Fate/WizarDragonknight
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平行世界
「へえ。アンタもやるのか?」
ディケイドはライドブッカーをキャスターへ向けながら言った。
キャスターはほとんど表情を変えずに、その手をディケイドへ向ける。
「シュート」
無情に放たれる、漆黒の光線。ディケイドの前のアスファルトを砕きながら、それはどんどんディケイドへ距離を詰めていく。
避けたディケイドは、即座にライドブッカーからカードを取り出した。
『アタックライド スラッシュ』
可奈美へも使用した、ディケイドのカード。それは、一太刀だけで複数の斬撃を持つ。
一気にキャスターへ接近、そのマゼンタの刃を振り下ろした。
一方キャスターも、左手の籠手でライドブッカーをガード。甲高い音が響き渡る。
キャスターは膝を付いたままのほむらを見下ろし、
「この場を双方無傷で終わらせられる。それでは不満か?」
キャスターの両手に、光と闇の球体がそれぞれ現れる。それはみるみるうちに大きく成長し、二つの間で雷光が行き来する。
それを見上げていたディケイドは、大きく肩を落とし。
「俺はな」
そのカードを取り出した
ディケイド自身のクレストマークが描かれたそのカード。それをディケイドライバーに装填。すると、無情なガイダンスボイスはそれを知らせた。
『ファイナルアタックライド』
「命令されるのが一番嫌いなんだよ……!」
あとは、ディケイドライバーのフックを閉じるだけ。
ディケイドライバーから流れる待機音声が、それを見守るハルトたちへ不安を煽る。
数秒、キャスターとディケイドの間に沈黙が流れる。
やがて。
「……ふん。止めだな」
ディケイドは、先にそう言った。ディケイドライバーを開き、装填していたファイナルアタックライドのカードを引っ張り出す。そのままディケイドライバーを放置することで、彼の変身は解除、もとの青年の姿に戻った。
「賢明な判断だ」
キャスターはふわりと音もなく着地した。彼女もまた、翼を収め、顔の赤い紋様が消えていく。
ハルトたちの前には滅多に見せない、キャスターの非戦闘時の姿。その美しさに一瞬見惚れるが、すぐにハルトはディケイドの正体である青年に目を移す。
すらりと伸びた高身長と、首から下げたピンク___マゼンタのポケットカメラが特徴の彼は、静かに非戦闘の姿のキャスターを撮影する。
それは、数日前にラビットハウスに訪れた客でもあった。
「お前も……俺が知っているお前とは違うようだな」
「お前は何者だ?」
キャスターが冷たく問いただす。
彼女の隣に立ったハルトもまた、彼が答えるのを待った。
彼はにやりと笑みを崩さないまま、その名を口にした。
「人に名を尋ねるときは、自分から名乗るものだぜ?」
「……私は……」
「知っている。尋ねはしたが、別にお前はいい」
青年は、キャスターの名乗りを手で制する。そして、ハルト、そしてコウスケへ向き直った。
「俺が知りたいのは、お前たち二人だ」
「俺たち?」
「何でオレたちだけなんだ?」
コウスケの問いに、青年は肩を鳴らした。
「他の奴らは全員知っている。何なら、ウィザードとビーストもな。だが、お前たちだけは知らない」
「でも、私はあなたと会った覚えはありませんよ?」
腕を抑えながら、えりかが言った。
彼女の腰についていたセラフは、いつのまにか無くなっており、セラフがある間点灯していた彼女の服の一部も、その光を失っている。
青年は鼻を鳴らす。
「さっきも言ったが、俺はお前たちを知っているぞ。蒼井えりか」
「!」
「何なら、セラフ部隊の真実もな……」
「セラフ部隊の真実……?」
「もっとも、この世界にはもう関係ないことのようだがな」
ぽかんとした顔のえりか。
士はそれ以上えりかに構わず、起き上がった者たちへ顔を向けた。
「他の奴も当ててやろうか?」
「わ、なんか怖いんだけど……」
可奈美はそう言って、千鳥を抱き寄せる。
士は何てことなさそうに、可奈美へ口を開いた。
「衛藤可奈美。美濃関学院中等部二年。御刀、千鳥に選ばれた刀使で、底なしの剣術バカ」
「何で知ってるの!?」
「前に会った時は、別れ際にまた立ち合いしようとか言われたんだがな」
目を白黒させる可奈美に構うことなく、士は続ける。
「次はお前だ、立花響」
「ちょっと待ってまだ心の準備がッ!」
「シンフォギア、ガングニールの奏者、立花響。国連直轄の秘密組織、S.O.N.G所属。敵であっても手を繋ぐことを信条としている、趣味は人助けのお人よし」
「ご、ご名答……ッ!」
唖然とする響。
だが士は、ため息を付きながら続けた。
「もっとも、小日向未来がいない場所にいるとは思わなかったがな」
小日向未来。
その名は、ハルトにとっても覚えがあった。
昨年末、響の記憶より作られた彼女の最も大切な敵が、そんな名前ではなかったか。
「結城友奈」
「わたしのことも知ってるの!?」
次の標的にされた友奈が口を抑えた。
士は頷き、すらすらと彼女の内情を語っていく。
「讃州中学二年の勇者部。うどんと武術が好きで、勇者部活動で人助けでもしてるんだろ?」
「すごい! 当たってる!」
友奈はパチパチと拍手をした。
「各務原あずみのゼクス、リゲルに……キュゥべえと契約した魔法少女、暁美ほむら。それに、超古代電波文明、ムーの末裔ソロ……」
「何でも知っているんだな……逆にそこまで知っていてなんで俺たちのことは知らないんだよ」
凄いを通り越してため息になる。
そんな経験を珍しいなと感じながら、ハルトはため息を付いた。
「……松菜ハルト。指輪の魔法使い、ウィザードをやっている」
「おいハルト、お前何普通に名乗ってるんだよ」
コウスケがハルトの肩を掴む。だがハルトは彼の腕を振り払い、耳打ちした。
「仕方ないだろ。今の俺たちには、あのディケイドに対する情報が何もないんだ。アイツのことを少しでも知りたい」
「……まあ、一理あるか」
コウスケは渋々承諾した。
「オレは多田コウスケだ。オレも、指輪の魔法使い、ビーストだぜ」
「指輪の魔法使い……だが、やはり仮面ライダーか」
「仮面……ライダー?」
聞き覚えのない単語に、ハルトは聞き直す。
いや、正確には、一度だけ聞き覚えがあった。確か、ハルトのサーヴァントである真司___龍騎が召喚された時、自らを仮面ライダーと名乗っていなかったか。
青年は、首からぶら下げているピンクのカメラを手に取る。そのネジを回し、やがてハルトとコウスケの二人へレンズを向けながら、その名を告げた。
「門矢士」
士。
その名を持つ彼が、カメラのシャッターを押すのと同時に、さらにもう一言、付け加えた。
「世界の……破壊者だ」
「破壊者……やっぱり、聞き覚えがある……!」
だが、思い出そうとするハルトの前で、コウスケは士に詰め寄る。
「破壊者だァ!? ってことはお前、オレ達のこの世界をぶっ壊そうってのか!?」
「コウスケさん、落ち着いてッ!」
コウスケを止める響。
だが、それで冷静になれるコウスケではない。
「いきなり襲い掛かって来て、それはねえだろ!? お前、参加者じゃねえのか!?」
士の胸倉を掴むコウスケ。だが士は、表情一つ変えることなく、その手を払いのけた。
「参加者? 何のだ?」
「これに決まってんだろ!」
コウスケは、自らの右手に刻まれた黒い紋章を見せつける。
元々あったのは、巨大なフォニックゲインの紋章だったが、今はその三分の二が消失し、右上の部分だけしか残っていない。
「……令呪か?」
士の口から真っ先に出てくるその言葉。
その単語を知っているという事実に、ハルトたちは愕然とした。
「令呪を知っているってことは……」
「やっぱりお前も参加者だったんじゃねえか!」
「だからコウスケさん落ち着いてッ!」
より一層、コウスケが士への警戒を強める。
「だいたいわかった……これは、聖杯戦争だな? そういえば、お前アイツをキャスターと呼んでいたな……」
士は自らの右手を見下ろしながら頷いた。
「なら、お前らも聖杯戦争に参加しているのか?」
「聖杯戦争まで知っているのか?」
「ああ。いくつかの世界でも、どいつもこいつも血なまぐさい殺し合いをしていたからな……で? 今回はどこの魔術協会が絡んでいるんだ? あと、今回の御三家はどいつだ?」
「御三家……?」
「遠坂間桐アインツベルンのことだが……そんなことも知らないのか……それとも、いないのか?」
士はそう言って、自らの右手を見下ろす。
「聖杯戦争か……どうやら、それが俺の役割らしいな……」
「役割?」
聞き返す友奈。
士が友奈を含め、ハルトたちに見せつけたのは。
右手。その手の甲に刻まれていたのは、彼が先ほどまで変身していた、ディケイドのクレストマーク。
それが意味するもの。ハルトたちの顔が一気に引き攣る。
「プリテンダーのマスターにしてサーヴァント。それが、この世界での俺の役割のようだ」
険しくなったハルトたち。だがすぐに、士が言った言葉を汲み取り、疑問符を浮かべた。
「マスターにして……サーヴァント?」
「おい、一体どういうことだ?」
「何だっていい……」
それは、ソロの声。
全身が傷だらけの状態ながら、彼は手にしたラプラスソードを士へ向けた。
「参加者なら……オレの敵だ!」
彼は、手にしたラプラスソードで、士へ振り上げる。
士は即座に手にしたライドブッカーを展開、ラプラスソードを受け流す。
「お前がすぐに俺を敵だとみなすのは知っていた」
だが、士は手慣れた剣捌きでラプラスソードをいなしていく。
それぞれの実力は拮抗していたが、それでも焦りを見せるソロの方が劣勢にも見えた。
「チッ……!」
苛立ちを露わにしていくソロは、やがて大きくラプラスソードを振る。
発生した紫の衝撃波が士を狙うが、士は体を大きく捻らせ、その攻撃を避ける。
「だが、どうやらお前たちは全員、俺が知っている奴らとは多かれ少なかれ違いがあるようだ!」
士はそう言って、ソロへ手を伸ばす。
すると、彼の前に銀色のオーロラが出現する。まるでソロの前に壁のように出現したそれを見て、ハルトは思わず口を動かした。
「あれって……コエムシが処刑人を召喚するときの!」
「マジかよ!」
コウスケも同じく驚く。
銀色のオーロラは、ソロの前後に出現。オーロラに飛び込んだ士がソロの背後に出現、そのまま蹴り飛ばした。
「なっ……!?」
ソロの二度目の敗北。
士はそのままライドブッカーを折り畳み、手を叩いた。
「安心しろ。参加者だが、特に叶える願いも持ち合わせていない。この世界での俺の役割が終わったら、また別の世界に行くつもりだ」
「参加者が見滝原の外に出たら、強制的に死ぬぞ!」
「そんなもの、俺には通用しない」
「……平行世界から来た、とでもいうの?」
ずっと黙っていたリゲルが、口を開いた。
バトルドレスと呼ばれる彼女の戦闘服は、先の戦闘により傷ついており、変身を解除し、生身のまま剣を士へ向けている。
士は鼻を鳴らしながら、手をポケットに入れた。
「この中ではお前にだけは突っ込まれたくないな。青の世界からブラックポイントを経由してきた、お前にだけは」
「……」
「なぜ、私たちのことをそこまで知っているの……?」
今度は、ほむら。
彼女が左手に付けている盾にヒビが入り、武器の出し入れが出来ないように見える。
「そして、私たちのことをどこまで知っているの?」
「何なら、もう少し詳しく解説してやろうか、暁美ほむら。鹿目まどかを救うため魔法少女になり、ワル……」
「もういいわ」
士がそれ以上の情報開示を、ほむらが止める。
「私のことも知っているようね……平行世界……ね」
ほむらは少し腑に落ちたように、表情を和らげる。
「まさか……別時空の私たちに会ったとでもいうの?」
「そんなところだ……と言ったら、信じるか?」
士はにやりと笑みを浮かべながら、そのまま歩み去ろうとする。
キャスターの横を素通りした彼。
「ま、待って!」
ハルトは追いかけようと駆け出す。だがその目の前に、ライドブッカーの銃口が当てられた。
「……!」
「そんなに焦るな。どうせまたすぐに会えるさ。この聖杯戦争、俺も少し混ぜてもらうからな」
「……お前は結局、一体何者なんだ……?」
ハルトの問いに、士はライドブッカーをしまい直す。
にっと笑みを浮かべ。
「通りすがりの仮面ライダーだ」
「……ディケイド……!」
物陰から、士を見つめる影。
それは、協会にて、聖杯戦争の監視役より命令を受けたサーヴァント。
ルーラーのクラスを持つ彼は、その目で彼___仮面ライダーディケイド、門矢士を睨んでいた。
「まさか、奴もこの世界に呼ばれたというのか……」
歯ぎしりを繰り返しながら、彼は影に身をひそめる。
「それにウィザード……! 奴とは違うようだが、ウィザードまでいるのか……! さて、どうしたものか……」
後書き
真司「ハッ!」
紗夜「どうかしましたか?」
真司「なんか、メインキャラ大集合なのに一人だけ省かれているとかいう不憫な目に遭わされている気がする!」
紗夜「いきなり何を言っているんですか……?」
真司「ああ、ごめんごめん。それで、何だっけ紗夜ちゃん?」
紗夜「はい。その……城戸さんは、インターネットとか詳しいんですか?」
真司「いやあ、それが思ってたよりもからっきしでさあ。俺が生きていた時と今じゃ、全然環境が違っててさあ。追いつくのだけでも大変なんだよなあ」
紗夜「そうですか……」
真司「どうしたの?」
紗夜「いいえ、忘れてください」
真司「ハルトじゃなくて俺に聞いてきたってことは、なんか俺なら協力できそうなんだろ? 言って見なよ。力になるから」
紗夜「いいえ……」
紗夜(言えない……! 最近ネトゲに熱中して誰か仲間が欲しくなったなんて……! こんなこと、松菜さんには知られたくない……!)
真司「紗夜ちゃん?」
紗夜「な、何でもありません! それより、今日のアニメどうぞ!」
___華やいだ灯りで 未来照らし導く夢と光 なぞるように触れたいんだ___
紗夜「ぶっ!」
真司「紗夜ちゃんが倒れた!」
紗夜「何でこのタイミングでこのアニメ……」
真司「おおい! あ、カンペが落ちてきた……今回のは、ネト充のススメ!」
紗夜「2017年の10月から12月放送のアニメです……」
真司「会社を辞めて自称エリートニートになった盛岡森子さんが、ネナベプレイしていたら、リリィって女の子と出会い、そこからリアルもネットもどんどん生活が変わっていくってアニメだぜ! で、これと紗夜さんが爆発していることに何の関係が?」
紗夜「ネトゲから……色々繋がるなんて……羨ましすぎます……!」
真司「紗夜さん! しっかりしろ! 紗夜さん! ……ちなみに紗夜さんが仲間欲しがってるネトゲって何?」
紗夜「……これです」スマホ画面
真司「おおっ! これ、無料でプレイできんの!? すげえ!」←当時無料プレイなんて少なかった人
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