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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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L5話 King【王】の覇気

 
前書き
Liella編を連続投稿してもいいかなって思てる。 

 








「アノコンチクショウユルスマジ……!!!」


とんでもなく汚い日本語を言い放った可可。ドンと大きな音を立てて、テーブルに一枚の書類を叩きつけて、かのんへと示す。


「かのんサンも書いてください!!」
「これは…?」
「退学届デス!!」
「「「えぇっ!?!?」」」


当事者となって聞いていたかのんはもちろん、その隣で聞いていた速人と那由多。さらにその反響は背後の澁谷母とありあへと波及していく。


「退学!?」
「2日目にして!?」
「そりゃこうなるよ!!」


ツッコむかのんに可可はガチのトーンで話を進める。


「こんな学校にいても仕方アリません。学校を変えてスクールアイドルを始めましょう。」
「いやいや無理でしょ……」
「ダイジョウブ。編入試験で他の学校に行くことがデキマス。」
「行く気満々だなコイツ……」


ため息を吐く那由多。と、そこに速人が可可の隣に座ってその意見を嗜める。


「可可、気持ちはわかるが……編入試験を突破できるかどうかだ。第一、アシストなしじゃ絶対落ちるバカがここにいるわけだし。」
「確かに————」ジーッ
「あぁ?誰が頭ゴリラだゴラァ!」
「幻聴幻聴。」


かのんと速人に見られた那由多は怒るが、知恵者 速人にあしらわれてしまう。

当然長い付き合いもない可可は純真無垢な心でそれを尋ねる。


「えっ、ソウなのですか?」
「うっ……あ、あぁ、え、まぁ、その。」
「なんだよその煮え切らなすぎる返事は。」


純真無垢な可可に「あたおか」がバレるのと自身の嘘吐きの苦手さを突かれて、しどろもどろになる那由多。


結局話題がすり替わってしまって……結論には至らない。


「アウゥ...!ドウしてこうなるデスカ〜!!」
「ごめんね?私に任せてって言っときながら……」
「かのんさんが謝ることナイです!想定の…中です。」
「「「……?」」」


影を落とした可可を速人は見逃さなかった。早速彼は可可に問いかける。


「どんな想定だ?」
「……スクールアイドルをよく思わない人は一定数イマス。そんな人たちに可可は笑われてキマシタ……だから想定内デス。」
「確かたまにニュースになるよね。スクールアイドルの狂信者と反対派の衝突が問題になったり……」



狂信的な信者と反対派……これは右翼と左翼に例えうる。

どちらも論理としては一部正しいが、それを盾に嘘八百を妄信している。
もっとも、人間の心理バイアスであるために治しようがない。しかし他の人の意見を目にするのもまた重要で、真に敬意を払うべきは「意見を持ちながらも、他人に押し付けず、ただ自らがそうある」人間だ。この人間こそ哲学で言うところの中庸に近い。

———このことを速人は師匠である俺から教わり、頭に入れていた。

その上で何をするべきか……速人は思いつく。


「頭が固いやつに何を話しても無駄だ。」
「どういうこと?」
「わざわざ生徒会長に掛け合わずとも、その上に掛け合ってみようぜ……そういうことだ。」
「上…?」
「デスか…?」


かのんと可可が神妙な面持ちの中、那由多が手を叩いて閃いた仕草を見せる。


「わかった!生徒会長の上なら…生徒副会長だな!!」
「「絶対違う(違いマス)」」
「お前一回タヒんどけバカ。」
「タヒぬ?何言ってんだお前。」


頭を抱える速人———自分の相方がここまでバカだと思わなかった、その一心である。まぁ文字起こししなければわからない……いや、やはりバカだ。

大きなため息をついて、速人は話をまとめる。


「生徒会長を飛び越えて、学校のトップに掛け合ってみたら…って話だ。」
「その手がアリマした…!」ポン
「でも直接理事長に掛け合うなんてできるのかな……?」
「ダイジョウブですかのんさん!可可にとっておきの作戦がありますから!」


可可はドンと胸を叩き、自信を示す————果たしてその作戦とは……?



————※————



「ドゥンドゥンジャンッ ドゥンドゥドゥンYO! 私マンマル好き!すごくスキ 満月好き SO 丸がスキ!」


ラップを歌いノリノリで道を歩く千砂都。彼女の目的地は……かのんの家。このラップは澁谷家のペットにして、彼女のお気に入りのフクロウ 「マンマル」に会うのにウキウキしている心を表していると言えよう。

いつもと同じ道筋……が、今日は一味———いや九味ほども違う。


「ん…あの人———えっ!?」


千砂都は驚き……手で口を覆った。

彼女の隣を歩く、白く虹色に輝く髪を姫カット&右シニオンにしている女性。その容姿はたいへん豊満で艶めかしく母性愛に溢れ、それでいて顔にどこか幼さ感じさせる……まさに「清らなり」と言うにふさわしい。

いや、それすらも凌駕するかのような現実離れした女性。

そして千砂都が見惚れたのは何よりそのシニオン……もといマル。その完成度は彼女の見てきた丸を遥かに超える、完璧な丸である。

すると……見惚れる千砂都にあろうことか、その女性から声をかけてきた。


『ふふっ♪大きくなったわね♪』
「あっ…えっと……その———そのマル綺麗です!」
『あぁ…丸いモノが大好きだったっけ?』
「はい!」
『顔も大人っぽくなったじゃない…可愛くなったわ……』
「あ、えっと…ありがとうございます!———あれ!?」


褒められて恥ずかしい千砂都は少し瞬きした……その瞬間、もう彼女の目の前には彼女はいなかった———まさに白昼夢のように。


「あれ…?夢…にしてはちょっとリアル過ぎたような気がするし————」


少し考え込んでいると、千砂都の前をあの可可が横切ってくる。


「あの娘 …ウチの学校の———あっ、かのんちゃんの家に行かなきゃ。」





〜〜〜〜〜



「うぃっすー!マンマル〜!」


かのんの家に入るなり、玄関先でとまるマンマルと見つめ合う千砂都。


「はぁあああ〜やっぱり君は完璧な丸だね〜♪」
「…?」


千砂都は先程、マンマルと同等の丸を再現した女性を見た。それが夢か現かどうかはさておき、やはり彼女にとってはマルこそ美的対象として見るべきものなのだ。故に自らにもマルを纏っているのもそういうことだ———まさに独創世界。これにはマンマルも困惑する……動物ではあるが。

そこに彼女を待っていたかのん、速人が出迎える。


「ちぃちゃん、どう?あの娘の弱点見つかった?」
「もう!来たばっかなのに!!」
「ま、いいじゃねぇか。単刀直入に行こうぜ。」


速人は千砂都に話をスパンと話すように頼む。それに重ねてかのんも懇願する。


「何でもいいんだよ?敵対してるチームとかお化けが苦手とか。」
「………」
「あはは———弱点は…一言で言うと……」
「一言で言うと…!?」

期待するかのん。

「弱点は…」
「弱点は…!///」
「ないYO!」
「ガクッ…」
「(やっぱりか……)」


心の中では期待していなかった速人。なぜならかのんに話題を振られた千砂都の目を見た時点で、そう読み切っていたからだ。そして当然、彼がそんな推測をしていることをかのんは察知していて……


「ちょっと速人くん!!何で知らせてくれなかったの!!」
「別にいいだろ?尺の無駄とか言われても、話まで遮ったら会話なんてできねぇだろうに。
「それはそうだけど……」
「てか心を読むな気持ち悪い。」
「うっ……うるさいなぁ!」


キッとやさぐれた目つきになるかのん。速人はその状況を飄々と受け流す……この大胆不敵かつ冷静さこそ彼の持ち味である。

さて、ラップ調から自然体に戻った千砂都が話し始める。


「音楽科の子に色々聞いてみたんだけど……勉強もできるし、運動神経抜群、リーダーシップもあって———あと理事長先生、学校の創設者の葉月花さんの知り合いらしくて…葉月さんがダメって言ったことをひっくり返すのは難しいんじゃないかな?」
「うん……でも———」
「でも?」
「このままこれを認めたら葉月さんのワガママが通っちゃう。それはダメ!」
「でも、8設立を認めてもらえなかったんでしょ?」
「だったら別の方法を考える。それに……!」


千砂都に向ける眼差し……以前のかのんとは違い、芯に熱がこもった目だ。


「私…本気でちょっとスクールアイドルに興味があるの。」
「かのんちゃん……!?本気なの?」
「わかんないけど———なんか、そこに叶えたいモノがある気がするの。」


漠然としすぎた答え。論説文ならば間違いなく0点であろう解答だが……速人はむしろその答えを待ち望んでいたかのように、不敵に笑ってその返事をしてやる。


「よく言ったかのん。お前がそう思うのなら、全力で突き進め。そんなお前たちを守るのが俺の役目だ。」
「速人くん……!///」
「それに———難しいものほど攻略し甲斐がある……師匠もそう言ってたしなw」
「そっか……!じゃあ私もかのんちゃんのこと———応援するよ!!」
「ちぃちゃん———よーし!!何としてもスクールアイドル部を設立させるぞ〜!」



勇気ある声が響き始める。





————※————





「ワレワレに自由を〜!!自由に部活動ができないなんてマチがってマス!!部活動は常にビョードーであるべきデス!さぁ!トモに戦いマショウ!!」


『Let‘s スクールアイドル』と描かれた巨大荷車に立って、可可はメガホンで叫ぶ———何か出身国に対する強い皮肉を感じざるを得ないこの行為。

その荷車を先頭で引っ張るのはかのん。しかしあまりにも重いこの荷車をJK1人が押すことは不可能。よって背後には随一の馬鹿力 那由多が荷車を押している。

こんな荷車を押して正門に入れば当然、他生徒からも注目を浴びるわけである……が、大半は奇異の目であることは明らかだ。

かのんは目痛さと引っ張る重さで訳の分からない涙を流す。


「ううう……こういうことじゃないと思うぅ〜(涙目」
「全く、なww」
「速人くぅんだすけてよ〜!」
「えーヤダ。」


速人はこの荷車と並列して歩き、かのん達をを小馬鹿にするように笑みを溢す。それに対して荷車の重さの8割を受け持って、満身創痍の那由多が怒る。


「お前…ちょっと手伝えよ———!」
「いいじゃねぇか。どうせ押すところも引っ張るところもねぇ訳だしw」


グッと押し黙る那由多。と、そこに可可が速人へ尋ねる。


「ハヤトさん!私のサクセン、上手く行ってますよね!?」
「あぁ。まずは認知してもらうことが大事だからな。」


そうしばらく歩いていると……


「かのんちゃーん!!」
「えっ、ちいちゃん……?」
「かのんさんのお友達デスか?」
「理事長が……理事長がー!」
「「……?」」

不思議そうに見つめるかのんと可可。対して速人は少し笑みをこぼしてその結論を読みきっていた。千砂都は息切れしながらその要件を伝える。


「り、理事長が……理事長が大至急、理事長室に来るようにって……!」
「来たか……!」ガッツ
「ヤリマシタ!!」ハイタッチ
「あはは……」


可可は荷車から飛び降りて速人とハイタッチする。一方、かのんは困惑するしかなかった。


そんな中で———1人、恐るべき嗅覚が冴える。



「(…この匂い————ヤバいな。)」



〜〜〜〜〜




「それで…訴えをしていたわけね?」
「はい!やりたいことがあるのに自由にできないのはおかしいと思いまして。」


理事長の問いかけにかのんは先ほどとは打って変わって、はっきりと答える。それを受けて理事長は、かのんと可可とともに呼び出された恋に対して質問する。


「葉月さん、部活の設立申請を認めなかったというのは本当ですか?」
「部活動の自由を阻害したつもりはありません。」

凛として答える恋に可可が怒りを抑えて否定する。

「いえ!シマシタ!!」
「スクールアイドルだけです(キッパリ)」
「だからなんでスクールアイドルだけ…!」
「理由は前にも言いましたが。」

「だから理由になってねぇんだって。」
「!……またあなたですか。」


ここで口を挟むのは速人……理事長室に置かれた骨董品を物色しながら、傲慢さを隠すことなくだ。


「その理屈だと今後設立されるであろう全ての部活動に対して、その理屈を適用できる……そうなれば最終的に学校のイメージダウンに繋がりかねない———本末転倒とはこのことだ。」
「「「…………」」」
「はぁ…困りましたね。」


その場の3人が黙り込み、理事長が困惑の表情を見せる———その時だった。


「1つギャンブルをしようじゃないか。」
「「「「……!?」」」」


理事長室の扉が開く……まさにその瞬間だった。


「!!!!!!———誰だッッッッ!!!」
「速人くん!?」


かのんが驚く——速人は突如として大声を出し、自分の持つ火炎剣烈火を扉に対して構えたのだ。

彼は感じ取っていた……扉から発するとてつもない威圧感、いわゆる覇気のようなものを。それこそ普通の人間なら気絶してもおかしくないような。

入ってきたのは……あの男。

「久しぶりだな、理事長。」
「魁さん!」
「「「……?」」」
「エルシャム王…!」
「エルシャム王…って、このV系みたいな人が!?」


カノンが突っ込んだ、V系のような服を正装とするこの黒髪金眼の美男こそエルシャム王 小原魁である。

当然、そんな有名人の出現にかのんも可可も驚きを隠せない。


「ど、ドウシテ王様が…!?」
「知らなかったか?俺はこの学校の設立資金を提供した———いわゆるスポンサーってヤツだ。」
「そ、そうだったんですか…」


魁は歩きながら先ほどの件について話し始める———心なしか、速人に近づきながら。


「俺がスポンサーである以上、自由第一を守らなければ俺のメンツが立たない……故に部の設立は認めるべきだ。」
「し、しかし…!」

恋が反論しようとするが、エルシャム王は人差し指を示して、話を続けることを求める。


「———かといって、ここ最近のスクールアイドルは少々物騒な出来事も多い。」
「……怪人、ですか?」
「ほう、よく知っているな?」
「ええ、スクールアイドルのことを総合的に判断する一因として捉えました。」


魁はニヤッと笑い———速人に最接近した状態で条件を述べる。


「まず第一に、仮面ライダーを雇い入れること。これがスクールアイドル部を設立する最低条件だ。」
「仮面ライダー……?」
「怪人を倒すために導入された肉体強化装備……いわゆる変身技術ってヤツだ。」
「は、はぁ…」
「だが、その条件はもうクリアしているようだがな。」
「「ま、まさか……!?」」


かのんと可可が速人の方を向き、魁も横目に彼を見たことで恋は『仮面ライダーが誰か』を理解する


「なるほど……しかしそれだけでは学校のイメージが———」
「そこで2つ目。」


魁はかっこよく、黒いマントを靡かせる。


「俺の友人が開催するスクールアイドルイベント……そこで結果を残すことだ。」









 
 

 
後書き
戦闘シーンなくてすまん…… 
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