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クラシックドーナツ

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第三章

 オールドファッションを出してだ、彼に言った。
「はい、じゃあこれね」
「食べさせてもらうね」
「お父さんとお母さんの分もあるし」
 両親のものもというのだ。
「それでお姉ちゃんも食べるから」
「じゃあ一緒にね」
「ええ、食べましょう」
「それじゃあね」
「チョコレートのドーナツもあるけれど」
 見ればそちらもあった。
「それを食べる前にね」
「このドーナツをだね」 
 弟はオールドファッションを見つつ話した。
「食べるんだね」
「そうしてね」
「うん、約束だからね」 
 それならとだ、弟も頷いてだった。
 そのドーナツを手に取って口に近付けてだった。
 頬張り口の中に入れて咀嚼した、そうして言うのだった。
「美味しいよ」
「そうでしょ」 
 姉は笑顔で言う弟に自分も笑顔になって述べた。
「このドーナツも」
「僕確かにチョコレート好きだけれど」
「こうしたね」
「チョコレート使ってないドーナツもだね」
「美味しいのよ、それにね」
 麻利絵はさらに話した。
「このドーナツがはじまりなのよ」
「はじまり?」
「そう、ドーナツのね」
 話したのはこのことだった。
「はじまりなのよ、このドーナツが最初に出て」
「それでなんだ」
「他のドーナツも出来ていったのよ」
「じゃあこのドーナツがないと」
「そうよ、慎吾の好きなね」
「チョコレートのドーナツもだね」
「ないのよ」
「そうなんだ」
「だから」
 それでというのだ。
「こちらのドーナツもね」
「美味しいし」
「だからよかったら」
「食べていいんだ」
「そうしてね」
「うん、美味しいよね」
 オールドファッションを食べながら応えた。
「このドーナツも」
「そう言ってくれて何よりよ」
 ここでは店員としてだった、麻利絵は笑顔で応えた。そうしてだった。 
 翌日店長にこのことを話すとだ、彼は笑顔で話した。
「そうそう、オールドファッションは基本でね」
「美味しいですね」
「そうだよ」
 こう言うのだった。
「安定した美味しさがあるから」
「それでよく売れますね」
「そうだよ、ドーナツというとね」
 何といってもというのだ。
「まさにね」
「基本はですね」
「オールドファッションだよ」
 このドーナツだというのだ。
「だからこれからもね」
「売っていきますね」
「そうしていこう」
「はい、そうしていきます」
 麻利絵も笑顔で応えた、そうしてだった。
 この日もドーナツを揚げて売っていった、その中でオールドファッションもあったが安定して売れた。そうしたドーナツだということを彼女はあらためて知ったのだった。


クラシックドーナツ   完


                 2022・10・14 
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