ウルトラマンカイナ
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外星編 ウルトラホピスファイト part6
『ヘァアァッ! ダァアッ!』
『ジュワァアッ! ジュアッ!』
ウルトラマンへと変身した士道達はその強大な力を振るい、キングジョーの侵攻を阻止するべく渾身の力で組み付いている。
その鋼鉄のボディにしがみ付いたウルトラマンシュラとウルトラマンメディスは、自分達の手を痛めることも厭わず、チョップの連打を見舞っていた。だが、キングジョーはその全身を軋ませながらも、難なく2人を振り払ってしまう。
『ウァアッ!』
『ガァアッ……!』
激しく転倒させられた2人に向けて、キングジョーは必殺の破壊光線を放とうとしていた。すでに消耗している今の状態でその一撃を浴びれば、宇宙警備隊のウルトラ戦士といえどもタダでは済まない。
『……そうはさせるかッ!』
そこへ2人を庇うように飛び込んで来たウルトラマンミラリが、間一髪でバリヤーを展開させ、光線を防いでしまう。接近戦を不得手とする彼ならではの活躍であった。
その間に立ち上がったメディスは、治癒能力を宿した光エネルギーを己の掌に集中させると、シュラの手を掴んで素早く助け起こしていく。
『ヴェエァアッ!?』
……のだが、メディスはその治癒の光を纏った拳を、いきなりシュラの鳩尾に叩き込んでしまった。銀十字軍の見習い隊員にして、「ウルトラマンドクテラ」の弟子でもあるメディスの得意技、「ウルトラヒールコンバット」だ。
通常の治癒よりも素早く仲間を回復させることが出来る「荒療治」を喰らったシュラは、憎たらしそうにメディスを睨み付けている。それは、メディスの方も同様だった。
『お、お前なぁ……!』
『……言っておくが、さっき手を掴んだのはさっさとお前を回復させるためだ。「握手」などではないからな?』
『何! 握手だと!? そうかお前ら、やっと仲直り出来たんだな! よっしゃあ、身体を張った甲斐があったぜ! 身体っていうよりはバリヤーだけどな!』
『……』
よりによって手力のそばで「握手」をする羽目になった士道と鶴千は、バリヤーを張りながら目を輝かせている厄介な男の存在に、揃って閉口している。
『ダァアーッ!』
『シェアァアッ!』
その頃、キングジョーの両脇に組み付いたウルトラマンアトラスとウルトラマンヴェルゼは――赤と白の剛腕を振るい、ペダニウム宇宙合金に守られたボディを何度も殴り付けていた。
さらにヴェルゼはそのロケット状の頭部で、幾度となくヘッドバットを放っている。アトラスも稲妻のような細いラインが走った脚で、ミドルキックを見舞っていた。だが、キングジョーはその猛攻を浴びても怯んですらいない。
『テェエエーイッ!』
『イヤァアァーッ!』
これでもビクともしないのなら、さらに畳み掛けるまで。そう言わんばかりに、キングジョーの前方と後方から挟み撃ちにするかの如く――ウルトラマンヘリオスとウルトラマンアルミュールが突っ込んで来る。
アトラスとヴェルゼがキングジョーの両腕を渾身の力で引っ張り、無防備な体勢にした瞬間。赤の模様が入った右の拳と青の模様が入った左の拳を矢継ぎ早に振るい、ヘリオスは怒涛の乱打を打ち放っていた。
外側が青く、内側が赤色になっている下半身は、その反動に耐えようと大地を強く踏み締めている。左胸に付いている円形のカラータイマーも、煌々とした輝きを放っていた。
『ヘァアアッ! ダァアァアッ!』
『タァァーッ! イヤァアッ!』
クリスタル状のプロテクターをガントレットのように装着したヘリオスの拳が、僅かにキングジョーの装甲を抉る。後方からキングジョーを殴打しているアルミュールも、拳からエネルギー弾を放つ「アルミュール・クラッシュ」を、至近距離で連射していた。
間違いなく、効いてはいる。並の宇宙怪獣ならば、ここまでの攻撃でとうに沈んでいるところだ。
だが――それでも、この宇宙ロボットの牙城は揺らいでいない。本来のスペックがあまりにも常軌を逸しているが故に、すでに損耗している状態でありながら、ウルトラ戦士達との「勝負」が成立しているのだ。
(こいつ、一体どれほどまでッ……!?)
ウルトラ戦士達も依代の人間を蘇らせるためにかなりのエネルギーを失っており、決して本調子というわけではない。その点を差し引いたとしても、このキングジョーの硬度と耐久性はあまりにも桁違いであった。
拳から伝わる、その異様なまでの硬さに瞠目する日ノ出。たった一瞬のその隙が、キングジョーに反撃の好機を与えていた。
『ウアァアッ!』
僅かに乱打の勢いが弱まった瞬間、拳の隙間を縫うように振り抜かれたキングジョーの鉄腕が、4人のウルトラマンを容易く跳ね飛ばしてしまう。ヴェルゼ、アトラス、ヘリオス、アルミュールの巨体が宙を舞い、轟音と共に大地を揺るがしていた。
『シュワアァッ!』
『ヴァァッ!』
地を転がる彼らの真上をジャンプで飛び越しながら、ウルトラマンリードとウルトラマンポーラも、恐れることなくキングジョーに挑み掛かって行く。
だがやはり――リードの軽やかな飛び蹴りも、ポーラのフィジカル任せな乱打の嵐も、そのボディを打ち倒すまでには至らない。その手応えのなさを肌で察知したポーラは、素早く低姿勢からのタックルを敢行し、キングジョーの下半身を拘束した。
『……シュワッ!』
その隙に後方宙返りの要領で跳び、距離を取ったリードは八つ裂き光輪を放つ。光線技を苦手としつつも、八つ裂き光輪の精製と制御においては宇宙警備隊の中でも突出している彼の技は、キングジョーの上半身にしっかりと命中していた。
咄嗟に上体を捻り、内部機構が露出していない箇所で光輪を受け止めたキングジョーだったが、その刃を受けた外装は徐々に削れ始めている。このまま押し切れば、外装を切り裂いてそのまま真っ二つに出来る。
はず、だったのだが。
『シュアッ……!?』
回転中の光輪を掴んだキングジョーはなんと、刃に触れた掌から激しく火花を散らしながらも、無理矢理光輪を引き離してしまったのである。その力業に瞠目するリード目掛けて投げ返された光輪が、空を裂く。
咄嗟に屈んで光輪をかわしたリードだったが、それから間も無く凄まじい衝撃に襲われ、大きく転倒してしまうのだった。強引に引き剥がされたポーラの巨体を、そのまま投げ付けられてしまったのである。
『ヘァアァアッ!』
『ダアァアッ!』
自分の装甲を傷付けたリードにとどめを刺そうと、躙り寄るキングジョー。その進撃を止めるべく、ウルトラマンブフとギガロが同時にタックルを仕掛け、チョップとパンチの連打を見舞う。
インファイトを得意とするブフのパワーは、特に目を見張るものがあった。相撲さながらの踏み込みでキングジョーを押し出して行く彼の勢いは、この強大な宇宙ロボットの侵攻をも食い止めていたのである。
その隣で共に踏ん張っているギガロも、少しでもキングジョーを怯ませるべく、ウィークポイントとも言うべき内部機構の露出箇所をしきりに殴り付けていた。勝利のためならばどこまでも手段を選ばない、依代の精神性が作用した攻撃であった。
――そして。ブフとギガロによって進行を阻止されたキングジョーの背後には、蒼き超人ことブルーマンが大きな双眸を輝かせ、忍び寄っていた。
ブルーアックスと呼ばれる手斧と、ブルーハープンという銛を両手に持ち、背後を取るその姿は――ヒーローと形容するには、あまりにも殺気立っている。言うなれば、殺し屋のそれであった。
『ブルーファイッ!』
攻撃開始を宣言するその台詞を放った瞬間、ブルーマンの猛攻が始まる。手斧による容赦なき滅多斬りと、返しが付いた銛による刺突。その無慈悲な凶器攻撃に火花を散らしたキングジョーのボディが、大きくぐらついた。
この攻撃でついに、不沈艦の如きキングジョーの牙城が揺らいだのである。だが、それはこの宇宙ロボットが「本気」になった瞬間でもあった。
『ウグァァアッ!』
リミッターを全開放した、暴走状態に陥ったのか。これまで以上の凶暴性を剥き出しにして動き始めたキングジョーは、銛を突き刺されたままブフとギガロを腕力だけで投げ飛ばしてしまう。
そして、斬り掛かって来たブルーマンの手斧を、己の鉄拳で叩き折ってしまうのだった。その威力を目の当たりにしたブルーマンは素早く後方に転がり、距離を取る。
その一連の攻防を目撃していたBURKスコーピオンの乗組員達は、ウルトラ戦士達と互角に渡り合うキングジョーの性能に息を呑んでいた。いくらウルトラセブンすら苦戦させた宇宙ロボットとは言え、これほどまでの耐久性と継戦能力を持った機体など、過去に例がないのである。
「な、なんて奴なんだ……! 12人ものウルトラマンに総攻撃されても、まだ立っていられるなんて……! し、しかもウルトラマン達の方が押されてるくらいじゃないか……!?」
「いや、だけどウルトラマン達の攻撃も確かに効いているぞ……! 出現時よりもさらに装甲が削り落とされてる! 無防備な部分はどんどん増えて来てるんだから、そこに強烈な1発をかましてやれば……!」
「頑張ってくれよ、ウルトラマン……! BURKセイバー隊の皆ッ……!」
それでも、決して不利というわけではない。乗組員達が言う通り、出現時の時からすでに損耗していたキングジョーの外装は、ウルトラマン達の攻撃によってさらに剥がれ始めている。
つまりそれだけ、攻撃が通りやすくなるということなのだ。一見すればキングジョーが圧倒しているようだが、実は向こうもかなり危険な状態なのである。
その勝機に自分達の運命を委ねた乗組員達は、ウルトラマン達とBURKセイバー隊の勝利を祈り続けている。それは、BURKスコーピオンのコクピットから戦いの行方を見守っているシャーロットも同様だった。
(……あのキングジョーは私達の前に現れた時から、すでに激しく損耗していた。そして、これまでの攻撃でやっとあそこまでのダメージ……。やはり、これまで地球で観測されて来た機体とは明らかに耐久性が異なるわね。この状況下でも分離合体を一度も使っていないところを見るに、その機能を犠牲にして耐久性の向上に特化した、拠点防衛仕様の機体……ということかしら)
豊穣な爆乳を腕に乗せ、その白く深い谷間から甘い女の匂いを振り撒いている彼女は、目を細めて戦況を凝視している。
(そのキングジョーをあそこまで痛め付けた光波熱線……か。もしそんな大火力が私達に向けられるような時が来たら、その時こそ間違いなく地球は滅亡ね)
キングジョーの並外れた耐久性に着目している彼女は、それ自体だけでなく――そのキングジョーをあの状態になるまで追い詰めた、光波熱線の正体に思いを馳せていた。
この星を滅ぼし、あのキングジョーを大破寸前にまで追い込んだ侵略者とは、一体何者なのか。その恐るべき最大の謎は、シャーロットの脳裏に絶えず纏わり付いている。
だが、それがこの場で明らかになることは無いのだ。ホピス星人が滅びた今、死人に口はないのだから――。
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