機動6課副部隊長の憂鬱な日々
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第58話:新メンバー加入!
9月に入っても,表面上はこれまでと特に変わったことは無かった。
ユーノに依頼した聖王関係の調査も,アコース査察官に依頼した
スカリエッティの居場所の探索も今までのところ,目に見える成果は
上がってきていない。
この日,はやてに呼び出された俺は,部隊長室に向かった。
部隊長室に入った俺は,見慣れない2人の女性の後ろ姿を見た。
「お,ゲオルグくんか?なのはちゃんとフェイトちゃんも少ししたら来るから
ちょっと待っといて」
はやての前に立つ2人の女性の間から,はやての顔がちらりと見えた。
「あ,ゲオルグさん。お久しぶりです。あれ以来ですよね」
紫色のロングヘアーの方の女性が俺の方を振り返りながらそう言った。
「ギンガか。久しぶり。今日出向してきたのか」
「ええ。よろしくお願いしますね」
そう言ってギンガは俺に笑いかけた。
「ゲオルグ?」
ギンガの隣に立っている,茶色のショートカットの女性が
そう言って振り返った。
「げ・・・」
俺はその女性の顔をみて,思わずそう漏らしてしまった。
「やっぱりお前かゲオルグ。久しぶりじゃないか」
「・・・ええ,お久しぶりです。ステラさん」
彼女はステラ・ハミルトン。俺の古い知り合いだ。
「何だ?久々だというのにずいぶん嫌そうだな。私と会うのがそんなに
嫌だったのか?」
「いえ・・・そんなことはないんですけど・・・」
(嫌に決まってんだろ・・・)
俺が内心とまったく異なる言葉を口に出していると,はやてが興味深そうに
俺を見ていた。
「何なん?ゲオルグくんはステラさんと知り合いなんか?」
「えーっと,知りあいといえば知りあいかな・・・」
俺が目をそらしながらそう言うと,ステラさんが腰に手を当てて俺を見た。
「何だゲオルグ。お前のデバイスを作ってやった恩人に対して,
ずいぶん冷たい言い方だな」
「デバイスを作った・・・っちゅうことは,レーベンを作ったんは
ステラさんなんですか?」
はやてがそう尋ねると,ステラさんは自慢げに胸を張った。
「そうだ。私の自信作だぞ。そういえばゲオルグ,レーベンは元気か?
きちんとメンテナンスはしてるんだろうな?」
「もちろんです」
《マスター,嘘はいけませんね》
「おお,レーベン。久しぶりじゃないか。元気か?」
《ええ,おかげ様で》
「それは良かった。ところでさっき聞き捨てならん言葉が聞こえたが,
どういうことだ?レーベン」
《前に私がきちんとメンテを受けたのは2週間前が最後ですね》
俺はレーベンがそう言うのを聞いて,天井を仰いだ。
目線をステラさんに戻すと,どす黒いオーラがステラさんから上がって
いるように見えた。
「・・・おい,ゲオルグ」
「はい」
「レーベンを渡すときに約束したはずだな。週に2回は必ずメンテしろと」
「・・・そうでしたっけ?」
俺がそう言うと,ステラさんは一瞬で俺の懐に潜り込み,
左手で俺の制服の襟をつかみ上げた。
「ほう,とぼける気か。どうやらゲオルグ坊やはよほどお仕置きして
欲しいらしいな・・・」
「ちょっ・・・ステラさん?」
「まったく,体ばかりでかくなって,そう言うところは成長せんのか・・・」
ステラさんはそう言って,右手を握りこんで振りかぶった。
(何でこんなことに・・・)
顔を殴られ,壁に向かって飛ばされながら,俺はそんなことを考えつつ,
意識を手放した。
(白い天井?・・・ここは?)
意識を取りもどした俺は,痛む頭を押さえつつ,顔をしかめた。
「あ,ゲオルグくん起きた?大丈夫?」
近くでなのはの声が聞こえた。
「ん。大丈夫。って,お前どこに居るんだ?」
俺は,目線を振ってなのはを探すが見当たらない。
「ここだよ」
なのはがそう言うと,突然目の前になのはの顔が現れた。
「お前,どこから現れたんだよ・・・」
俺がそう言うと,なのはは不思議そうな顔をした。
「ゲオルグくん。気持ちええのは解るけど,ええ加減起きてくれんか?」
「ん?ああ,悪い・・・今起きる」
はやての言葉に応じて,俺は身を起こすと,俺が寝かされていたらしい
ソファーに座った。俺の隣にはなのはが座っている。
(あれ?このソファーって,今さっきまで俺が寝てたんだよな・・・)
「なあ,なのは」
「なあに?」
「ひょっとして俺が気を失ってる間,膝枕してくれてた・・・とか?」
「うん,そうだよ」
なのははさも当然かのようにそう言った。
俺は顔が熱くなってくるのを感じた。
「ゲオルグにこんな可愛い恋人がいたとはな・・・世の中不思議なもんだ」
「ゲオルグさんとなのはさんってそういう関係だったんですか・・・
知らなかった・・・」
ステラさんとギンガの声が背後から聞こえてくる。
「ゲオルグ,大丈夫?顔真っ赤だよ」
フェイトがそう言って俺の顔を見た。
「え?あ,ほんとだ。熱は・・・ないよね。どうしたの?」
なのはが俺の額に手を当てて,俺の顔を覗き込む。
「ぷくく・・・。なのはちゃん。ゲオルグくんは照れてるんやって」
「そうなの?」
なのはにそう聞かれて俺は思わず天井を見上げた。
(もうやだ・・・このメンツ・・・)
「で?ギンガはこの前の会議で出向が決まってたからいいとして,
なんでここにステラさんがいるんです?」
俺が少しキレ気味にそう言うと,はやてが口を開いた。
「まあまあ,そうカッカせんと。それはともかく,ステラさんがここにおるのは
私がクロノくんに頼んだからなんよ」
「はやてが頼んだ?」
「うん。最近捜査関係が大忙しやろ。シャーリーにはメカニックとしての仕事と
フェイトちゃんの補佐官としての仕事が両方のしかかってて,ちょっと負荷
かけすぎやからね。捜査関係はギンガにヘルプに入ってもらうことにした
けど,メカニック関係もAMFCの話もあって忙しいやんか。
で,誰か使えるメカニック一人頂戴って言ったらステラさんが来たって感じ」
はやてがそう言うと,ステラさんが口を開いた。
「私は自分の研究室でちまちまやってたら,レティ提督が来て,
”ステラは明日から地上に出向ね”と軽く言われてな。
まあ,魔導機械関係が専門だが,デバイスについても力になれると思うぞ」
ステラさんの言葉にはやてが顔を輝かせる。
「魔道機械が専門!ほんならAMFCの量産はステラさんにやってもらうか。
ステラさん。あとでうちのメカニックを紹介しますんで,
やることを聞いたら早速お願いします」
「それは構わんがその前にレーベンのメンテが先だな。
ミッドとベルカのハイブリッドだから繊細なデバイスなのに,
こまめなメンテもできん馬鹿なマスターがほったらかしにしたようだからな」
「そこまで言うことないでしょ」
俺がそう言うと,ステラさんはギロリと俺をにらんだ。
「・・・何か言ったか?馬鹿者」
「何も言っておりません・・・」
俺はそう言って,心の中でため息をついた。
「ねえ,フェイトちゃん。ゲオルグくんが借りてきた猫みたいになってるよ」
「うん。珍しいものが見れたね」
なのはとフェイトが小声でしている会話を聞きながら,俺はそっと天井を
見上げた。
(マジで憂鬱なんですけど・・・)
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