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少女は 見えない糸だけをたよりに

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 一応、式の話が落ち着いたところで、お母さんが

「香波ちゃん 来年 成人式よね だけど 式があるかどうかもわかんないからね あのね 結婚式のこともあるから、前に着た 燿のものでいいかしら・・」

「おかあさん 私 一緒に行く友達も居ないし そんな成人式のために 特別なんて思っていませんから・・」

「なんだー そんな 香波だって 一生一度の成人式だぞー 考えてあげなさい」と、お父さんが言っていたけど

「本当にいいんです お父さん そんなのもったいないですし お母さんの言う通り  結婚式のこともありますから・・」

「そうよ だって お嫁にいってしまったら、振袖はちょっとね もう、着る機会もないのよ だったら、他にお金回したほうがいいわよ 成人式もあるかどうかわかんないのですから・・」と、お母さんは意見を押し通してしまった。

 お父さんと散歩に出ていた時

「香波 いいのか ワシは香波のことを燿と同じように思っている だから、せっかくの機会なのに 同じように晴れ着を・・」

「いいんです もう 私は、お姉ちゃんの妹なんですから、同じ着物を着れるだけでもうれしいんですから・・」

「そうか 香波が素直ないい娘で良かったって思うよ でも、式を挙げる時には、島のお父さんとお母さんにも 香波の幸せなとこをちゃんと見てもらおうな」

「うん お父さん もう 言わないでー 想いだしちゃうから・・」

 そして、その年も暮れていった。人が集まることのない静かな年の瀬を迎えた。だけど、私は、この家で過ごす最後の大晦日で、大掃除をした後、お母さんから、しっかりとお料理を教えてもらっていた。 
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