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第二章

「人を突き落として殺そうとしてです」
「ご自身が落ちてですね」
「そうなったので」
「そんな娘ですから」
 母親も言ってきた。
「助けてもらう資格はです」
「ないというのですね」
「はい」
 そうだというのだ。
「全く、ですから」
「八条病院の理事長さんがお金を出してくれる人ですが」
 東は断ろうとする両親達に毅然として答えた。
「その人はこう言われました」
「何とでしょうか」
「一体」
「千人のうち九百九十九人が見捨てる様な人がいても」
 例えそうであってもというのだ。
「一人は手を差し伸べる人がいると」
「九百九十九人が見捨てても」
「一人が助ける」
「そうした人がいますか」
「そうなのですか」
「そして娘さんが心から反省してです」
 東はその人の言葉をさらに伝えた。
「悔い改め二度としないなら」
「それならですか」
「助けられてもいいですか」
「そう言われました、殺人を犯したなら別ですが」
 それでもというのだ。
「娘さんはそのつもりでもしませんでしたし」
「悔い改めるなら」
「反省しているならですか」
「いいとです」
 その様にというのだ。
「言われています、それでまずはです」
「保護者の我々からですか」
「了承をですか」
「得たいです、そして」 
 そのうえでというのだ。
「娘さんが頷いてくれれば」
「手術をして」
「また歩ける様にしてくれますか」
「はい、如何でしょうか」
 東は両親に問うた、すると。
 彼等は二人で顔を見合わせて話した、そのうえで。 
 東に向き直ってだ、それぞれ頼む顔で述べた。
「お願いします」
「あの様な娘ですがそこまで言って頂けるなら」
「もう私達も正直見捨てていますが」
「どうしようもない娘だと」
「ですが助けて頂けるなら」
「宜しくお願いします」
「わかりました、では後は娘さんとお話させてもらいます」
 東はこう応えてだった。
 そのうえで今度は瑛子と会って彼女に話した、そのうえで尋ねたのだった。
「君はまた歩きたいかな」
「けれど私は」
「君のことは知っているよ」
 東は穏やかな顔と声で答えた。
「けれどね」
「手術をしてくれるんですね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのだ。
「君が以前の様に動ける様にさせてもらうよ」
「けれど私は」
 俯いたままでだ、瑛子は東に答えた、表情も暗い。
「いじめをして」
「反省しているかな」
「反省ですか」
「もう二度といじめはしないかな」 
 東はその瑛子を見て彼女に尋ねた。
「そうするかな」
「こんなことになってずっと言われてです」
 瑛子はここで泣いた、崩れた顔で涙をボロボロと流して東に答えた。
「皆私を嫌ってお父さんもお母さんも見放して」
「一人になったね」
「はい、ずっと」
「人は悪いことをしたら絶対に報いを受けるんだ」
 東は穏やかだが強い声で告げた。 
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