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綾小路くんがハーレムを構築する話

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短編
  ツンデレでクールな美少女との遭遇 喫茶店編

4月初旬。


学生である俺たちは春休み真っ只中にいる。俺にとって静かで平和な1日を過ごせるのは有り難い事だ。とは言っても春休み突入の当初は色々あった。


茶柱と眞島に協力要請、堀北兄弟の和解、帆波のカウンセリング、松下から向けられた疑惑、月城との賭け。


無事に進級することは出来たがこれからの事を踏まえると問題は山積みかもな……まぁ、今更じたばたしたって現状は変わらない。与えられた問題を1つ1つ対処していけばいいだけだ。


その為にも残り少ない休みを楽しむとしよう。しかし……


綾小路「……暇だな。」


そう……暇だ。虚しい事にやることが全く無いのだ。


いつもなら本を読んだりして時間を潰してるが……ひよりから借りた本は先日読破してる。


ひよりに本を返してまた新たに借りるという手もあるが、いくら春休みとは言え連絡も無しに訪ねるのは些か迷惑だろう。映画を観に行くのも良いかもしれないが、生憎観たい映画は無い。


綾小路「どうしたものか……ん?そう言えば…」

暇つぶしにスマホを操作していて、ふと思い出した。

それは俺たちのグループのチャットのやり取り。俺は直ぐ様チャットを開き、誰からも連絡が来ていない事に哀しみを覚えながら確認した。

長谷部『ねぇねぇ、皆知ってる?ケヤキモールから少し離れたとこに新しくカフェ出来たらしいよ~♪今度、皆で行かない?ちなみにこれ↓』

三宅『お!いいな。』

幸村『まぁ、たまにはいいかもな。』

綾小路『確かにな。』

佐倉『私も皆で行きたい♪』

長谷部『お~皆ノリ良いね~♪じゃあ、今度集まる時はここね~♪』

昨日の夜のチャット中、他愛ない話しをしながら唐突に波瑠加が出した話題の1つ。写真も添付して俺たちに教えてくれた。

俺は皆の返信の流れを見て適当に返していたので、ちゃんと内容を確認したのは今が初めてだ。

綾小路「……カフェか。」

何もすること無いし気分転換には丁度良いかもしれない。どうせ暇だしな。

このカフェの詳しい場所は、良く知らないが…まぁ、何とかなるだろう。

俺はベッドから起きて、軽く身支度を整えて出掛ける用の服に着替えて部屋を出た。

綾小路「この辺りだと思うんだが……」

俺はケヤキモールから少し離れた場所で波瑠加の写真を頼りに店を探していた。

場所が分からないなら普通は店の場所を知ってる波瑠加に聞くなり、店の名前を検索して場所を確認して向かうのが当然だと思う。

だが、俺はそうしなかった。気分的にただ当ても無しに歩いていたかった。まぁ、見つからなかったらその時はそのときだ。

綾小路「ん?……この店っぽいな。」

そんな達観した気持ち歩いていると、写真で見た通りの店を見つけた。

場所も特定せずに店に着いたのは自分でも良く見つけたなと思ったが…それより驚くものを見た。

それは……

綾小路「凄い行列だな…」

カフェの前で並ぶ女性の行列。テレビや噂でしか見たことなかったものが今、目の前にあった。

実際間近で見てみると凄い光景だな……そんなに人気なのだろうか?

それはともかく…

綾小路「さて……どうするか…」


並んでる客の9割は女性で、男一人で並んでる奴は誰も居ない。男もチラホラいるがカップルで来ているようだった。


いくらボッチに慣れてる俺でもこの圧倒的アウェー感漂う状況を見て、並ぶ勇気は湧かないな…。


とりあえず、行き当たりばったりだったとは言え、カフェの場所は分かったし今日は様子見程度にしてグループの皆で出直そう……うん、それがいい。


俺は踵を翻して帰ろうとした瞬間…



どんっ!



誰かとぶつかってしまった。ちゃんと周りを確認しなかった俺のミスだ……相手に怪我が無ければいいんだが…


???『いったぁ…』

綾小路「すみません……大丈夫ですか?」

ぶつかった相手は女性だった。

この声は……

???『こちらこそごめんなさい……あ、綾小路!?』

綾小路「……真澄?」


ぶつかった相手は真澄だった。真澄は俺がここに居ることに驚いてるようだった。


まぁ、俺も驚いてるんだが……こんな所で真澄と会うとはな。


そう言えば、以前もこうやって真澄とぶつかってしまった事があったな……とその前に…


綾小路「すまない。怪我はないか?」

神室「……別に平気。」

俺が手を差し伸べると意外にもあっさりと手を掴んでくれた。

俺は一応、目視で真澄の身体を隅々まで確認した。(いやらしい意味ではない)

うん……見たところ、怪我は無さそうだ。良かった。

神室「ちょっと……じろじろ見るのやめてくれない//////?」

綾小路「いや…一応怪我が無いか確認したかっただけだ。」

真澄は一度、俺から少し距離を空けて両手を交差して警戒するような形で言ってきた。

そんな警戒されると軽く傷つく…

神室「別にこの程度で怪我なんかしないわよ。てか、あんたはこんなとこで突っ立ってなにしてんの?」

至極真っ当な質問だ。ケヤキモールから離れたこの場所に居るのは不自然だからな。

綾小路「まぁ……散歩というか探検というか…」

神室「散歩?なにそれジジくさ……あんたってやっぱり変わってるわね…」

綾小路「酷いな…」

引かれる云々じゃなくジジ臭いと言われるとは…

真澄の中では俺は変な奴認定なのか……結構ショックなんだが…。

綾小路「真澄は何でここに居るんだ?今日は有栖と一緒じゃないのか?」

神室「毎回坂柳と行動してるわけじゃない。てか、私が休日に何しようがあんたに関係ないと思うけど?」

綾小路「いや、まぁそうなんだが……単純に真澄の事が気になるだけだ。」

神室「は、はぁ?き、気になるとかバッカじゃないの//////?」

真澄は顔を背けながら怒った口調で言ってきた。

何か怒らせること言っただろうか?

ただケヤキモールから離れたこの場所に真澄が居る理由が知りたかっただけなんだが……

ん?もしや…

綾小路「このカフェに来たのか?」

神室「……」

俺が少し踏み込んだ質問をしたら急に黙った。大体、真澄が無言の時は肯定の意を表す。

なるほど……どうやら仲間が居たようだ。

神室「……だったらなに?」

綾小路「いや、実は俺もこのカフェに興味があってここに来たからな。」

神室「ふーん……散歩じゃないんだ。」

綾小路「散歩がてらと言ったところだ。まぁ、あの行列を見て帰ろうか迷ってるが…」

神室「そりゃ、あの行列見たらね……女子に人気なカフェに男一人で並ぼうとする奴は普通いないし。」

真澄の口振りからしてやはり女性に人気のカフェのようだ。

そして俺の葛藤してる事まで見抜くとは……中々鋭い。

綾小路「そう言うことで、俺は出直す。じゃあ、またな…」

こればっかりは仕方ないよな……今度波瑠加たちと来よう…。

俺は真澄に軽く挨拶をして帰ろうと背を向けた。すると…

神室「ちょ、ちょっと待って//////!」

綾小路「?」


俺は真澄に呼び止められたので足を止めて振り返った。


真澄は俺を呼び止めたのにも関わらず、数分黙ったまま俺を見つめてきた。


この場合俺はどうすればいいんだ?真澄が口を開くまで待ってればいいのだろうか?大体、何故真澄が俺を呼び止めたのか良く分からないんだが……


神室「……そこのカフェで私にタピオカ奢ってよ。」

綾小路「は?」

まさかの奢りなさいよ発言……数分塾考して出した言葉がそれか…。

どう考えたらその答えになるんだ?

神室「は?じゃない。あんたの不注意のせいで私が転んだんだから責任取ってよ。」

綾小路「……」

うん、言い分は解らなくもない……か?

確かに俺の不注意で真澄が転んだのは事実だ。

まぁ、タピオカ一杯くらいで気が済むなら…

綾小路「あー……分かった。それくらいお安いご用だ。」

神室「ん……じゃあ早く来て//////」


俺は肯定の意を表すと真澄は顔を背けたまま、行列に向かっていった。


どうしてこっちを見てくれなかったのか気になったが……俺も真澄の後に続いて行列の最後尾に並んだ。男女二人で並ぶと違和感なく行列に溶け込めて安心だ…。


しかし、1つ問題が発生した……


綾小路「……」

神室「……」

並んでる女性たちが楽しく話す中、俺たちの間では無言が続いていて少々気まずい事になってる。

夏に伊吹と占いで並んでる時を思い出すなー…まぁ、真澄は伊吹より幾分か付き合いやすいが。

話しかけるか否か…

綾小路「あー…」

神室「……別に無理して会話しようとしなくていいわよ。私もあんたもガラじゃないでしょ?」

綾小路「……お心遣い感謝します。」

神室「ふふ…なんで急に敬語になんのよ?」

話そうか話すか迷っていたら真澄が気を遣ってそう言ってくれた。

俺が軽く礼をして丁寧語で返したら真澄が微笑んでいた。何気に真澄が笑ったところ初めて見たな…

神室「……な、なによ//////?」

綾小路「いや、お前ってそんな風に笑うんだなって思ってな。」

神室「意味分かんない……てか、悪い//////?」

綾小路「いや、悪くない。むしろ良いんじゃないか?」

神室「……//////!!!」


元々、真澄は綺麗な容姿をしてるし笑う姿が見れて良かったと素直にそう思った。


俺がそう伝えると真澄は物凄い勢いで顔を背けた。こちらを一切見ようとしない……
何か俺は、まずいこと言ってしまったのだろうか?とりあえず、謝った方がいいか…


綾小路「真…」

???『へぇー……今日は神室さんと一緒なの?この女たらし…」


この鋭く尖った発言をする声は……俺はゆっくりと後ろを振り向くと…


そこに居たのは…鈴音だった。


綾小路「鈴音……」

神室「堀北…」

堀北「おはよう清隆くん、神室さん。あなたたちが一緒なんて随分珍しいわね?約束してたの?」

神室「……そうね、私もそう思ってる。」

堀北「その口振りだとあなたたちが一緒なのは偶然ってことでいいのかしら?」

綾小路「あぁ、まぁ…」

神室「それ以外であり得ると思う?あんただってこのカフェが目的で来たんでしょ?」

堀北「えぇ。でも、あなたたちがここに居るとは思いもしなかったけど。」

神室「それはこっちも同じ。」

会って早々、何故か不機嫌そうな鈴音……一歩も引かずに言い合いをしてる真澄凄いな…。

有栖と共に行動してるだけある。

綾小路「鈴音もこういうところに興味があったんだな?」

堀北「……だったら何か文句でも?」

綾小路「いや、別にないです。ただ……鈴音は行列とかは並ぶタイプじゃなさそうだと思って…」

堀北「そうね、それは間違ってないわ。でも、それはあなたにも言える事でしょ?」

確かに、的を得ている。普段だったら絶対に並ぼうとは思わないからな。

そもそも俺はこのカフェがこんなに人気だとは知らなかったが…

綾小路「そうだな、その通りだ。」

堀北「それより、どういった経緯で神室さんと一緒に並んでるの?」

綾小路「それは……まぁ、成り行きと言うか…」

真澄に奢るために並んでるなんて言いづらい。転ばした責任取るためなんだが…

これ以上鈴音に俺の印象悪くしたら不味い気がする……うん。刺激するのは止めておこう。

神室「綾小路に押し倒されたお詫びにタピオカ奢って貰うのよ。」

堀北「……な!!!」


俺はそう思って言葉を濁したが、真澄が真顔でとんでもない事を鈴音に言った。


いや、押し倒したって……ぶつかって転んだだけだよな?その言い方だと100%勘違いするだろ…色んな意味で。


この空気どうしてくれるんだ真澄……


堀北「今の話し本当かしら?だとしたら最低ね…いやらしい。」

綾小路「いや、違う。押し倒したんじゃなくてぶつかっただけだ。」

鈴音から見たこと無いの冷たいオーラを感じ取った俺は出来るだけゆっくりとした口調で話した。

鈴音さん……恐いんでそれ以上睨まないでくれませんか?

綾小路「第一、そんなことするわけ無いだろ?真澄も嘘を言わないでくれ…」

神室「……そうだっけ?」

真澄は、ぷいっと顔を背けて俺に言った。

鈴音の方は半信半疑なのか、まるで俺を軽蔑するような眼を向けながら鈴音は俺たちの間に入り込んできた。

堀北「ふーん…どうやら神室さんのカマカケだったようね?」

神室「だったらなに?てか、なんであんたが私たちの間に割り込んでるのよ?」

堀北「あら?そんなに彼の隣にいたいの?」

神室「は、はぁ?別にそんなんじゃないし//////!」

真澄って結構喋るんだな……やっぱり。

有栖としか居るところを見たこと無かったから新鮮に見える。

ただ、話す内容は端から見れば喧嘩してるようにしか見えないが…

綾小路「二人ともそこまでにしてお……」


神室 堀北「「あんた(あなた)は黙ってて!!」」


綾小路「すみません……」

俺は鈴音たちの舌戦を止める為に割って入ろうとしたが…圧が凄かったので無理だった。

自然に収まるのを待った方が良さそうだな……こっちから干渉するのは止めておこう。

今はそっとして……


???『……げっ!?』


後ろから聞こえてきたその声に鈴音たちは振り返った。

俺も恐る恐る振り向くと……

そこに居たのは…

綾小路「今度は伊吹か…」

伊吹「なんであんたがここにいんのよ?しかも堀北鈴音もいるし……最悪。」

堀北「随分な言い草ね、伊吹さん?私もあなたの相手はとても面倒だから会いたくなかったわ。」

伊吹「へぇー……言うじゃない?」

堀北「文句あるの?」

伊吹「文句もなにもあたしもそこだけは同意見だから。」


二人は犬猿の仲に近い間柄なため、互いに牽制しあって一歩も引かない。出会って直ぐこれだ……逆に凄い。


真澄はそれを察知したのか、鈴音との距離を取った。やはり真澄は観察眼が鋭い。


と言うよりこのメンツ凄く混ぜるな危険な気がしてならないんだが……


神室「……この二人仲悪いの?」

綾小路「悪いどころじゃない……凄く悪い。」

神室「ふーん…あんたいつも振り回されてんの?」

綾小路「そうだな……否定はしない。」

堀北「ちょっと?二人でこそこそしてるとこ悪いけど全部聞こえてるわよ?」

神室「あっそ…そっちはそっちで勝手にやっててくれない?巻き込まれるのはゴメンだから。」


堀北 伊吹「「……」」


うん……叶うならフルスピードでダッシュしてここから離れたい。


恵たちがこういう空気を纏ってるのは良く見るが、他人と関わるのが好きじゃないドライな性格の鈴音たちがこうなると凄い恐い。


誰かこのムードを変えてくれ…


店員『大変お待たせしました~♪えーと…4名様ですか?』


そう願っていたらカフェの店員が話し掛けてきた。良く見ると行列はとっくにハケており、並んでるのは俺たちだけになっていた。


神室 堀北 伊吹「「「は?4名?」」」

綾小路「あ、はい…」

店員『4名様ですね?では、こちらにどうぞ…』

伊吹「ちょっと!あたしはこんな奴らと一緒に来てない。一人で入りたいんだけど?」

店員は俺たちを案内しようとしたが、黙っていなかったのは伊吹だった。

神室はともかく俺と鈴音が一緒だと嫌なのは本当だろうから当然だ。

店員『た、大変申し訳ありません。お一人様のお席はもう埋まっておりましてご案内出来るお席はテーブル席のみとなっていまして…」

伊吹「うっ……」

あれだけの行列だったから席が埋まるのは必然だ。

一人で来てる女性は結構いたからな。

堀北「そんなに嫌ならあなたは帰ればいいんじゃないかしら?」

伊吹「なんであんたに物言われなきゃいけないわけ?黙ってなさいよ!」

堀北「…なんですって?」

神室「てか、何でこいつらも同伴なのよ…」


店員『えーと…』


店員さんはどうすればいいのか、オドオドしはじめた。

俺も接客する側だったら堪えられないだような…。

しかし、これ以上店員さんに迷惑かけるわけにはいかないか……

綾小路「あー……とりあえず、今は店に入らないか?目的は一緒だし、ここで喧嘩してもしょうがないだろ?」

神室 堀北 伊吹「「……」」

俺が反射的に頷きながら答えてしまったのもあるが、ここに来た目的は全員一緒だ。

それならいっそ全員で入ってしまえば話しは早い。

二人はお互い顔を背けて黙ったが、帰る素振りは見せなかった。二人とも意地になってるんだな…

綾小路「すみません。案内お願い出来ますか?」

店員『は、はい//////!もちろんです!ではこちらにどうぞ♪』

店員は営業スマイルを取り戻し案内してくれた。

真澄と俺が先に店員について行き、二人も渋々俺たちの後ろをついてきていた。

その際、俺は二人に背中を足蹴にされた。息ぴったりだった……俺に諭されたのがよっぽど鼻についたんだろうな…。

店内。

ガヤガヤ……

店内に入ると、オシャレな内装で女性に人気なのも良く解った。

店内では女性たちの賑わう声がそこかしこから聴こえた。

しかし俺たちのテーブルはと言うと……


神室 堀北 伊吹「「「………」」」


異様な空気に包まれている。まぁ、大して話した事無いこのメンツが相席になればこうなるのは必然だが…


ちなみに席は鈴音と伊吹が隣同士を嫌った為、4人テーブルの右側が俺と鈴音で左側が真澄と伊吹で座ってる。


そして、数分ずっと無言が続いている。そんな状態の俺たちのテーブルに周りも興味を持ち始めていた。


綾小路「あー……何か頼まないか?」

堀北「そうね。私はロイヤルミルクティーとキャラメルシロップパンケーキでお願いね、清隆くん。」

神室「……私はストロベリーホイップパンケーキとタピオカミルクティー。」

伊吹「……あたしもタピオカミルクティーと抹茶パンケーキ。」


俺は呼び出しボタンで店員を呼んで鈴音たちのご所望の品を頼み、俺はホットブラックコーヒーにした。


鈴音たちが甘いものを頼むとは……真澄は甘党だとは思ってたが、鈴音と伊吹は意外だ。


確かにメニュー欄に人気と表記されてるが…そんなに人気なのだろうか?


堀北「そんなに私たちが甘いもの頼むの変かしら、清隆くん?」

綾小路「そんな事思ってないが…」

堀北「そう?でも、あなた凄く珍しいものを見てるような顔してるわよ?」

神室「……確かに。」

伊吹「は?あたしにはいつもと同じで無表情にしか見えないけど?なにが違うんだか…」

堀北「そうね、伊吹さんには分からないでしょうね。」

伊吹「その言い方なんかムカつくんだけど……そんなにこいつの事分かるんだ、へぇースゴいわねー?」

堀北「貴女の言い方も腹が立つのだけど?」

伊吹「それはお互い様。てか、何で急に髪短くしたわけ?まさかイメチェンとか?」

堀北「それはあなたには関係ないでしょ?」


まぁ、こうなるよなー…大体、鈴音と伊吹が同じテーブルに座ってるだけでも奇跡みたいなものだ。


これを期に仲良く…なんてこと無理に決まってる。


こうなったら何事もないよう祈るしかないな……頼むから何事もなく終わってくれ。


店員『お待たせしました~』

俺がそう願っていたら良いタイミングで飲みものとパンケーキが来た。

そのお陰か険悪な空気も少し和らいだ気がする。

店員がごゆっくりどうぞと言って去っていった。

神室「ん……おいし。」

堀北「初めて来たけど美味しいわね…」

伊吹「うま…」

鈴音たちがそれぞれのパンケーキの味の感想を小さな声で溢していた。

確かに鈴音たちのパンケーキは美味しそうだ。

堀北「あなたは何も頼まなくて良かったの?」

綾小路「いや、まぁ…俺はコーヒーだけで十分だ。」

神室「……ここまで来てパンケーキ頼まないとか何しに来たのよ?」

伊吹「確かにね……あんたバカなんじゃない?」

綾小路「そこまで言うか…?」

堀北「彼女たちの言い分は合ってるわよ。ここってパンケーキが人気のお店なのよ?それなのに頼まないなんて……まさか知らないで来たの?」

綾小路「そうだったのか…」


どうやら女性に人気な理由はそのパンケーキにあるようだ。


確かに周りを良く見ると女性たちはこぞってパンケーキを頼んでいるのが分かる。


俺は何も情報を得ずにここに来たからな…知っていたら頼んだかもしれないが……仕方ない。


実際は頼まなくて後悔してるが……今度波瑠加たちと来たときの楽しみにしよう…。


すると真澄が……


神室「……あんたも食べてみる?」

堀北 伊吹「「は?」」

綾小路「ん?」

神室「だから、あたしのパンケーキ食べてみるかって聞いたのよ//////!」

鈴音たちも聞き間違いかと思って真澄の方を見やっていた。

真澄からそんな言葉を聞かれるなんて思わなかった……俺はそんなにも卑しい目をしていただろうか?

真澄はこちらをじっと見たまま俺の言葉を待ってるようだった。若干顔が赤い気がするが…

綾小路「いや、でも…いいのか?」

神室「あんたにはこのタピオカ奢って貰うんだし、これくらい良いわよ…てか、ここに来てパンケーキ食べないとかもったいないでしょ?」

綾小路「だが…」

神室「ああ、もう!いいから食べて//////!はい、どうぞ//////!」

半ば真澄が強引にフォークを突きだしてきたので逃れられなくなった……

ここまでしてもらって要らないとは言えない……それに折角の好意を無駄に出来ない。

俺は……意を決して口に運んだ。真澄のパンケーキはストロベリーだったからイチゴの甘味が口に広がりうまかった。

綾小路「これ、うまいな…一口くれてありがとな、真澄。」

神室「別にこれくらい……あっ//////!」

綾小路「……どうした?」

神室「な、なんでもないわよ//////!」


真澄は俺にパンケーキを一口くれた後、一瞬動きを止めていたが…残りのパンケーキを一気に食べ進めていた。


今更だが……今のって俗に言う、あーんってやつじゃないか?それに間接キスになるんじゃ…いや、真澄はそんな事気にするタイプじゃないし大丈夫か…。


それよりも俺は今……鈴音に腕をつねられていて、伊吹にはテーブルの下から膝を蹴られていて痛い…。


綾小路「あの二人とも痛いんだが…」

堀北「別に私はつねる以外何もしてないけど?」

伊吹「あたしも蹴る以外何もしてない。」

綾小路「いや、それって物理的にダメージ与えてるだろ……急に攻撃するのはやめてほしいんだが…」

堀北「単純に腹が立っただけよ。」

伊吹「なんかストロベリーだけ誉めててムカついたから。」

綾小路「……」

伊吹がムカついた理由はそれか……鈴音は明らかに怒ってるようだが…

そもそも俺は真澄に貰った味しか食べてないから、他のやつを誉めるも何もないんだが…。

伊吹「てか、あたしの抹茶の方がうまいし。」

堀北「……聞き捨てならないわね?私のキャラメルだって美味しいんだけど?」

伊吹「はぁ?キャラメルとかそんな甘ったるいものなんかで抹茶の深い味に勝てるわけないでしょ?」

堀北「抹茶こそ至高だとでも?他の味を否定から入って決めつけるなんて幼稚ね?」

伊吹「は?だったら比べてみる?」

堀北「望むところよ。」

何か急に鈴音と伊吹の抹茶VSキャラメル戦争が勃発し始めたんだが……

鈴音と伊吹は丁度、正面同士に座ってるから互いにどっちが睨みあいを続けていた。

頼むから穏便に頼むぞ…

堀北「でも、私は抹茶なんて好きじゃないわ。」

伊吹「あたしもキャラメルなんて甘ったるいものなんか好きじゃない。」

堀北「じゃあ、第三者の目線から決めて貰おうじゃない。てことで…」

二人は俺を睨みつけて、何か準備し始めた。

凄い嫌な予感がするんだが……

そしてその予感が的中する。

綾小路「あのー…何で俺にフォークを突き付けてるんでしょうか?」


堀北 伊吹「「あなた(あんた)が決めて!!」」


俺は二人からそれぞれのパンケーキを目の前に差し出された……


えーと……つまり、俺がどっちがうまいか審査しろってことだよな?


それって俺にはメリットが全くなくないか?だって……どっちを選んでもどちらか一方から文句が入るに決まってる。


綾小路「審査するんだったら真澄の方が適任だろ?俺じゃなくても…」

堀北「なに?私が一口あげると言うのにそれを断るつもり?」

伊吹「同じ女からの意見じゃ意味ないし。早く食べて!」

神室「だってさ…食べ比べてあげたら?」

真澄は興味無さげな顔をしていたが、間違いなく俺が困ってる様子を楽しんでるように見える。

他人事だと思って……どっちを選んでも地獄なんだぞ?

こうなりゃ腹を括るか…俺は二人から向けられたフォークを順番に食べた。


堀北 伊吹「「……//////」」


そんなにじっと覗き込まれると困るんだが…まぁいい。


それぞれ食べさせて頂いて率直に思った自分の感想は……どっちも普通にうまい。


どっちかを選ぶのは結構難しい。それくらいうまい。真澄に貰ったのも、うまかったし……ここは…


綾小路「えーと……どっちも甲乙つけ難いくらいうまいぞ?」

堀北「なによそれ?はっきりしないわね……男の癖に//////!」

伊吹「ふん……この優柔不断男//////!」


二人からは結局厳しい言葉を投げ掛けられたが……それ以上何も言わずにパンケーキを食べ進めていた。心なしか顔が赤い気がしたが多分気のせいだろう。


良かった……これが正解だったようだ。


仮にどっちか片方を選んでたら大変なことになってたかもしれない。助かったと思いながらすっかり冷めたコーヒーを喉に流し込んだ。


店員『ありがとうございましたー♪』


綾小路「ふぅー…」

神室 堀北 伊吹「「「………」」」

無事に揉め事もなくカフェから出れた開放感から俺は心の底から安堵した。

普通、カフェってちょっとした休憩する場所の筈なんだがな……

堀北「せっかくの休日だったのに余計に疲れたわ……」

伊吹「同感。なんで休日に限ってあんたたちと出逢う確率高いのよ…はぁー」


疲れたって……こっちのセリフはなんだがな…全く。


しかし、まぁ、このメンツでカフェに来るなんて機会は2度と来ないだろうから…ある意味良い経験したかもな。


精神も鍛えられたし……2年に進級するに向けて心構えが新たに出来た気がする。


伊吹「ちょっと!なんであんたらまでついてくるわけ?」

堀北「帰り道が一緒だからに決まってるでしょ?それより同じ歩幅で歩かないでくれる?」

伊吹「はぁ?あんたがあたしの真似してんでしょ?」

堀北「それはあなたでしょ、伊吹さん。私はあなたより後ろを歩きたくないの。」

神室「はぁー…あほらし。」


伊吹と鈴音は姉妹のように並んで帰り道を歩いていった。


真澄と俺は二人から少し離れた距離を保ったまま、家路についた。


後日に波瑠加たちとここを訪れた際にストロベリー、抹茶、キャラメルどの味にするか時間かけて迷ったのは別の話しだ。

 
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