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レーヴァティン

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第二百六十七話 西に帰りその四

「それを人に言う無神経さと恥知らずも凄いな」
「それで更正に修行に預けられてだ」
「預けられた先の仕組みの文句ばかり言ってな」
「教えでなくな」
「どうでもいいことを偉そうに言うな」
「人は文句を言っているとだ」
 そうすればというのだ。
「その対象の欠点に気付いて指摘出来る自分は偉いとな」
「錯覚するな」
「それでそればかりしてな」
「自分は偉いと思ったんだったな」
「脳梗塞で倒れたことのある年上の親戚の人に怒られてだ」
 その行いをだ。
「殴ってやろうかでな」
「それも酷いな」
「親戚の家に今日行くと言ってお邪魔しますとも言わず上がり込んでだ」
 そうもしてというのだ。
「大飯を喰らって風呂に入って布団に入って寝てだ」
「図々しいな、本当に」
「人の部屋に勝手に入って本を漁り」
 そうしたこともしてというのだ。
「働いていないので生活費を恵んでもらって朝飯食って帰る」
「何度か聞いてるが最低のおっさんだな」
「挙句生活出来なくなりヤミ金に手を出して借金も抱えてだ」
「それでも家賃払えなくなってだったな」
「遂に家もなくしたな」
「そんなどうにもならねえおっさんだったな」
「それでいて自分はこの世で一番偉いと思っていた」
 そうした輩だったというのだ。
「こんな奴もいたが」
「今追い出されてから住み込みで働かせてもらってそこでも文句ばかり言ってだったな」
「いられなくなってだ」
「もう行方不明だったな」
「こんな奴がこの世で一番偉いとはな」
「誰も思わないな」
「このおっさん以外はな」
 英雄は冷厳に言い切った。
「まさにな」
「そんなおっさんがアレクサンドロス大王より偉いか」
「そんな筈があるか」
「そうだよな」
「誰もが思うことだ」
 本人以外はというのだ。
「まさにな」
「そうだよな」
「こんなおっさんは何でもない」
「取るに足らない下らない存在だな」
「そうだ、こんなおっさんも塵芥ならだ」 
 そうであるならというのだ。
「アレクサンドロス大王もだ」
「神から見るとな」
「塵芥だ」
 同じだというのだ。
「所詮な」
「同じだな」
「だが同じ塵芥でもな」
 それでもというのだ。
「アレクサンドロス大王とそのおっさんではだ」
「全然違うな」
「千カラットのダイヤと肥溜めの中の排泄物程違う」
「肥溜めの中のを幾つを集めてもな」
「肥料にはなるが」
 それでもというのだ。
「そんな奴はな」
「肥料にもならないな」
「そうだ、ダイヤではない」
 全くというのだ。
「塵芥でもダイヤをな」
「質のいいものをな」
「集められるだけ集めてな」
 そうしてというのだ、英雄は人間を小さなものだと認識しつつそのそれぞれの質をも見てそのうえで久志に話した。 
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