細候
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第二章
「だから遊ぶことは出来ない」
「この店は私がやってるのよ」
「そうなのか」
「大店と言っていいけれど親から受け継いで」
そうしてというのだ。
「これでも繁盛してるのよ」
「なら余計に私の様な者が入るところではない」
「主の私が言っても?」
妓女は笑って言った。
「それでも?」
「主が言うならか」
「いいでしょ、お金はいらないわよ」
「本当にいいのか」
「そうよ、来てくれたら音楽とお酒があるし」
それにと言うのだった。
「実もあるわよ」
「ライチのか」
「そう、どうかしら」
「ライチは大好きだ」
満の好物の一つである。
「そう聞いたならな」
「来たくなったでしょ」
「うむ、ではな」
「いらっしゃい」
「それでは」
言葉に甘えてとだ、こう答えてだった。
満は店に入りそしてだった。
二階で妓女と会った、名前は細候といいこの店の主であった。話が上手でしかも知識があり気立てがよかった。
しかもだ、妓女の店なのにだ。
「うちは音楽やお酒は出すけれどね」
「馳走もか」
「それだけよ、そうしたことはね」
「していないか」
「昔からね、だってそれをしたら」
細候は満に苦い顔で話した。
「もっと儲かるけれど」
「そうした店になりか」
「ここは人通りが多くて繁盛してるのに」
「そうした店の場所に行かざるを得ないな」
「あっちは何かと物騒だから」
成都の中でもというのだ。
「それでなのよ」
「行きたくないのだな」
「刃傷沙汰は嫌いなのよ」
細候は顔を曇らせて述べた。
「私はね」
「だからか」
「うちが出すのは音楽とね」
「酒と馳走だけか」
「そうよ、それで充分儲かってるから」
だからだというのだ。
「これからもね」
「それはさせないか」
「そうしていくわ」
「成程な、真面目なのだな貴女は」
満は細候の言葉を聞いて感心した。
「いいことだと思う、音楽もいいしな」
「気に入ってくれたのね」
「酒もライチもいい」
好物のそれもというのだ。
「素晴らしい店だ」
「じゃあこれからも来てくれるかしら」
「客人としてだな」
「どうかしら」
「宜しく頼む」
「それではね」
お互いに笑顔で話した、そしてだった。
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