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おっちょこちょいのかよちゃん

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266 戻って来たのは

 
前書き
《前回》
 りえを探し続けるあり達はスターリンと交戦する。その場にスターリンの妻・エカチェリーナが現れ、ありの攻撃はますます通じない状態と化していくが、奏子の羽衣、鎌山・立家の攻撃で二人の攻撃を封じ、形勢を逆転させる。逆に追い詰めたのだが、スターリンは短刀で自分とエカチェリーナに巻き付いている奏子の羽衣を無理矢理破って脱出してしまい、行方をくらませてしまった。そしてフローレンスとレーニン、対立する二つの世界の長はそれぞれの作戦を進めていた!! 

 
 平和を正義とする世界へと進む房子達日本赤軍と東アジア反日武装戦線の連合軍は仲間である西川純と佐々木則夫の奪還を目的としていた。
「房子総長」
 東アジア反日武装戦線を取り締まる大道寺将司が赤軍の長を尋ねた。
「何かしら?」
「敵共はこの取引について裏をかこうとする可能性はある、いや絶対そうするのではないですか?」
「私もそう思ってるわ。でもその前に二人を返してくれるのかしらってところよ。あとはこの取引が終わったら私達を纏めて拘束して警察に引き渡すかもしれないわね」
「かなり危険な賭けですね」
「こっちも欺くのよ。そうでないとレーニン様達の世界の人だって満足しないわ」

 昼に近づいて来た。本部の管制室ではイマヌエルと先代の杖、護符、杯の所有者達がいた。
「今フローレンスが赤軍や東アジア反日武装戦線との取引に向かっているのだが、奴等が要求に応じるわけがない。しかし、それを見越してこっちも策を講じているんだ」
「それってどんな策なの?」
「こちら側で守備に付いている本部守備班だけでなく、此方側にいる私達の世界の人々も協力して貰いに来ているのだよ」
「それで追い払えるのかしら・・・?」
「だが、赤軍達の方も大量の人間を出向かわせている。激しい戦いになる事は免れんだろう」
(それにしてもトロツキーは羽柴さり君の護符を取ろうとして失敗した後、別の場所へ瞬間移動したようだが、一体何をしているのか・・・?)
 イマヌエルは地図を確認した。トロツキーは赤軍の集団へと向かっていた。
(赤軍の人間とこれからの行動を打ち合わせる予定か・・・?)

 時間は昼に近くなっている。かよ子達は今の所赤軍や戦争主義の世界の人間とはぶつかってはいないが、気を抜けなかった。 
「・・・ん?」
 大野は何かの違和感を感じている。
「大野君、どうかしたのかブー?」
「ああ、向こうから誰かが来る気配がするんだ」
「まさか、赤軍?それともこの世界の人?」
 かよ子は既に武装体制の支度済みであった。
「いや、それとはまた違うんだ」
「え?もしかして・・・、私達に協力してくれる人、なの・・・?」
「味方が増えてくれるなら嬉しいのう・・・」
 友蔵はホッとした。
「お〜い、お前ら〜!!」
 この声は聞き慣れていた。かよ子も、まる子も、大野も、ブー太郎も。
「この声って・・・!!」
 かよ子は声の方向を向いた。姿が近くなると、驚いた。
「え、す、杉山、君・・・!?」
 戦争主義の世界に寝返った筈の杉山だった。

 護符の所有者との戦いで劣勢に追い込まれたトロツキーは別の場所へ緊急脱出した。
「まさか、護符の所有者如きに打ちのめされるとは・・・!!」
「兎に角、別の作戦に動こう」
 同行していた岡本と日高は房子達への合流を試みた。

「杉山君、どうしてここに!?」
 かよ子は疑った。何しろ寝返った杉山がのこのこと、この場に現れるとは・・・。
「杉山・・・!!」
 大野は杉山を睨んだ。
「お前、山田の杖を取りに来たんだろ?」
「ちげえよ、もうあいつらに用はねえ。お前らに協力してやるよ」
(本当に?)
 かよ子は前に杉山と会った時を思い出す。杉山は戦争主義の世界の長に身体を貸し与え、一心同体となったのではないか?
「本当にそうなの?レーニンに変化しないだけじゃないの?」
(怪しい。杉山君、本当に赤軍や向こうの世界の人を簡単に捨てられる筈がない・・・!!)
「おい、大野」
「何だよ?」
 (喧嘩した身とはいえ)親友である大野でも警戒心は崩していない。
「お前、俺の石持ってんだろ?」
「これか?」
 大野は雷の石を出した。
「ああ、これで組織『次郎長』復活だな」
 だが、まる子もブー太郎も組織再結成の嬉しさは皆無だった。
「杉山君・・・」
 かよ子は尋ねた。
「一つ聞いていいかな?」
「おう」
「りえちゃんや藤木君は今どうしてるの?」
「え?な、何であいつの事なんか」
「杉山君なら解ってる筈だよ!二人のいる場所!あの人達と手を切ったならすぐに教えられる筈!」
「そ、それはなあ・・・」
「杉山さとし、お主は杯の所有者・安藤りえを拉致した所を見ているのだ。(とぼ)けているとなればお主は本物の杉山さとしではないな?」
 次郎長が推察した。石松や綱五郎達も刀や拳銃の準備を既にしている。
「俺の刀で試させて貰うよ」
 関根は国定忠治の刀を杉山に向けた。
「お、おいおい、待てよお。俺を殺そうとしねえでくれよなあ」
「いいや、刺したり斬ったりしないよ。本物の杉山さとし君ならこの刀が光るようにさせるよ。光らなかったら偽物だ」
 関根は刀の刀身を確認した。

 本部の管制室。イマヌエルと先代の護符、杯、そして杖の所有者達により戦争主義の世界、平和主義の世界の境界線での取引に緊迫感を覚えていた。イマヌエルはフローレンおよび本部守備班が無事である事を常に祈っているが、まき子は娘の方をふと気にした。赤軍とも戦争主義の世界の人間とも異なる灰色の点がかよ子達の所に来ているのだった。
「イマヌエル、かよ子達の所に何か来ているわ。これは何なの?」
「え・・・?」
 イマヌエルはその灰色の点を確認する。
「私にもよくわからない。もしかして別の勢力か?確認してみよう!」
 イマヌエルは藤木救出班への連絡を試みた。
「こちらイマヌエル。藤木救出班の皆、今誰かと戦ってるのかい?」
『こちら椎名歌巌!今敵に寝返った筈の杉山さとし君がいる!敵とは手を切ったという事で!』
「え?杉山さとし君がだと・・・!?」
 イマヌエルは状況が掴み切れなかった。
『だが、本物がどうか不信感が強い。今関根の刀で確認中だ!』
「解った!くれぐれも用心してくれ!」
「え?杉山君が戻って来たの?」
 まき子が驚いた。
「ああ、だが本物かどうかは皆も解っていないようだ」
(レーニンは杉山さとし君を切り離したのか・・・?)

 紂王の屋敷。りえは喘息で咳き込んでしまった事で遊女から貰った薬を服用して眠っていた。気がついたら寝付いていた。
(・・・)
 りえも昼になるまで寝ていたとは思わなかった。起きるとその部屋には誰もいなかった。
(藤木君はまだ帰ってきてないのね・・・)
 りえは寝台から出た。気が付けば喉が渇いていた。りえは呼出のボタンを押した。
『はい、如何なされましたか?』
「喉が渇いたわ。お水を頂戴」
『畏まりました』
 そして少しして遊女が水を持って来た。藤木と妲己も現れた。
「りえちゃん、起きたんだね」
「うん、ごめんね、迷惑かけて」
「いいんだ、気にしなくていいよ。りえちゃんの身体が大事だし」
「うん、ありがとう」
「そうだ、お嬢、藤木茂坊からいい提案があるのだが」
「提案・・・?」
「婿殿の特技を覚えているかね」
「え、ええと・・・?」
「スケートだよ」
「あ、そうだったわね」
「婿殿がそなたにその『すけーと』とやらをする姿が見たいというのだ。明日、雪の降る山に氷の泉がある。皆で行こうではないか」
「ええ、是非見て見たいわ」
「りえちゃん・・・、ありがとう」
「それではそろそろ昼食の時間となる。食事係が『かれー』という天竺の料理を作ってくれているぞ」
「はい、行こうよ」
「ええ」
 りえは水を飲んだ後、藤木と手を繋いで部屋を出た。本当のカップルか夫婦のように。

 杉山が本物か偽物か、関根の国定忠治の刀が確認する。かよ子はできれば偽物でないと祈った。
「光らない・・・」
 かよ子の僅かな祈りは叶わなかった。
「じゃあ、お前は偽物だな!これは渡せねえ!」
 大野は雷の石をポケットにしまった。
「おいおい、その刀がおかしいんはねえのか?」
「杉山君・・・、悪いけど・・・」
 かよ子は偽物とはいえ、杉山を攻撃するなどできなかった。だが、好きな男子だからという事で攻撃を躊躇うなどここではやってはいけないと思い、杖で丸鋸を出して杉山を両断しようとした。
「おいおい、俺を殺しちゃまずいぜ!」
「・・・え?」
 かよ子は慌てて丸鋸を杖の先に戻した。 
 

 
後書き
次回は・・
「偽物に惑わされるな」
 ふと戻って来た杉山が偽物だと解り攻撃しようとしたかよ子だったが、「自分を殺してはまずい」という彼の言葉に攻撃を躊躇ってしまう。更に杉山は杖を自分に渡すように迫る。自分の杖が狙われている事も承知しているかよ子はそのような要求を受け入れられるわけがなく・・・!?
 
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