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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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死んじゃてるけど脅かす事が生き甲斐!

単調な船旅が続く…
景色は代わり映えせず、どちらを向いても水平線…
時折敵が現れては、私達が駆逐する…

………ぶっちゃけ飽きた!

何か刺激的な事件は起きないかしら…
例えば…『船内で巻き起こる密室殺人事件!』とか…
『マリー(私)を巡る2人の男性…恋に燃えるティミーとウルフは止まらない!甘く切ない三角関係の結末は如何に!?』とか…
はぁ…無いわよねぇ~…

…と、そんな妄想に浸っていると、モニカ船長が無駄に大声で到着を告げる。
「おい!目的の海域に着いたぞ!」
声、でけーなぁ…


一見すると何もない海域…
ただ海が広がるのみ。
しかしよく見ると、直ぐそこは浅瀬になっており、ゴツゴツとした岩肌が海中で揺らめいている。
「さて…此処がスーの酋長が言っていた場所だろう…で、乾きの壺はどう使うんだい?」
お父様が持つ乾きの壺を指差し、どうすれば良いのかを尋ねてくる。

「さぁ…『乾き』って言うくらいだから、あの浅瀬に放り投げれば良いんじゃね?海水吸い込んでくれるんじゃね?」
すげー適当!
でも大正解!
「リュカさん!!違っていたら大切な壺が海の底に沈んじゃうでしょ!」
言い方が悪い…もっと真剣に言えば、アルル様も認めてくれるだろうに…

「でも、お父様の意見は正しいと思いま~す!」
「だよね~!」
今回は私が誘導するまでもなく、お父様が答えを出してくれたし、私はただ賛成するのみね!
でもアルル様は気に入らないらしく、頭を押さえて首を振る。
「もっと、じっくり考えてから結論「えい!」
(バシャッ!)
だがお父様は、アルル様の言葉を待つことなく、ふ抜けた掛け声と共に乾きの壺を浅瀬へと投げ込んだ。

「「「「あぁぁぁぁ!!」」」」
全員大絶叫で驚いている!
「な、何勝手な事をしてるんですか!?」
お兄様などはお父様を怒鳴りつけると、慌てて海へ飛び込み乾きの壺を拾いに行く!
そんなに慌てなくても、浅瀬なのだから大丈夫だろうに…


お兄様の奮闘も虚しく、乾きの壺は周囲の海水を吸い込み、水位をみるみる下げて行く。
先刻まで海中に揺らいでた岩々が、今や目の前に聳えている!
勘違いしそうだが、けして海中の岩が隆起して海面に姿を現したのではない。
水位が下がり、私達の乗っている船が低い位置に下がったのだ!
そして壺を拾う為に飛び込んだお兄様は、元浅瀬に出来上がった祠への道で情けない恰好をして座り呆けている。

「お前、何やってんの?ずぶ濡れじゃん!濡れたくないから近寄らないでね」
お父様がお兄様に声をかける、口調は優しく…内容は酷いモノだ。
「お兄様、格好悪~い!浅瀬なんだし、海の底って言ってもたかがしれてますわ!結果を見てから行動しても、よろしかったのでは?結論を焦りすぎですぅ」
私は笑うしかない!
もっと辛辣な事を言おうと思ったが、流石に可哀想だろう…
「ティミー…風邪引かない様に身体をしっかり拭きなさいよ!」
お母様は優しくタオルを渡す。
本当は『もっとリュカを信じなさい!』とか言いたいのだろうけど…
哀れ過ぎて言えないよなぁ…
「ティミー…ごめんなさい……私が一人でリュカさんの提案に反対したばっかりに……ごめんなさい!」
アルル様…わざとかしら?
今、貴女が謝るのが、一番キくわよねぇ…
「ははははは………」
あ…壊れた。
ま、いいか!
今は最後の鍵の方が重要よね!

祠の中は水浸し。
当然よね!
長い年月を海中で過ごしたのだから。
内部を見渡すと、入口正面…部屋のほぼ中央に、最後の鍵が台座に奉られている。
「これが『最後の鍵』かぁ………」
お父様が徐に手に取り眺めていると奥から1体のガイコツが現れた!
こ、こんな所にモンスター出たっけ!?
私達は慌てて身構える。
「何か用ッスか?」
でもお父様は慌てることなく何時もの口調でガイコツへ話しかけた。
「………何で驚かないの!?」
うん。何で驚かないの?
私は驚いちゃったわよ!

「何でって…此処に入った時から、居るの見えてたし…」
え!?本当に!居るの知らなかったわ!
「いやいやいや!でも普通は驚くでしょ!?だってガイコツが動いたんだよ!?」
そ、そうよ!普通は驚くべきよ!
ってか何よあのガイコツ!
全然怖く無いじゃないの!

「う~ん…でも『腐った死体』とか、中身が空の『彷徨う鎧』とか、そんなのも居るし…ガイコツが動いたって…ねぇ?」
「ねぇ…って言われても……じゃぁさ、モンスターと思って見構えたりしないの?」
絶対この場合、私達の反応が正しいわよね!?
お父様が変なのよね!?
「モンスターってさ、敵意があるから……アンタには敵意が無いし…」
て、敵意って…確かにそのガイコツはちょっと可愛く見えてきちゃったけど…
「敵意って………何年前から此処で、みんなを驚かせるのを楽しみにしてたと思ってるんだよ!」
ごめんなさい…私の父が…ごめんなさい!

「ごめんねぇ。台無しにしちゃったみたいだね!次の機会に頑張ってよ!」
「次なんかねぇーよ!最後の鍵を持って行ったら、こんな所に来る奴なんか居るわけないだろ!」
「そっかー…ごめんねぇ~」
やだ、どうしよう!
このガイコツ連れて帰りたい!

「もういい…俺は役目を果たして、成仏するよ…」
「役目!?一体それは何ですか?」
ガイコツちゃんが『役目』と言うフレーズを言った為、アルル様が身構えた。
最後の鍵を守る番人かと思ったのかしら?
コイツにかぎってはあり得ない!
「え?あ、あぁ………ゴホン!では言うぞ!…その鍵は、世界に存在する全ての扉を開く事が出来る唯一の鍵!悪しき事に使わぬよう、心清き者が責任を持って所持する様心がけよ!」

「「「…………………………」」」
……だから何?
「…………………………あの…以上ですが……何か?」
「何だよ!?それだけなのかよ!それだけの為に、長い年月こんな所に居たのかよ!?」
要る!?コイツ要る?
別に存在しなくても良かったんじゃね?
「そ、それだけって……重要な事だろう!その鍵があれば、お城の宝庫物庫からだって盗めるんだぞ!悪い事に使おうと思えば、幾らでも悪い事が出来るんだ!」
た、確かにそうだけども…
「あー、悪い悪い!その通りだね…大丈夫!絶対そんな事には使わないし、使わせないよ!だから安心して成仏してよ」
「うむ…頼んだぞ…」
そしてガイコツちゃんは崩れ去る…本当にアレが役目だったのね…


ガイコツちゃんが消え去り、ちょっとヌルい空気が漂う中、お父様が神妙な声で語り出す。
「みんな…さっきのガイコツだけど………頭は悪そうだけど言っている事は重要だ!そこで、この鍵の管理の仕方について、今此処で決めたい!」
「管理…ですか?」
「そうだティミー…重要な事だ!この鍵があれば、色々な悪事が出来る…だから今後、鍵を所持する人間を決める事にする。その人以外が鍵に触れたら、誰であれ罰を与える!」
あの出来事の後なのに、随分と真面目な話をするじゃない!
お父様ったら、何か悪い物でも食べたのかしら?

「責任者には守ってもらう事がある!例え親しい人…親・兄弟・友人・知人…等、信頼出来る人の頼みでも、鍵を渡してはいけない!見せるのもダメ!」
「それじゃ、このパーティー内でも信じてはいけないって事ですか!?」
青いわねお兄様は!
最も疑うのは身内からなのよ!

「そうじゃない…僕は自分の仲間を信用している………でも、僕等に化けて近付かれたらどうする?お前は100%見抜く事が出来るのか?」
「………分かりません……」
勢い良く憤慨して見せたのだから、そのままの勢いで『分かります!』って言えばいいのに…
これだから何時まで経ってもチェリーなのよ!

「うん。だから最初からみんなを疑うんだ。…この件に関してだけだからね!」
「なるほど…それは納得しましたが、誰が責任者なんですか?父さんですか?」
「僕じゃ無いよ。アルルだよ」
偉そうな事を言ったのに、他人に擦り付けるのかよ!
相変わらずだな!

「……え!?私!?何で!?」
「だってこの世界の勇者じゃん!このパーティーのリーダーじゃん!」
お前は最年長者だろ!
「勇者って…ティミーだって勇者じゃないですか!しかも既に偉業を達成した…実績のある勇者じゃないですか!!それにリュカさんはその父親ですよ!しかも一国の王様の!責任者としてこれ以上ないじゃないですか!!」
「ティミーは…ダメだよ!コイツ直ぐ騙されるから…きっとリュリュに化けた魔族に、色仕掛けで騙されて鍵を盗まれるね!」
「ぐっ!…反論したいが…」
うん。100%騙されるわね。

「じゃぁリュカさんが年長者として、鍵の責任者になって下さいよ!」
「やだぁ!もし僕に鍵を託したら………僕は鍵を此処に置いて帰るね!他人に悪用されるくらいなら、自分も使えなくていい!此処に鍵を置き、水位を元に戻し、乾きの壺を叩き割る!永遠に海の底で燻ってもらうね!」
「な!こ、この鍵がないと今後の旅に支障が出るじゃないですか!どうするんですか!?」
「そんな事、僕には関係ないね!この世界の…アルルの世界の問題だろ!この世界を平和にしたいのはアルルだろ!?つまり、この鍵がどうしても必要なのはアルルだ!それなのに関係ない責任を押し付けるのは止めてくれ!」
最悪な我が儘ね!
言葉だけ聞いてると、最年長者とは思えないわ。

「ま、そんなわけで責任もって管理してくれ!」
この無責任男は、アルル様に責任を丸投げし、最後の鍵をスルッと彼女のブラの中へとしまい込む。
器用ね…谷間なんて無いのに、よく最後の鍵を滑り込ませられるわね!?
「ちょ、何でココに仕舞うんですか!?」
「………下の方が良かった?」
エロオヤジめ…



 
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