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レーヴァティン

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第二百六十二話 神託の時その十一

「あれだろ、志賀直哉の小説の」
「万暦赤絵かな」
「その陶器が有名だな」
「あれ万暦年間の陶器で」
 明のである。
「万暦年間に最高によくなったけれど」
「それでもか」
「それは一瞬のことでね」
「あっという間に駄目になったんだな」
「明朝の陶器はね」
「それが万暦赤絵か」
「志賀直哉も小説にしたね」
 所謂私小説であり志賀直哉が展示されているそれを見たものだ、志賀直哉は城の崎等私小説で知られている作家である。
「その赤絵は万暦帝が仕事をしていた時のもので」
「仕事をしなくなってか」
「国が衰退して」
 そうなってであったのだ。
「陶器もね」
「駄目になったんだな」
「そうだよ」
 こう久志に話した。
「それも歴史があるんだ」
「成程な」
「それまで明は国力があって」
「陶器を造るにもか」
「職人さんも腕を振るえるだけの余裕がね」
「あったってことだな」
「けれど」
 その状況がというのだ。
「万暦帝の職務放棄でね」
「悪政じゃなくてな」
「国が麻痺して」
 そうなってというのだ。
「どんどん空いたして」
「余裕がなくなってか」
「陶器もね」
「質が落ちたんだな」
「いいものってその環境がよくないとね」
「出来ないな」
「悪い環境だと」
 そうであるならというのだ。
「同じものを造ってもね」
「悪いものになるな」
「そうだよ、落ち着いていて豊かな国なら」
「いいものが出来るな」
「けれど政情不安で貧しいと」
 そうした状況ならというのだ、明は万暦帝の前半までは落ち着いていたが後半から駄目になっていった。これも全てこの皇帝の職務放棄からくるものだ。
「悪くなるよ」
「材料も質が落ちてな」
「あと周りもね」
「物騒になってな」
「とてもいいものを造られるね」
「環境じゃなくなってな」
「質が落ちるよ」
「そうだよな」
「万暦帝は有名な人よ」 
 清音は手を動かしつつ話した。 
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