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昔肉今魚

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第二章

「むしろ肉の方がな」
「あなた食べたいって言ってたわね」
「ああ、それがな」
「今はなのね」
「魚だよ、煮てもいいし」
 今食べているそれもというのだ。
「焼いても刺身でもな」
「お鍋でもよね」
「鍋だって昔は肉でないとな」
「すき焼きね」
「あれが一番だったのに」 
 鍋といえばというのだ。
「それがな」
「今ではなのね」
「ああ、鍋も鱈とかアンコウとか河豚とか」
「お魚ね」
「鶏肉も抵抗ないけれどな、まさかな」
 ご飯を食べ終わり煮付けの残りを肴に日本酒を飲みつつ話した。
「俺も歳を取るとな」
「あっさりしたものが好きになって」
「肉より魚になったよ、四十近くになって」
「皆そうなるのかしらね」
「そうかもな、これが歳を取るってことか」
 夫の言葉はしみじみとしたものだった。
「俺は違うと思っていてな、お肉をな」
「ずっと大量に食べると思ってたのね」
「焼肉でもステーキでもな、今は焼肉と寿司どっちかって言われたら」
「お寿司?」
「そうなったよ、今はお魚だよ」 
 こう言って煮付けを肴に酒を飲んだ、そして煮付けがなくなると。
 妻がそっと出してくれたメザシを肴にした、兎角そしてそのメザシを美味しく食べてだった。彼はさらに飲んだ。そして酒についても言った。
「飲み方も変わったな」
「昔は勢いよく飲んでたわね」
「やっぱり量が変わらなくても」
「穏やかに飲む様になったわね」
「酒の飲み方にも歳が出てるな」
 こう言って飲むのだった、ここでも年齢を感じつつ。


昔肉今魚   完


                 2022・12・17 
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