イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第九十八話 母の法事その六
「その間にあるでしょ」
「あっ、灰色ね」
「グレーゾーンって言うわね」
「そうね」
「世の中その灰色の白か黒の度合いの違いはあっても」
灰色といってもというのだ。
「結構灰色の場所が広いのよ」
「そうなの」
「完全な白、完全な黒はね」
「そうはないの」
「そうなのよ」
これはというのだ。
「どうもね」
「そうなのね」
「まあヤクザ屋さんとかは真っ黒だけれどね」
「麻薬の密売人とか」
「悪質な犯罪者は」
それこそというのだ。
「完全にね」
「真っ黒ね」
「ええ、けれど世の中グレーゾーンはね」
「かなり広くて」
「咲ちゃんのお店の店長さんはね」
「そこにおられるのね」
「そうじゃないかしら」
こう言うのだった。
「私が思うに」
「そうなの」
「ええ、ただ灰色位だと」
「裏の社会と関わりがあっても」
「それでもね」
それが事実でもというのだ。
「悪質な犯罪をしていないなら」
「尊敬出来るのね」
「人の道に外れていなかったら」
「いいのね」
「尊敬出来ると思ったら」
そう判断したならというのだ。
「その場合はね」
「そうなのね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「咲ちゃんはタイプ的に白い世界、表の方でね」
こちらでというのだ。
「生きるべきね」
「悪いことしないで」
「元々出来る風じゃないでしょ」
「悪いことはね」
どうにもとだ、咲も答えた。
「出来ないししようともね」
「思わないでしょ」
「私自身そう思うわ」
「それならよ」
「表で真面目に生きることね」
「そうしてね、そして」
そのうえでというのだ。
「幸せになってね」
「立派な人にもなって」
「そうしてね」
「そうなる様に努力するわ」
咲は愛に確かな声で答えた。
「私も」
「是非ね、じゃあそろそろね」
「法事はじまるわね」
「私も参加させてもらうし」
それでというのだ。
「まずは真面目にね」
「参加させてもらうのね」
「そうさせてもらいましょう」
「何でもね」
母は咲だけでなく愛にも言ってきた。
ページ上へ戻る