仮面ライダーアギト 新しい誇り
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
「そうだな」
「はい。しかし」
「しかし。どうしたんだ」
「その先にも戦いがあります。それでもいいのですね」
「言った筈だ」
木野はそれを言われても臆してはいなかった。
「それが運命なら俺は」
「そうですか」
「戦うだけだ。その先に何があろうと」
「わかりました。それでは」
青年は言った。
「行くのです、アギトとして。いや」
その言葉を訂正する。そのうえで述べた。
「戦士として」
「わかった」
こうして彼は蘇った。そのまま何処かへと向かった。こうしてアギトの戦士が一人蘇った。そしてこれは三人の若者達をまた戦いへと向かわせるということでもあった。
葦原涼は黒衣の青年との戦いの後で一人何処かへと姿を消していた。彼はある街で暮らしていた。共にいるのは犬と勤めている工事現場で知り合った一人の若い女性。彼はそこで慎ましいながらも幸せな生活を送っていた。
彼は働き終えてそこから家に帰ろうとしていた。だが着替え終え職場を出たところで目の前に一人の若い女に出会ったのであった。
「葦原涼君ね」
「誰だ、あんたは」
葦原は彼女の問い掛けにまずは警戒の色を見せた。
「知らない顔だが」
「貴方をギルスとしてお話したいことがあるの」
「!?」
とっさに身構える。もう忘れた筈の話だがそれを思い出した。この女は何者かと考える。どう考えても尋常な者ではないと感じた。何故なら彼がギルスであることはごく限られた人間しか知らない筈だからだ。
「いいのよ、私は戦うつもりはないわ」
女はにこりと笑ってそう述べてきた。
「だから構えは解いて欲しいの。いいかしら」
「そうか。しかしあんたは」
彼はここで人の目に気付いた。道の中だったので人が周りにいるのだ。それで彼は場所を変えることにしたのだ。
「場所を変えたいが。いいか」
「お茶でも飲みながらね」
「ああ」
こうして二人は喫茶店に入る。葦原はそこで女の話を聞くのであった。
「まずはだ」
話を切り出したのは葦原からであった。
「俺のことを知っているのは何故だ?」
「その力のせいよ」
窓側の席で向かい合って座っている。女はその中で笑ってきた。
「だから」
「俺の力をか。どうやって知ったのかは」
「だって貴方と似た人達がいたから」
「俺と!?」
「そう。津上翔一君にも氷川誠君にも似た人達も知っているわ」
彼女は言う。
「だから貴方も知っているのよ。わかるかしら」
「あいつ等も知っているのか」
「ええ」
やはりにこりと笑って述べてきた。
「その通りよ」
「あんた・・・・・・普通の人間じゃないな」
「ふふふ、それはどうかしら」
この笑みは肯定に近かった。葦原はそこに人にあらざるものを感じていた。
しかし今は不思議と警戒も危惧もなかった。ただ何かあの青年に近いものを感じていた。それは確かであった。
「それでね」
「その俺と似た連中か」
「そうよ。彼等が今大変なことになってるの。それで」
「戦えということか」
「そうなんです。悪いけれど」
「またか」
葦原はそれを聞いて俯いて呟いた。苦い顔になっていた。
「俺はまた。戦うのか」
「駄目?」
「いや」
それでも彼はそれから逃げようとはしなかった。それを受け入れたのであった。
ページ上へ戻る