機動6課副部隊長の憂鬱な日々
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第6話:持つべきものは頼れる友人
はやてたちから聖王協会で機動6課設立の裏話を聞いてからというもの,
俺は今の仕事の引き継ぎと機動6課設立準備の事務作業を並行して進めている。
設立準備作業は本来なら,はやてがやってしかるべきなんだろうが,
はやては人材集めに奔走しているらしく,予算処置などは俺が受け持っていた。
(ったく,事務作業がめんどくさいから俺を引き込んだとは思いたくないけど)
ということで,とても忙しい毎日を過ごしているわけだが,
今日は,ほかの仕事は置いて,ある目的のために無限書庫を訪れていた。
「すいません。本局情報部のシュミット三佐ですが,
スクライア司書長をお願いします。」
そこらにいた女性職員にそう言うと,彼女は少し待つように言って,
椅子を勧めてくれた。
15分ほど待っていると先ほどの女性職員が戻ってきた。
「スクライア司書長は,手が離せないので,
書庫の方に直接お越しくださいとのことです。」
「分かりました。どのあたりにいるかを教えていただけますか?」
俺は書庫に入ると,女性職員から教えてもらったあたりに向かった。
すると,山のような資料に囲まれて浮いているユーノを発見した。
「おーい。ユーノ!」
ユーノは資料に集中しているのか,俺が声をかけたのに
気づいていないようだった。
俺は,そっと資料を覗き込んでいるユーノの正面に回り,
思い切りデコピンを食らわせてやった。
「痛っ!誰ですか?邪魔しないで下さいって言っ・・・て,ゲオルグ?」
「はいはい,あなたの愛すべき友人ゲオルグさんですよー」
俺がそう言うと,ユーノは半分涙目でおでこを押さえながら
恨めしそうに俺を見た。
「もう,邪魔しないでよ。ただでさえクロノの無茶な資料請求で
てんてこ舞いなんだから」
「またか。あの人もいい加減人を労わることを覚えて欲しいね。
俺も,この間ひどい目にあったよ」
俺の尊敬すべき先輩クロノ提督は,人使いが非常に荒い。
俺がクロノさんの依頼である観測世界の実地調査に赴いた時,
現地の巨大生物に追い回されたというと,ユーノは真剣な顔で言った。
「ねぇ,ゲオルグ。いつか僕らはクロノに過労死させられるんじゃないかな?」
「なぁ,ユーノ。冗談で言ってるよな?それ」
(笑えない冗談は,冗談とは言えないのだよ,ユーノ君・・・)
俺たちは,ユーノの司書長室に移動した。
「で,ゲオルグの用件はなんなのさ?」
「実はさ,ちょっとした調査をお願いしたくって」
俺がそう言うと,ユーノは露骨に嫌そうな顔をした。
「あのさゲオルグ。さっきの僕の話聞いて無かった?
僕は,主にクロノのせいで今とっても忙しいんだよ。
そもそも,ゲオルグは情報部なんだから,書庫内の調査なら
自分でやればいいじゃない」
ユーノの言うことももっともだった。
情報部の士官には制限付きとはいえ無限書庫の調査権限が与えられている。
これまでは,そうしてきたんだけど・・・
「いや,実は今度異動になってさ。」
俺がそう言うとユーノは何かを思い出したようだった。
「そういえばなのはから,今度みんなと一緒に働くことになったって
メールが来てたよ」
「そうなんだ」
(はやてから俺も機動6課に参加するってきいてるのかなあ?)
「でな,情報部での引き継ぎを新部隊の立ち上げ準備と平行して
やらなきゃいけなくてさ。俺自身ほとんど首が回らないんだよ」
「で,僕ってわけ?」
ユーノは妙に疲れた表情で吐き捨てるように言った。
「まあ,そうだな。特に急ぐ訳じゃないから合間を見て少しずつで構わないよ」
(まぁ,この疲れた顔を見たら無理は言えないよなぁ)
「ふーん。ならいいかな。で?何について調べればいいの?」
「”無限の欲望”っていうキーワードしかないんだけど・・・」
俺がそう言うと,ユーノはため息をつきながら呆れた目で俺を見た。
「あのさぁ。それじゃあ検索範囲が広すぎるでしょ。
もうちょっと絞り込めないわけ?」
「実は前に見聞きした覚えがあってさ,多分事件関係の調査報告書関係だと
思うんだわ。だから,そっち方面の資料をさらってくれないかな」
「でもさ,その類のものだったら情報部なり捜査部のデータベースの方が
早いんじゃない?」
「そっちは俺があたってみるからさ。な?頼むよ」
「はいはい。まぁゲオルグの頼みだし,ぼちぼちやっとくよ」
「ありがとう,ユーノ。恩にきるよ」
(やっぱり持つべきものは頼れる友人だね・・・)
「・・・その代わり。今日一日はクロノからの資料請求の検索を
手伝ってもらうよ。さ,行くよ!ゲオルグ」
ユーノはそう言うと,急に明るい顔になって俺の手を引き部屋を出ようとした。
「いや・・・俺も帰って仕事を・・・」
「・・・ふふふ。今日はねー,特に請求資料がたーくさんあるから
ゲオルグも楽しみにしてるといいよ。ふふふ・・・」
(クロノさん。もう少しだけ,ユーノの健康に気を使ってやって下さい・・・)
結局その日は明け方までユーノを手伝うことになった。
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