星河の覇皇
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第八十三部第四章 戦線崩壊その十二
ティムール軍の要塞の一つを預かる中将は苦い顔で言った。
「要塞の損害が、か」
「はい、増える一方です」
「応急班を総動員していますが」
「手が足りません」
「しかも攻撃がまた来ます」
「それによってです」
「また損害が出ています」
こう言うのだった、だが。
ここでだ、彼等がいる司令部が揺れた、それで中将はまた言った。
「またか」
「はい、再びです」
「敵の攻撃が来ました」
「それによってです」
「また犠牲者が出ました」
「そして要塞が破壊されました」
「このままではです」
少将の階級にある者が言ってきた。
「この要塞を」
「放棄か」
「使用不能に陥り」
そうしてというのだ。
「放棄もです」
「だがこの要塞は」
「この防衛ラインにおいて」
「要の要だ」
このことをだ、中将は言った。
「何といってもな」
「それでもです」
「この状況ではか」
「今は中破寸前です」
そこまでの損害を被っているというのだ。
「それがです」
「損害がこれ以上になるとか」
「総員退去も」
この事態もというのだ。
「仕方ないかと」
「そうだな、だが」
中将は少将に対して答えた。
「それはだ」
「最後の最後まで、ですね」
「避けることだ」
「ではダメージコントロールに」
「そして迎撃もだ」
それもというのだ。
「行っていくことだ」
「左様ですね」
「何とかな、しかし防衛線全体の損害がな」
それがとだ、中将は今度は戦局の話をした。
「無視出来ないな」
「防衛施設、基地が」
「そちらがですね」
「損害が増えてきていますね」
「これ以上それが増えますと」
「深刻なものになりますね」
「そうだ、どうしたものか」
こう言ってだ、中将は今の状況を憂いていた。しかし見えない敵に対しては有効な手段を取れていなかった。
だがアッディーンは違っていた、彼はまさに変幻自在だった。それで敵の防衛施設とその後にだった。
敵の後方の補給基地も攻撃させてだ、こう言った。
「虫だ」
「今回の攻撃は、ですか」
「虫ですか」
「それなのですか」
「そうだ、虫は一見無秩序だが」
そこに知性はない、そうした動きをするというのだ。
「その実は違う」
「獲物の弱いところですね」
「そこをですね」
「全体的に攻める」
「そうするというのですね」
「そうだ、今の私の攻め方はだ」
それはというのだ。
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