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三つのシトロン

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第五章

「シトロンだよ」
「私がシトロンの妖精だからなの」
「あの実は自由に出せるだろ」
「ええ、そうよ」
「それならその実を出してだよ」
 シトロンのというのだ。
「新しい王様にプレゼントしたいと歌うんだよ」
「そうすればいいの」
「あの王様は人を疑わないけれど頭はいいからね」
 それでというのだ。
「きっとだよ」
「お気付きになられるの」
「絶対にそうなるからね」
 それでというのだ。
「あんたは三個だよ」
「シトロンの実を出して」
「置いておくんだよ」
「窓のところになのね」
「王様は絶対にシトロンを取るよ」
 三つのその実をというのだ。
「そして切るよ」
「あの時みたいに」
「あんたはシトロンの妖精だから」
 黒猫はこのことも話した。
「そうしたらシトロンの実から出るね」
「ええ、一個目と二個目は消えて」
 そうしてとだ、妖精は黒猫に答えた。
「三個目でね」
「あんたは消えないね」
「そうなるわ」
「だからね」
「三個置くのね」
「そうしたら王様は気付くよ」
 チェンツッロはというのだ。
「絶対にね」
「あの人なら」
「そうなるからね、じゃあね」
「ええ、置いておくわね」
 黒猫の言葉に頷いてだった。
 妖精は窓のところにシトロンの実を三個置いた、そしてここでまた黒猫が話した。
「新しい王様にプレゼントとね」
「歌うのね」
「シトロンの実を三つね」
「そう歌えばいいのね」
「それで完璧だよ」
 こう言ってだった。
 黒猫は鳩の姿をした妖精にそうさせてだった。
 ことの成り行きを見守ることにした、そのうえで。
 鳩も待った、すると。
 チェンツッロはその話を聞いてすぐに厨房の者達に言った。
「その三つのシトロンをな」
「王がですか」
「食べよう」
「そうされますか」
「妃なのだからな」
 彼女がシトロンの妖精であるからと言ってだった。 
 そうして三つの実を自ら受け取ってナイフで切ると。
 あの時の様に一個目と二個目では妖精はすぐに消えて。 
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