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少女漫画は現実じゃない

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第一章

               少女漫画は現実じゃない
 ある漫画を読んでだった。
 鈴木桜は笑って言った、一五二程の背で色白でややふっくらした感じの頬に優しい垂れ目で長い黒髪は所々編まれている、スタイルは普通位で中学のセーラー服が似合っている。
「こんなのないわよね」
「何読んでるのよ」
「いや、この漫画ね」
 大正浪漫のラブコメ漫画を見せてだ、友人の佐藤美里に話した。美里は一五〇程の背で黒髪をショートにしている大きなはっきりした目と丸い顔にやや高い鼻と赤い小さな唇が印象的な外見である。
「今読んでるけれど」
「また懐かしい漫画ね」
 美里は桜が見せてくれた漫画の表紙のタイトルを見て言った。
「昭和の漫画じゃない」
「いや、面白いってネットで言われてて」
「それで読んだの」
「アニメ化や映画化もされて」
 そのうえでというのだ。
「古典的名作でね」
「漫画でそれで」
「それで読んでみたけれど」
「ないっていうのね」
「展開がね、面白いけれど」
 それでもというのだ。
「現実にはね」
「こんな展開ないっていうの」
「ないでしょ、というかね」
「というか?」
「昔の少女漫画ってないわっていうね」
「展開ばっかりって言うのね」
「そうでしょ、お兄ちゃんは成人漫画もっとないって言うけれど」
 そうした展開ばかりだというのだ。
「昔の少女漫画もね」
「ないのね」
「そんなラブコメばかりよ」
「そうなのね」
「現実はシビアでしょ、いきなり劇的な出会いがあったり」
 桜は具体的に話していった。
「それで死んだと思って出て来たとか三角関係で」
「三角関係は今も多いわね」
「それで紆余曲折の果てにね」
「ハッピーエンドね」
「そんなのないわよ」
 単行本を手にしつつ笑って言うのだった。
「現実はよ、まあ現実はなるべくしてなった」
「そんな展開ばかりね」
「そうよ、漫画は漫画よ」
「特に少女漫画は」
「昔のね、ないわよって展開でね」
 そうしたものでというのだ。 
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