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レーヴァティン

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第二百六十六話 東に来てその六

「確かにすき焼きのメインだが」
「それでもな」
「葱やそういったものもないとな」
「違うよな」
「そうだ、そちらの浮島にはそうしたものもなく」
「それでだよ」
 まさにその為にというのだ。
「食えなかったんだよ」
「だから今こうしてか」
「食えることが嬉しいぜ」
 実に楽しみであることがわかる笑顔だった。
「本当にな」
「そうか、ではな」
「ご馳走になるな」
「好きなだけ食え、そしてだが」
 英雄は酒を出した、そのうえで久志に言った。
「飲むな」
「日本酒だな」
「そうだ、酒はこれだな」
「すき焼きに寿司だったらな」
「この二つだな」
「ああ」
 やはり笑顔で応えた。
「本当にな、じゃあ食ってな」
「飲むな」
「そうさせてもらうな」
 こう言ってだった。
 久志と彼の仲間達は実際にすき焼きや寿司を食べ日本酒を飲んだ、久志は一通り口に入れてだった。
 そのうえでだ、向かい合って食べている英雄に話した。
「西の浮島の料理だってな」
「美味いな」
「ああ、けれどな」
「こうしたものが食いたくなる時があるな」
「そうなんだよ、お味噌汁だってな」
 和食の基本と言っていいこの料理もというのだ。
「無性にな」
「飲みたくなるか」
「だから起きた時にな」
「食っているか」
「実は最近起きたらな」
 その時はというと。
「和食がな」
「多くなっているか」
「そうなんだよ」
 実際にというのだ。
「これがな」
「あちらでは食えないからだな」
「そうだよ、だから起きた世界じゃな」
 そこではというのだ。
「本当にな」
「そうしたものを食っているか」
「酒もな」
 こちらもというのだ。
「ワインやビールじゃなくてな」
「日本酒だな」
「そっちを飲んでるんだよ」
「こちらの世界で食いたくなるとか」
「起きたらな」
 そちらの世界でというのだ。
「食ってるって訳さ」
「そういうことだな」
「ああ、それで明日の朝は」
「その味噌汁だ」
 英雄は即座に答えた。
「それに卵焼きに漬けものだ」
「それで白いご飯だな」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「お前が食いたい組み合わせだな」
「梅干しもあるよな」
「ある」
 返事は一言だった。 
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