビアが気になるか?グレイ」
突然背後から聞こえた仲間の声。グレイはその姿を確認しようと振り向いた。
「その声・・・エルザか?」
「あぁ」
凛々しい声で返事をする緋色の剣士。しかし、彼女の姿を見た青年の表情は固まっていた。
「お前・・・その身体・・・」
上半身は辛うじて彼女とわかることができるが、顔には蜘蛛の巣が張ってあるような模様があり、下半身は完全に蜘蛛へとなっている。その禍々しい姿にはグレイもあ然とせざるを得なかった。
「ふんっ!!」
心配するグレイにいきなり剣を振り下ろすエルザ。だが、その殺気に彼は気付けていたためなんとか回避することができた。
「魑魅魍魎の妖怪って・・・もしかしてエルザたちのことなのか?」
本当は多数の妖怪がいる洞窟内だが、セレーネの策略により姿を現したエルザを見て彼はそう考えていた。それと同時にその表情が怒りへと変わる。
「俺らの仲間をなんだと思ってやがるんだ」
シリルside
「まさか・・・セシリーたちか!?」
目の前に現れた巨大な虎はエクシードトリオそのままの声をしている。でもその身体は明らかに大きく・・・いや、てかもはや猫の原型を留めていないんだけど・・・
「ハッピー、シャルル、セシリー。やっちゃってにゃん」
ウェンディの指示を受けて突撃してくる三匹。さすがに仲間を攻撃するわけには・・・
「いや、待てよ?」
咄嗟に後方へ下がってこの三匹をどうやって止めようかと思ったけど、俺、よく考えたらセシリーのこと結構殴ってるよね?
「頑張ってシリルをやっつけるにゃん」
なんだか楽しそうにしているウェンディには悪いけど、セシリーを殴っていいならシャルルとハッピーもその分類に入れていい気がする。いや・・・というよりも・・・
「俺よりデカくなってんじゃねぇ!!」
なんでかわからないけど、その感情の方が勝ってしまった。
「「「えええええ!?」」」
まさか攻撃されるとは思っていなかった三匹は俺からの飛び蹴りを受けて驚愕の声を上げながらその場に伏せる。なんだか悪いことをした気もするけど、彼女たちは駆逐されるべきモンスターになったんだと自身に言い聞かせながら平常心を装う。
「ふぇえ・・・三人をいじめないで~!!」
しかし、その三匹を見て泣き叫ぶ少女を見た瞬間、心が張り裂けそうになる。
「うわっ・・・俺が悪い奴みたい・・・」
実際は向こうから襲ってきてるわけだし攻められる謂れはないはずだが、なんだか罪悪感が芽生えてくる。しかし、そこに来てあることに気が付いた。
「あれ?ウェンディは攻撃してこないのか?」
三匹が倒されたからといってウェンディが攻めに出てくる気配がない。その理由がよくわからなかったが、それならばとすぐに間合いを詰める。
「にゃあん!!」
「くっ/////」
おへそ丸出しの彼女の姿に顔が熱くなる。どうやって元に戻せばいいんだ?普通なら術者を倒せばいいんだろうけど、そのためにはここを出ないといけない。でもその間にハッピーたちが起きてきたらまた襲われるし・・・
「これ・・・何属性の魔法なんだ?」
そもそもこの魔法は一体なんなんだ?いや、さっきの感じからするとこれは霊力になるのか?俺たちが捕まっていた時間はそれほど長くはないはずだから冥府の門のような大々的な装置を使っての改造とかではないはず。となるともしかして・・・
「試してみるか」
やったことはないけど思い付いたからには実行してみるに越したことはない。もしこれが"状態異常"の魔法なのだとしたら、天空魔法で直せるはず。
「モード・水天竜!!」
滅悪魔法を解放して天空魔法を使えるようにする。ただ、俺は状態異常を解除したことがないためできるかはわからない。そもそもそれが正解かもわからないが、とにかく今はやるしかない。
「状態異常解除・レーゼ!!」
ウェンディの魔法を見様見真似でやってみる。思いの外うまくできたように見えた魔法だったが、ウェンディはそれを受けても何も変かが起きない。
「シリル・・・猫の私じゃダメなの?」
「うぐ/////」
可愛らしく顔を手で覆いながらそんなことを言ってくるウェンディ。本音をいえばずっとこのままでもいいんだけど、それだと俺はずっと命を狙われるわけで・・・
「威力が足りないのか、魔法自体が効果がないのか・・・」
不馴れなためいかんせん何が正解かわからない。もう一度・・・今度はできるだけ近くで試してみたい。
それもできることなら身体と身体が触れるくらいの距離感で---
「あっ」
そこまで考えて、俺は一つ試してみたいことが思い付いた。それが脳裏に過った途端、実行せずにはいられない。
「にゃにゃ!?早いよシリル~!!」
瞬く間にウェンディとの距離を詰め直した俺を見て彼女は目を見開いていた。そんな彼女の頭に手を回し、半開きになっている唇へ自身の唇を重ね合わせる。
「!!??」
何が起きているのかわかっておらずバタバタと足踏みをしていたウェンディだったが、状態異常の魔力を口から流し込んだことにより、次第にその姿が元へと戻っていく。
「ぷはっ!!ちょっとシリル!?どうしたの!?」
どれだけの時間唇を重ねていたのかわからない。ただ、呼吸ができずにいた少女は俺の顔を押し返しながらそう声を荒げる。その姿は普段からよく見た幼馴染みのものになっていた。
「ウェンディ!!元に戻ったぁ!!」
「きゃっ!!何々!?」
先程までの記憶がないのか、俺に抱き締められたことに驚きまくっているウェンディ。ただ、彼女は俺の背後にいる巨大な三匹の虎を見て目を見開いた。
「え?何あれ」
「セシリーたちだよ」
「えぇ!?」
もう何がなんだかわからないといった表情の彼女に事情を説明して三匹に魔法をかけて元に戻してもらう。すると、三匹も何が起きていたのかわからないようで、辺りをキョロキョロと見回していた。
「シリル!!ウェンディ!!」
そこへ遠くからかけてくるのはナツさんとルーシィさん。それに後ろにはなぜかアクエリアスさんまでおり、俺たちは驚愕してしまった。
「なんでアクエリアスさんが!?」
「話はあとだ。他にいない奴は?」
「グレイさんとエルザさんがまだ・・・」
この流れからするにエルザさんもウェンディのように何か状態異常の魔法がかけられているはず。そのため、俺たちは耳を澄ませながら二人のいる場所を探り当て、全速力でかけていくのだった。
「く・・・蜘蛛だと!?私がか!?」
グレイさんと戦っていたエルザさんに状態異常解除の魔法をかけ正気に戻し事情を説明すると、彼女は信じられないといった表情を見せている。
「私は猫のお化けで」
「オイラたちは虎だよ!!」
「めっちゃ大きいね~!!」
「なんで嬉しそうにいうのよ」
「こいつなんか乳丸出しで---」
「その話はもういいから」
女性陣全員が妖怪に変えられていたのだが無事に戻すことができて一安心。もう少し猫のウェンディを見ているのも一興だったけど、さすがにそこは自重する。
「とにかくここはセレーネの住み家らしい」
「山の麓みたいですね」
「どうする?」
「そんなの上まで登ってやっつけてやる!!」
さっきの話を信じるなら、このまま進んでいけばセレーネに会えるはずなんだけど、血気盛んな俺たちとは違い女性陣は慎重だ。
「いや・・・ここの連中は妙な術を使う。魔法とも違うな」
「無策で戦っても勝ち目はないかもしれません」
「一旦ここを離れて体勢を整えましょ」
「逃がすとお思いか?」
「「「「「!!」」」」」
多少なりとも疲弊してしまったこともあるためここを離れようとした時だった。真上から聞こえてくるのは先程対峙した女性の声。その声に反応して一斉にそちらを向く。
「月下美神ヨウコ。次はもっと醜い妖怪に変えてやろうぞ」
「あいつは・・・」
「二度と同じ轍は踏まんぞ!!」
「あいつがみんなを妖怪にしたのか」
「せめて服着てる妖怪にしてよね!!」
「今そこ大事ですか!?」
ルーシィさんは先程ナツさんに胸を見られたことを気にしているらしく顔を赤くしながらそんなことを叫んでいたが、彼女以外は全員が戦う準備ができている。
「こいつの魔力・・・」
「あの雪女みてーに異様だ」
「これは"霊力"です!!魔法とは異なる力!!」
そう言ってウェンディは俺やエルザさんにかけてくれたように相手にダメージを与えることができる力を付加してくれる。
「全員の魔力にスピリアを付加!!これで戦えるはずです!!」
「まだわかっていないようじゃの」
戦闘準備は万全となった。だが、そんな俺たちを見てもヨウコは余裕の笑みを崩さない。その理由は彼女の後ろから現れた無数の妖怪たちか。
「百鬼夜行の本当の恐ろしさを」
彼女を守るように俺たちの前に立ちふさがる妖怪たち。その数も種類も今まで戦ってきたどのモンスターたちも多い。だけど・・・
「やってやるか」
俺たちの戦意は削がれることはない。全員がその敵を見据え、魔力を高めていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
王子様のキスで目覚めるお姫様をイメージしてみた今回。
次から手の出現までシリルの活躍がないんですよね・・・面倒くさいからって訳じゃないですよ←思い付かなかっただけ。
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