ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士
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第49話 =一夜後の教会=
前書き
短い…かも?
「ミナ、パン1つとって!」
「ほら、余所見してるとスープこぼすわよ!」
「…おい!ジン!俺の目玉焼き取るなよ!」
「かわりにリク兄がにんじん食べてよー!」
「にんじんくらい自分で食べろ!」
「リクヤもジンも朝っぱらからけんかしないの!」
朝っぱらからユカに説教受けるってなんなんだ…。向こう側にある少し離れたところで座っているキリトとアスナはこっち見て
ポカンとしてるし…。
「リクヤさんが向こう側にいることに違和感がないんですけど…」
「ついでにユカも…ね」
「なんであんなに慣れてるのかな…」
といった会話が俺の耳に届かないところで繰り広げられていた。
《軍》の恐喝事件から1日、この教会で休ませてもらったおかげでユイもすっかり元気になり、今はモグモグとパンをかじっている。丸1日一緒にいたおかげで今では子供たちとめちゃくちゃ話せるようになった。まぁ朝食を取り合うって時点で相当仲良くないと出来ないと思うけど。
「ってお前もかよ、ケイン!!」
「だってリク兄、いつまで経っても食べないから」
「やーい、取られてやんの~」
「言ったな、パッド!……ふっ!」
「あぁ!俺のウィンナー取らないでよー!」
「ふっふっふ、まだまだ甘いんあっ!?」
俺を含めた一部の男子で食事戦争中だ。取っては取り返し、また他の人のを取ったり取り返したりの繰り返しだ。そんなことを繰り返してるとナイフが飛んできてせっかくかっこいいこと言おうとしたのを無理やり中断させられた。今のは投剣ソードスキルの『シングルシュート』だ。あわてて顔を起こすと俺の前に座っているジンの後ろにピックを2,3本指の間に挟んだユカがものすごい迫力で立っている。
「……さ、食べるぞー」
「おぅ!」
「…たく、こんなときからふざけないでよね…」
その恐怖を感じた俺はその戦争を無理やり終戦に迎えさせて朝食を食べ進める。その時だけユカの恐ろしさが伝わったのか俺と一緒に奪い合いをしていた男子たちもいっせいに食べ始める。
その時、キリトたちは結構シリアスな話をしていたらしいのだが正直、聞こえてない…と。
こんな楽しくて、馬鹿みたいな朝食の時間がの途中だった。いきなり誰かがこの教会の大扉をノックしたのは…。
そして今までうるさかった食堂はノックしてきた人が入ってきた瞬間、一気に静まり返った。なぜなら入ってきた人の装備が昨日俺たちがボコボコにした《軍》のプレイヤーとほぼ同じものだったからだ。
だが、サーシャさんが「みんな、この方は大丈夫よ。食事を続けなさい」と声を出すと一瞬でも静まり返ったのを取り返すかのごとく爆発的にうるさくなった。
「私たちも話聞いておいた方がいいかしら…」
「かもな……。ギンとケイン、俺少し席離れるけどご飯取るなよな」
「「はーい」」
…信用できるとは思わないけど…帰ってきたら飯がなくなってることを覚悟しつつ俺とユカはキリトたちが入った昨日俺たちが案内された部屋へと入っていく。
「ええと、この人はユリエールさん。どうやら俺たちに話があるらしいよ」
どうやらまだ話は始まってなかったらしくユリエールと呼ばれた女性は俺たちを見るとペコリと頭を下げるので俺たちも釣られて頭を下げてしまった。
「はじめまして、ユリエールです。ギルドALFに所属してます」
「ALFって?」
「確かアインクラッド解放軍の略じゃないっけ?」
サチがそのまま口に出すと一応俺がフォローするもユリエールさんは少々苦笑いをしていた。どうやら彼女は正式名称が苦手らしい。まぁ…威圧的な感じはするから苦手と思う人や面倒くさいと思ってる人が大勢だろう。
「はじめまして。わたしはギルド血盟騎士団の……あ、今は一時脱退中なんですが、アスナと言います。この子はユイ」
アスナに紹介されてユイもユリエールさんを見るがすぐにニコリと笑いまたスープの入った容器に視線を戻す。
「じゃあ俺たちは…というかリーダーからの説明がいいよな、これって」
「そうですね…。えっと、私はギルド凛々の自由のシリカって言います。そしてサチさん、リズベットさん、ユカさん、最後にリクヤさんです」
シリカに紹介された順に俺たちはユリエールさんに軽く頭を下げる。ユリエールさんはKoBの名前と俺たちのギルドの名前を聞くと自身の空色の目を見張った。
「KoB…そして凛々の自由…。なるほど、道理で連中が軽くあしらわれるわけだ」
「……つまり、昨日の件で抗議に来た…ってことですか?」
サチが強い口調で問いかけるが首を横に振り「よくやってくれたと礼を言いたいくらい」と意味不明な発言をしたので俺たちは一気に状況がつかめなくなっている。
その中、ユリエールさんはその姿勢を正して、こう言った。
「今日は、皆さんにお願いがあって来たんです」
「…お願いって?」
リズが聞くとその《軍》の女性剣士は軍の成り行きから語ってくれた。
めちゃくちゃ簡単にまとめるとシンカーという《軍》の元である《ギルドMTD》というギルドを立ち上げたところから始まったらしい。彼がこのギルドを立ち上げた理由は情報や食料などの資源を多くのプレイヤーで分かち合おうとしたために結成したのだがMMORPGの本質はリソースの奪い合い、それはこのデスゲームでも変わらない。そのせいで現実的な規模と末端まで力の及ぶリーダーシップが上手に調整が出来ずただただ《軍》は巨大になっていきリーダーは力を失っていった。
「そこに台頭してきたのがキバオウという男です」
その名前には俺、キリト、アスナの3人は聞き覚えが合った。当時、ベータテスターを毛嫌いしている代表的なプレイヤーといっても過言ではなかっただろう。ただ、あの時はあの人もクリアへの意志が強かったはずだが…。
「彼はシンカーが放任主義なのをいいことに同調する幹部プレイヤーたちとともに体制の強化を打ち出してギルド名を《アインクラッド解放軍》に変更させました」
そして犯罪者狩り、効率のいいフィールドの独占を公認の方針として推進したらしい。犯罪者狩りは黒鉄宮にいる犯罪者の監視が24時間《軍》によって成されているので今でも支持は得ている。ただフィールドの独占は他プレイヤーから見ればただの迷惑行為、犯罪者狩りで得た支持すらをも無くすほどの物だった。当たり前というかなんと言うか、独占により軍の収入は劇的に増えてより力をつけたキバオウ一派は調子に乗って昨日のような徴税という名のカツアゲを始めたらしい。
「それで…昨日アスナに無双されたのがそのカツアゲ隊の一部…ってこと?」
「私だけじゃないよ…というかリクヤ君が先に仕掛けたんじゃない…」
アスナはそういうし、実際先に手を出したのは俺だけど一番攻撃していたのはアスナだった気がするのは気のせいだろうか…などと思っているうちにユリエールさんの話は続く。
どんな団体でもパーフェクトというのは絶対になく、キバオウたちもそれに漏れずに問題をいくつか抱えていた。本来の目的であるはずのこの城の攻略を蔑ろにして物資の補給ばかりにうつつを抜かしていたので末端のプレイヤーからの文句が絶えなかったらしい。
末端をどうにかして押さえないとやがて団体は崩壊してしまう、と考えたのかキバオウは配下でレベルの一番高かったパーティ
で最前線の攻略に乗り出したらしい。
「……それって…コーバッツって人ですか?」
恐る恐るシリカが聞くと「よくご存知ですね」とユリエールさんが口を開いた。あれほど図々しいプレイヤーは攻略組…いやアインクラッドで生き残っている6000人の中にもなかなかいないだろう。
「皆さんもご存知かもしれませんが無謀な賭けの結果、隊長は死亡、パーティは解散という最悪の結果へとなりました。その無謀さを強く糾弾されたキバオウをもう少しで追放できるというところまで来たのですが…」
と、言葉を切って微量にしわを寄せながら唇を噛んだ。
「…そのキバオウが逃走…かしら?」
「いえ…それよりも酷いです。3日前、追い詰められたキバオウはシンカーを罠にかけるという強攻策に出ました。出口をダン
ジョンの奥深くに設定してある回廊結晶を使って、逆にシンカーを放逐してしまったのです。その時シンカーは、キバオウの言
った『丸腰で話し合おう』という言葉を信じたせいで非武装で、とてもダンジョンから1人で生還してくるのは不可能な状態で
した」
「……なんでそこまで信じれたの…?」
「………こんな世界だから、じゃないか」
リズの問いにしばらくの沈黙が流れたが、それを破ったのは俺だった。
「いろんな横暴はされてたけど、やっぱり同じギルドのメンバーでしかもサブリーダー。志は一緒のはずだったからやっぱり信
じたかったんじゃないか?『仲間』をさ…この世界で仲間ってやっぱり普通以上に大切な存在だから…な」
俺がその立場ならそう考えるけど…と付けたしをする。
「……ただのお人よしだよな…それ」
「えぇ…シンカーはいい人すぎたんです…」
彼がキバオウの言葉を信じて罠に落ちてしまったのはすべて私の責任だ、とユリエールさんは後悔しておりどうしても助けに行
きたいらしい。が、今やキバオウの手中にある軍は頼れず、ユリエールさんだけでは突破できないレベルのダンジョンらしい。
そこで軍で噂になったとてつもなく強い集団が街に現れた、という噂を聞きつけここまでやってきたらしい。
「お会いしたばかりで厚かましいとは思いますが。どうか私と一緒にシンカーを救出に行ってくださいませんか?」
話を終えたユリエールさんは硬く口を閉じ、俺たちの反応を待っているようだった。
「……俺は、助けに行きたい」
「私も…そう思うわ…。けど……最低限のことは裏づけをしないと……」
ユカの言葉にユリエールさんはわずかだが俯き、瞳を潤ませている。ここでの反応はただ俺がおかしいのであって他の皆のほう
が正常だ。感傷で行動すれば命の危険にさらされることは少なくない。でも、今の話は嘘をは思えない…という中でみんな迷っ
ているのだろう。そうじゃなきゃ誰かしらがすぐに「反対」とでも言うはずだ。
その時だった…。今までミルクを飲んでいたりして言葉を発していなかったユイが顔を上げて口を開いた。
「だいじょうぶだよ、ママ。その人、うそついてないよ」
「…ユ、ユイちゃん…。そんなこと、判るの…?」
「うん。うまく…言えないけど、わかる……」
今までのたどたどしい話し方がまるで夢だったかのように立派な日本語で俺たちにそれを伝えてきた。すると、その頭を父であ
るキリトがポンポンと軽く叩いてからくしゃくしゃと撫でた。
「疑って後悔するよりも信じて後悔しようぜ。行こう、きっと何とかなるさ」
「キリトって相変わらずのんきだよね」
「…相変わらずって何だよ……」
そういえば、月夜の黒猫団時代の時も意外なところで抜けている、とかのんきな部分があったっけ…。
「ゴメンな、ユイ。友達捜すの1日遅れるけど…許してくれよ」
その意味がわかったのかどうかは判断出来ないけどユイは俺の言葉に大きな笑みでこくりと頷いた。キリトみたくその艶のある
黒髪をくしゃくしゃと撫でみんなのほうへと体の向きを変える。
「……微力ながらお手伝いさせていただきます。大事な人を助けたいって気持ち、わたしにもよくわかりますから」
アスナの言葉にユカも頷いて同じく同意を見せる。ユリエールさんは瞳に涙を溜め、今にもこぼしそうな勢いで何度もお礼を言
いながら深々と頭を下げていた。
「それはシンカーさんを助けてからにしてください」
リズが今まで店を経営してきて手に入れた笑顔なのかどうか知らないけど、その笑顔でユリエールさんに話しかけると、今まで
黙って話を聞いていたサーシャさんが「しっかり食べていってください」とユリエールさんを子供たちのいる食堂へと通し、俺
たちも力を蓄えるためそれについていくことにした。
…戻ったときには俺の朝食は野菜を残して全部平らげられてたけどな…。
後書き
涙「さ、あと1話で50話だね」
リ「一応書けてるのか?」
涙「まぁね、さりげなくテイルズネタも入れてるよ」
リ「さりげなさすぎるから48話のも気づいてもらえないんだよ」
涙「…うん……そうなんだけど…さ…」
リ「ある掛け合いがそのネタ…このヒントでわかるか?」
涙「わかるんじゃない?あれほど上手に重なるとは思えなかったものだから」
リ「他のゲームでもありそうな掛け合いだけどな」
涙「ぐっ…確かに……」
リ「うわぁ…落ち込んでるよこの人…。まぁすぐ治るだろ、では!」
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