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Fate/WizarDragonknight

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マゼンタの戦士

 
前書き
今回から数話に渡るシーンは、それこそウィザード放送当時から作りたかったシーンの一つです 

 
「あー! いた! 食い逃げ!」

 可奈美は指さす。
 ラビットハウスがある木組みの街と呼ばれる地区にある広場で、青年は振り向いた。

「待ってッ! 可奈美ちゃんッ!」

 追いかけてきた響も、可奈美に並ぶ。
 青年は二人を一瞥し、ため息を付く。

「なんだ。こんなところまで付いてきたのか」
「当たり前です! お金! 払ってください!」

 可奈美は詰め寄る。
 だが青年は、平然とした表情で街を指差す。

「俺より、あれ。いいのか?」
「何ですか?」

 可奈美と響は怪訝な表情で彼の指先へ目を移す。
 そこには。

「さあ、絶望してファントムを生み出せ!」

 ファントム。
 ゲートの全てを喰い尽くして生まれる生命体。これまでも幾度となく可奈美と響の前に現れてきた怪物。
 今回のそれは、上下に大きな角と顎を持つ者。
 先日ブラウニーを倒したばかりなのに、と唇を噛みながら、可奈美は愛刀、千鳥を抜く。

「片っ端から絶望させろ!」
「そうはさせない!」

 可奈美はそう言って、千鳥を振り上げる。
 ファントムはその斬撃を避け、可奈美を見据える。

「邪魔をする気か……なら、お前から絶望してもらう……!」

 ファントムはそう言って、無数のグールたちをけしかけてくる。
 可奈美は響と背中を合わせ、周囲のグールたちを警戒する。

「仕方ない……あの! 私たちから離れないでくださいね!」
「……」

 可奈美の言葉に、青年は全く表情を変えない。
 少しむっとしながらも、可奈美は繰り返す。

「いいですね!?」
「はいはい」

 青年は肩を窄めた。
 可奈美と響は、それぞれ背中を合わせる。可奈美が千鳥を抜くと、その音が乾いた空に響き渡る。
 そして、襲い来るグールの槍。
 可奈美は千鳥でそれを受け流し、同時に響が蹴りでグールを反撃。
 だが、グールたちの波は収まらない。

「可奈美ちゃん!」

 可奈美の背後から襲おうとするグールを、飛び掛かった響が殴り飛ばす。

「ありがとう、響ちゃん!」
「うん!」

 背中合わせになった可奈美と響を取り囲むグールの群れ。
 それを見ながら、二人は同時にその力を発動させた。

「Balwisyall Nescell gungnir tron」
「写シ!」

 可奈美と響は、同時にそれぞれの力を解放する。

 可奈美の全身を白い霊体が覆うのと時を同じく、響の体を黄色の唄のエネルギー(フォニックゲイン)が包み込む、やがて、無数の機械パーツが取り付けられ、SG-03 ガングニールのシンフォギアを纏う。

「ぶっ飛ばすッ!」

 響は叫ぶと同時に、両手の拳を突き合わせる。そのまま、響はラッシュでグールたちを蹴散らしていく。

「よし、私も!」

 可奈美の千鳥が、太陽光を反射させる。
 そのまま、刀使の素早さで、次々とグールたちを切り刻んでいく。

「おのれ……かかれ! かかれ!」

 ファントムはグールたちにさらに命令する。
 動きが鈍いものの、グールたちの槍は確かに脅威。だが、そんなグールたちの背後に。

 巨大な桃色の花が咲いた。

「勇者パアアアアンチ!」

 その声とともに、グールの群れが砕け散る。
 そして、可奈美と響の前に着地していたのは。

「「友奈ちゃん!」」

 桃色の独特な衣装を身に纏った、ポニーテールの少女、結城友奈。彼女は地面に拳を埋め込んだ体勢から立ち上がり、可奈美たちへ声をかける。

「ラビットハウスへ向かってたら、なんかすごいことになってたよ!」

 友奈はそう言って、グールたちとの戦いに参加する。
 卓越した武道の動きで、次から次へとグールたちを薙ぎ倒していく。

「可奈美ちゃん、一体どうなってるの!?」
「説明は後だよ! まずはファントムたちをやっつけよう!」
「了解ッ! 可奈美ちゃん、グールたちはわたしと友奈ちゃんでッ!」

 グールを他のグールたちへ投げつけた響が叫ぶ。
 友奈は頷いてそれに応じ、可奈美へ頷いた。

「うん、ファントムは私が!」

 可奈美は敵の中心であるファントムへ千鳥の刃先を向ける。
 だが。

「ファントム……ね」

 あの食い逃げの青年が、胸元のカメラでファントムを撮影している。数回シャッター音が鳴り、やがてポケットに再び手を入れる。

「危ないですよ!」
「友奈ちゃんッ! その人は……」
「その人を安全なところに! あ、でもできれば私の目が届くところに!」

 割って入って来たグールを叩き切りながら、可奈美は叫ぶ。
 だが青年は、逃げるどころか逆に戦場の中に歩いてきた。時折近づくグールたちがいるが、それに対しては蹴りで距離を引き離し、やがてため息を付いた。

「ファントム……強力な魔力を持つ人間、ゲートが絶望した時、その全てを喰い尽くして生まれる怪人……」
「危ないですよ! 逃げて下さい! あ、でもやっぱり逃げないで! お金払って!」

 青年は鼻で笑い、そのまま慣れた手つきで、上着の中から何かを取り出した。
 彼が懐から取り出すのは、ピンク(・・・)色のカメラ型のもの。複数の紋章が円形に刻まれたそれを腰に当てると、その端より長い帯が生えてくる。それは腰を一巡し、ベルトとなった。

「え?」
「何あれ……?」
「ベルト?」

 可奈美、響、友奈は口々に疑問を浮かべる。
 だが青年は構うことなく、どこからかカードを取り出した。上下にバーコードが記されたカード。何かの戦士が描かれた面をケプリに向け、青年は宣言した。

「変身」

 カードを裏返し、そのままカメラ型ベルトに装填。
 すると、そのベルトより、ガイダンスボイスが流れた。

『カメンライド ディケイド』

 すると、彼の周囲に半透明な人型が現れる。それが無数に重なり、やがてベルトから七枚のカード状のものが飛び出す。カード型のそれは、バーコードを思わせる配置で頭に突き刺さり、そこからピンク……否、マゼンタ色のエネルギーが全身に染み渡り、その姿の変身が完了した。

「ディケイド……?」
「なにあれ? ピンク?」
「マゼンタだ」

 ディケイドなる彼は、手を二度叩き、腰に付けられた白い板を外す。その四辺に仕込まれたパーツを展開し、それは剣の姿となる。
 剣の刃部分を左手で撫でて、ディケイドは駆け出した。

「ん? 何だお前?」

 ファントム、個体名称ケプリ。体を傾ける彼は、そのままディケイドの剣___ライドブッカーの刃を受けた。

「ぎゃあああああああっ! 何するんだお前!?」

 だがディケイドは、ケプリのその言葉を無視した。
 数回の斬撃により、火花を散らしたケプリはそのまま地面を転がる。

「ファントムなら、迷わずにこれだな」

 ディケイドは即座に、新たなカードを取り出す。そのカードに描かれた絵柄は、一目見ただけで可奈美に馴染みのあるものだと分かった。

「え!? あれ……」

 驚く可奈美。だがディケイドはそのまま、カードをベルトに差し込んだ。

『カメンライド ウィザード』

 その音声とともに、ベルトから可奈美が良く知る魔法陣が現れる。赤い炎を宿すそれは、ディケイドを通過し、その姿を変えていく。

『ヒー ヒー ヒーヒーヒー』
「ウィザードッ!?」

 響の驚愕に、可奈美も頷いた。
 間違いない。今のディケイドは、ウィザードの姿そのもの。
 だが、可奈美が見慣れたウィザードとは決定的に違う点がある。腰に付いている、ウィザードを象徴するベルト、ウィザードライバー。だがそれは、今マゼンタ色のカメラ、ディケイドライバーとなっている。
 言うなれば、ディケイドウィザードといったところ。
 ディケイドウィザードは、これまた可奈美が良く知る銀の銃剣、ウィザーソードガンを構えた。

「来い」

 ディケイドウィザードはウィザーソードガンを撫でる。逆上したケプリは、大あごを鳴らしながら攻めていく。
 だがディケイドウィザードは、優雅にケプリの逆襲を流し、逆にウィザーソードガンで斬りつけていく。

「おのれ! この魔法使い、強い!」
「魔法使い? 違うな」

 ディケイドウィザードはウィザーソードガンを撫で、振った右腕でケプリを殴り飛ばす。

「!?」

 ウィザードが拳を振るう姿を見たことがない。目を丸くした可奈美に構うことなく、ディケイドウィザードは次の手を打つ。

「破壊者だ」

 取り出すのは、新たなカード。先ほど使ったものと同じく、ウィザードが描かれたもの。だがそのイラストは、火ではなく、水。

『フォームライド ウィザード ウォーター』

 ディケイドライバーから出現する青い魔法陣。それは頭上からゆっくりと降りていき、水のウィザードの姿へ書き換わっていく。

『スイ~スイ~スイ~スイ~』

 水のディケイドウィザード。彼はさらに、次のカードを挿入した。

『アタックライド ライト』

 その効力は、ウィザードのライトと同じ。
 眩い光が、可奈美たちとケプリの視界を奪う。
 その隙に何度も斬撃を放つディケイドウィザード。全身から火花を散らしたケプリは倒れ、そのまま転がった。

「目がっ……目があああああッ!」
「終わりにしてやる」

 水から火に戻ったディケイドウィザードはドスが効いた声でそう告げる。
 新たなカード。それは、ウィザードのクレストマークが描かれており、吸い込まれるようにディケイドウィザードのベルトに差し込まれた。

『ファイナルアタックライド ウィ ウィ ウィ ウィザード』
「お、お前ら! 俺を守れ!」

 ケプリが、慌ててグールを召喚する。蠢く下級ファントムたちは、ケプリの命令に従い、ケプリの前に肉体バリケードをくみ上げていく。
 一方、ディケイドウィザードの足元に出現する魔法陣。それは、その右足に集約していく。
 そこまでは可奈美が良く知るストライクウィザード。だが、ここから先は可奈美が知らないストライクウィザード。
 大股でグールたちに近づくウィザードモドキは、そのまま一気に上段蹴り。魔法陣が追いかけるように錯覚する勢いで、グールの防衛網を蹴り貫いた。
 爆発と同時に吹き飛ばされるケプリ。
 さらに、ディケイドウィザードがそのベルトを開くと、ウィザードの変身が解除され、もとのディケイドの姿に戻った。

「今度こそ、終わりにしてやる」

 ディケイドはそう言って、また別のカードを取り出す。
 今度は、ディケイドの顔にも近い紋章が描かれたカード。それを反転させ、ベルトに差し込む。
 すると。

『ファイナルアタックライド ディ ディ ディ ディケイド』

 ディケイド本来の必殺技。
 それは、十枚のカードの形をしたエネルギーがディケイドとケプリの間に出現させた。
 ディケイドは同時にジャンプし、カードのエネルギーもまた同じく上昇、ケプリまでの間の道筋となる。

「でりゃああああああああっ!」

 右足を突き出した蹴り。それは、カードのエネルギーを通過するごとに威力を増していく。
 その名も。
 ディメンションキック。

「があっ!」

 蹴り飛ばされたケプリは、そのまま倒れるとともに爆発。

 そしてその爆発は、広場から遠く離れた、見滝原大学の時計塔からも見えた。

「えっと……」

 ディケイド。
 全く未知の存在へ、可奈美は近づいた。

「あの……その……」
「ありがとう! すっごく強いんだね!」

 可奈美の前に、友奈が回り込んだ。
 彼女は笑顔でディケイドを見上げ、その手を取る。

「わたし、結城友奈! 好きな……」
「食べ物はうどん、とか言うんだろ? 結城友奈」
「え? どうしてそれを……?」

 驚いた友奈が、思わず手を放している。
 ディケイドはそのまま、響を見る。

「お前も、まだ色々と手を繋ぎ続けていると見える。……小日向未来(こひなたみく)はいないのか」
未来(みく)を知っているの?」

 ディケイドは響の言葉に耳を貸さず、可奈美へ目を向ける。

「そして衛藤可奈美……だいたいわかった」
「……え?」

 可奈美が目を丸くするのと同時に、反射神経が訴えた。
 防御態勢。
 無意識に立てた千鳥が、ライドブッカーを受け止めていた。可奈美は目を大きく開きながら、その行動に驚く。

「な、何!?」
「また立ち合いやろうって、お前が言ったんだろ。相手してやる」
「「可奈美ちゃん!」ッ!」

 響と友奈が、同時に割り込もうとする。
 だが。

『アタックライド スラッシュ』

 ディケイドは、新たなカードをベルトに装填。振り向きざまに、ライドブッカーで響と友奈を斬りつけた。
 すると、刃はその切れ味を増す。あたかも剣が分裂したように、一度の刃で何度も火花を散らしている。
 倒れた二人を見て、可奈美は叫んだ。

「友奈ちゃん! 響ちゃん! どうしてこんなことを……!?」

 だが、ディケイドは聞く耳を持たない。
 そのまま、ディケイドは攻撃回数を積み重ねていく。
 一撃に数回の斬撃を入れてくる独特の剣術に、可奈美はだんだんと顔を明るくしていく。

「すごい……! 何、この剣術……!?」

 見たことがない、独特な剣捌き。
 可奈美はディケイドの剣を受けながら、目を輝かせた。

「でも、これならどう? 迅位!」

 それは、可奈美の超加速能力。
 刀使の能力の一つ。御刀に宿る力により、この世とは隔離された世界の力を身に宿らせ、異なる時間流で行動できる能力。
 それは、流石に切れ味を増したディケイドの剣でも捉えることは出来ず、逆に彼の体に火花を散らし、よろめかせた。
 ディケイドは斬られた箇所を抑えながら、数歩下がる。

「やるな……」

 ディケイドはそう言って、新たなカードを取り出す。
 それは、ウィザードとは全く異なる___仮面ライダーと呼ばれる戦士が描かれたカードだった。

「変身」 
 

 
後書き
リイマジですよ。カタカナの名前「ハルト」ですよ? 
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