Fate/WizarDragonknight
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”限界突破 G-beat”
カイザは襟を摘まみ、首を回す。
その手に持つのは、Xの形をした銃。
カイザブレイガンと呼ばれるその引き金を引くと、黄色の光線が発射された。
バク転で避ける響は、即座にカイザへ接近、
「な、何ッ!?」
響は驚いて、カイザの腕を受け止める。彼の手に握られていた巨大なχの文字を象った武器、その刃が、響の肩を焼いた。
「っ!」
その痛みに、響は顔を歪めた。
カイザの攻撃はまだ続く。カイザブレイガンを振り回す彼に対し、響はカイザブレイガンに接触しないようにその手首を掴んだ。
手首を軸に組み合いながら、響とカイザは格闘を続ける。
だが、そこにに、スペクターもまた肉弾戦を挑んでくる。
「くッ……!」
カイザから手を放し、バク転した響は、そのままスペクターの拳を足場にジャンプ。着地した響は、そのまま地面に足を強くめり込ませた。
すると、出現する巨大な土の隆起。それを蹴り上げ、カイザ、スペクターめがけて蹴り飛ばす。
「我流・烈衝流星脚!」
岩石を押すことで、ともに一つの流星となった響。
一方、スペクターはガンガンハンドと呼ばれる長銃を用意していた。
その中心部、目の彫刻が刻まれたその部分を、スペクターのベルト、ゴーストドライバーの目の部分が、それぞれアイコンタクトとなる。
『ダイカイガン ガンガンミロー ガンガンミロー』
すると、その銃口に青いエネルギーが溜まっていく。
『オメガ スパーク』
発射される、青い光線。
それは岩石を破壊し、その奥にいた響を空中に投げ出した。
「なッ……!」
驚く響へ、さらにカイザが追撃の斬撃を放つ。
響は反射的に体を捻り、カイザブレイガンの本体を蹴り飛ばす。さらに、無防備になったカイザへかかと落としを放つ。
地面に墜落したカイザを見届けた響は、腕のシリンダーを解放した。
「我流・撃槍烈破」
背中のブースターが火を噴く。一気にスペクターへ接近、その体へ拳を埋め込もうとする。
吹き飛んだスペクターは、カイザとともにディエンドのもとへ転がっていった。
ディエンドは二人にそれぞれ目をやりながら、頷いた。
「やっぱり厄介な力だね、ガングニール」
ディエンドは数回ディエンドライバーを手で叩きながら、やがてそのカードを取り出した。
「なかなかに楽しませてもらえそうだけど、君のガングニールや、その他のシンフォギアの力はもう見ている。そろそろ頂こうかな」
『アタックライド クロスアタック』
ディエンドはそう言って、カードを装填する。
すると、彼が召喚したライダーたちが、それぞれのアイテムに手を伸ばした。
『エクシード チャージ』
カイザは腰に付いているベルト、その携帯電話らしきものを開く。その中のボタンを押すと、その機能が解放される。
携帯電話から黄色のエネルギーがカイザの体のラインを伝っていく。それはやがて、彼の手のカイザブレイガンに到達。カイザはそのまま、カイザブレイガンの銃口を響に向け、発砲。
すると、黄のエネルギーが、そのまま響に命中。
「なッ!?」
命中と同時に網目状になったエネルギーは、そのまま響の体を拘束。
黄色に輝くカイザブレイガンを手にしたカイザが、今にも突進しようと身構えている。
さらに。
『ダイカイガン スペクター オメガドライブ』
スペクターがゴーストドライバーのレバーを引く。
すると、ゴーストドライバーが瞬きを行い、その目に表示されるマークが入れ替わる。
すると、スペクターの背後に青いマークが現れる。何らかの呪術的な要素も見て取れるそれからは、青いエネルギーがスペクターの右足に注がれていく。
「響ちゃん! ……っ!」
これ以上は黙ってみていられない。
ハルトは唇を噛みしめ。そして。
「やるしか……ない……っ!」
響の前に立ち、二人の仮面ライダーの攻撃から盾になるように立つ。
そして一瞬、その目が……
「ハルトさんッ! 大丈夫! こんなの……」
響は全身を震わせる。
「へいき、へっちゃらですッ!」
響は大声とともに、その全身に流れるフォニックゲインが高鳴っていく。それは響の白い装甲部分さえも黄色に染め上げ、やがて全身の拘束を引きちぎる。
「だりゃああああああああああああッ!」
響はそのまま、カイザとスペクターへ拳を握り、放つ。二人を同時に拳の圧で吹き飛ばし、転がした響は、黄色のマフラーを靡かせる。
そして、彼女の体という楽器は、口笛を鳴らす。静かな世界、その音だけが響いていた。
胸の歌が、始まった。
___一点突破の決意の右手 私と云う音響く中で___
スペクターがガンガンハンドの銃身で斬りつけてくる。
響はそれを避けながら、歌を続けていく。
___「何故?どうして?」の先を 背負える勇気を___
さらに、背後からカイザがカイザブレイガンで斬りつけてくる。
背中から火花が弾かれ、その動きが一瞬鈍る。だが、すぐに振り向きざま、ガンガンハンドを弾き飛ばす。
___迷いは…ないさ 拳に包んだ___
カイザとスペクターに挟まれながらも、響は腰を落としたまま身構える。
___勇め(Let’s shout)どんなんだって一直線で___
天高くジャンプした響。
___届け(Let’s shout)ありったけファイト一発でダイブ___
そのまま、垂直落下で、地面を砕く。
退避したカイザとスペクターがいた場所は、地面の隆起が貫いていた。
___ぶち抜く(壁を)ぶっこむ(ハート)___
カイザとスペクターは、再び格闘戦を挑んでくる。
だが響は、卓越した動きで二人の行動を予測。
___胸の歌がある限り___
背中を曲げて、胴体を仰向けに反らす。
その顔面をかするように、カイザブレイガンとガンガンハンドが横切っていく。
___正義(信じ)握り(締めて)___
そのまま、二つの武器を掴んだ響は、体を回転させて二つの武器の上に躍り出て、
___自分色に咲き立つ花になれ___
そして響は、自らにこう付け加えた。
___HEROじゃなく___
そして。
握った拳が、炸裂する。
「高鳴れ!」
___G-beat!___
その勢いで、拳をカイザの腹に食い込ませる。体をくの字に曲げたカイザは、そのまま上空へ吹き飛んでいく。
___メーターを___
「ガンとッ!」
___G-beat!___
続いて、響の回転蹴りが、後ろから襲ってきたスペクターの顎を打ち上げる。
___振り切れ___
並んで響を睨む二人の仮面ライダー。
正位で立ち戻った響は、一節だけそこで歌い切り。
___この両手で この歌で 守り切ってやる!___
両手の拳をそれぞれ握り合わせる。足を大きく広げ、腰を落とし。
「貫けッ!」
___G-beat!___
そして、ミサイルのように接近した響。両手の掌底で、カイザとスペクターを弾き飛ばし。
___信念を___
「燃えろッ!」
ディエンド本体へも、拳を放った。
___G-beat!___
『アタックライド バリア』
ディエンドは防御のカードを発動。
その目の前に、青い壁が出現した。半透明のそれは、響の拳がそれ以上進むことを許さない。
だが、威力は殺しきれないようだった。
そのまま地面を引きずったディエンドは、そのマスクの下できっと驚いているだろう。
___激しく___
一節で、息を吐いた響。静と動、二つの呼吸を分ける響は、一瞬の静に身を預ける。
そして、反撃してくるカイザとスペクター。
それぞれ、黄色と青の光をその右足に宿らせていく。
ゴルドスマッシュとオメガドライブ。二つのライダーキックが、響へ迫っていくが・
___限界なんて…いらないッ知らないッ____
カイザとスペクターが至近距離になった瞬間、響は動へ転じる。
身体を後ろに傾けることで、二つのライダーキックを皮一枚で避ける。
___絶対ッ!___
そして、がら空きになった二人の懐へ、響の拳が炸裂する。空へ浮かび上がった二人よりも先に、響がジャンプ。
___繋ぎ離さない___
最後の一節と同時に、響は両足で仮面ライダーたちを蹴り落とす。地面にめり込んでいく仮面ライダーは、土煙とともに消滅。
「やったッ!」
着地した響は、そのままディエンドを見つめる。
「さあ、終わったよッ! ハルトさんの指輪を返して!」
響はそう言って、ディエンドへ手を伸ばす。
あとは、ディエンドがその手に指輪の箱を渡せば、全て終わる。そう、ハルトも思っていたのだが。
『ファイナルアタックライド ディ ディ ディ ディエンド』
それが、ディエンドの返答。
響が仮面ライダーたちと戦っている間に、その準備を終わらせていたディエンド。すでに彼のディエンドライバーの銃口からは、響に向けて無数のカードの形をしたエネルギーが筒状に作り上げられていた。
そして、発射されるディエンドの必殺技。
ディメンションシュート。
それは、ガングニールの装甲を破壊し尽くし、響が悲鳴を上げた。
「響ちゃん!」
「がはッ!」
生身となった響が、そのままゴロゴロと地面を転がる。
彼女を助け起こしたハルトは、そのままディエンドを睨んだ。
「お前……っ!」
「悪いね。折角のお宝だから、頂いていくよ?」
「ふざけるな!」
そして。
一瞬、ハルトを中心とした周囲が陽炎として揺れ出していく。
「……君は……」
「そこまでだ。海東」
その時、あの声が聞こえた。
門矢士。
特徴であるマゼンタのカメラを手にぶら下げながら、彼は大股で歩いてきていた。
「やあ、士」
それを見た途端、ディエンドの声色が変わった。ディエンドの姿が三原色に分かれ、元の泥棒の姿が露わになる。
「お前もこの世界に来ていたんだな。海東」
「君がいるなら、どこにだって付いて行くよ? 士」
「海東……?」
「おや。そういえば、名乗ってなかったね」
海東と呼ばれた泥棒は、帽子を被りなおした。
「海東大樹。そこの彼と同じく、通りすがりの仮面ライダーだよ。よろしく」
「……ディケイド以上に、アンタとはあんまりよろしくしたくない……」
響に肩を貸すハルトは、小声で呟く。
だが、海東は笑みを崩さない。
「そう言わないでくれたまえ。同じライダー同士、仲良くしようじゃないか」
そう言いながら、海東は手でピストルを作り、ハルトへ発砲の仕草をする。
本気でウィザーソードガンを持ってきて生身の彼に発砲してもいいだろうか、と考えてしまったハルトは、息を吐きだして落ち着かせた。
士はそんな海東を見て、胸元の宝箱を指差した。
「いいから、盗んだものを返しておけ。この世界は、色々と見てみる価値がある」
「へえ? どんな価値かな?」
海東の返答に、士は面倒そうに首を振った。
「おや、教えてくれないのかい?」
「お前に言っても分からないしな」
「へえ……」
海東は口を歪める。
やがて、ハルトと響を見て。
「まあいいさ。士がそう言うなら、この指輪は一度返しておくよ」
「!」
「感謝したまえ。僕の寛大さにね」
海東はそう言って、指輪の箱を放り投げる。両手でキャッチしたハルトは、慌てて中を確認する。
どうやら、指輪は全て手元に戻ったようだ。安堵の息を吐くハルトは、ゴーレムの指輪もその中に入れた。
「また会おう。それじゃね」
海東は指でまたハルトを指差す。その指が、何となくハルトの胸元の指輪ケースを指しているように見えて、ハルトは箱を抱きしめた。
海東はそのまま、どこかへ去っていく。
彼を見送った士もまた、ハルトに背を向けてどこかへ歩いていく。
そんな士の後姿を見送りながら、ハルトはビーストウィザードリングを握った手を響へ押し付けた。
「響ちゃん、ありがとう。これ、コウスケに返しておいて」
「えッ? あ、これコウスケさんの指輪……返しておいてって、ハルトさんは?」
「俺は、アイツらを追いかける」
「ええッ!?」
驚く響。
だがハルトは、それ以上彼女に構うことはない。
即座にコネクトの指輪を掴み取り、必要な指輪をホルスターに収納した後、指輪を発動。
『コネクト プリーズ』
大きな荷物である指輪の箱をコネクトの魔法陣に収納したハルトは、そのまま士を追いかけていった。
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