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学校の成績は悪くても

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第一章

                学校の成績は悪くても
 八条不動産神戸本社の新入社員石坂慎吾面長の顔でかなり色黒で一六七位の痩せた身体で丸い目と小さな唇にスポーツ刈りの彼は非常に活動的だ。
 よく気がついて常に先の先を読んで仕事をしていて視野も広い。所謂出来る社員として有名になっている。
 しかしその彼と高校大学で先輩だった土江立輔細く小さな目と長方形の色白の顔に黒く短くした髪の毛と一七六の背に引き締まった身体の彼は言っていた。
「あいつボクシング部ではホープで」
「国体にも出てるよな」
「それで有名だよな」
「そう聞いてるけどな」
「ですが勉強の方はです」 
 こちらはというのだ。
「もう全然してなくて」
「悪かったんだな」
「そうなんだな」
「そっちは」
「それで俺が誘ったんですが」 
 この会社にというのだ。
「元気さを買ってで」
「あそこからいきなり出来るなんてか」
「頭も使って」
「それで仕事が出来るとか」
「予想外でした、本当にです」  
 こうも言うのだった。
「あいつがあそこまで出来るなんて」
「嬉しい誤算か」
「先輩としても」
「そうなんだな」
「はい、俺も同じ部活でしたから」
 土江は今も現役だ、それでいつもトレーニングもしている。
「よく知ってますが」
「成績は悪かった」
「けれど仕事は出来る」
「それがか」
「はい、よかったです。俺も負けていられないですね」
 実は働いている部署は違う、それでもだ。
 土江は石坂の働きぶりを見て自分もと発奮して頑張っていった、そんな中で石坂それに土江にとって恩師である大学時代のボクシング部のコーチである稗田昴流大柄で引き締まった身体に鋭い目を持つ彼が二人を飲みに誘ってだった。
 三人で居酒屋で飲んでいる時にまずは石坂に言った。
「早速評判になってるらしいな」
「俺がですか」
「ああ、出来る新入りだってな」
 このことを笑顔で言うのだった、焼き鳥を持ちつつの言葉だ。
「もうな」
「いや、俺はまだまだです」
「いやいや、俺も聞いてるよ」
 同じ会社の土江も言った、その手にはビールがある。
「お前のことはな」
「色々失敗してますよ」
「失敗してもそれ以上に結果出してるからな」
 イカのげそ焼きを食べている石坂に言った。
「俺も負けていられないよ」
「そうですか、けれど俺ずっと学校の成績悪かったですけどね」
 石坂はこのことを自分から言った。
「小学校からで高校はいつも赤点で大学も何とか卒業出来た」
「まあそれはな」
 土江も否定しなかった。
「俺も知ってるよ」
「同じ部活だったんで」
「聞いてたし傍目で見てるからな」
 それでというのだ。
「何もな」
「そうですよね」
「実は俺も最初お前は元気さを買ってで頭使った仕事はな」 
 それはというのだ。
「期待してなかったんだ」
「そうだったんですね」
「ああ、けれどな」
 それがというのだ。
「そうした仕事も出来るなんてな」
「俺も驚いています」
「頭使うのと学校の勉強は違うからな」
 ここで稗田が言ってきた。 
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