象も猿もわかっている
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第一章
象も猿もわかっている
ジンバブエのマナ=ブールズ国立公園の知り合いのスタッフから連絡を受けてだった。リサ=マラビニ縮れた金髪を後ろで束ねた黒い目の小柄な獣医はすぐに車で公園に入った。そしてそこでスタッフから説明を聞いた。
「若い雄の象ね」
「はい、どうも怪我をしていて」
それでとだ、スタッフは助手席から運転をしているリサに話した。
「それでかなりです」
「辛そうなのね」
「歩けていますが」
それでもというのだ。
「見るからに痛そうです」
「わかったわ、じゃあ今からね」
「その子をですね」
「診させて」
車を運転しつつ応えた、そうしてだった。
実際にそこに行くとだった。
若い雄の象がいた、象はリサが運転する車に気付くとだった。
そこに来た、そのうえで。
車に寄り添ってきた、リサはその様子を見て車を出てから言った。
「まさかと思うけれど」
「はい、我々が助けてくれるとですね」
「わかっているみたいね」
車に寄り添ってそこから出て来た自分達に助けを求める目を向けている象を見て言った。象は鳴きもしたが穏やかだった。
「パオン」
「どうやら」
「はい、大人しい子で」
「それでなのね」
「ずっと辛そうですが暴れないで」
それでとだ、スタッフは話した。
「この通りです」
「大人しくしているのね」
「はい」
実際にというのだ。
「この子は」
「わかったわ、じゃあすぐにね」
「診てくれますね」
「そうするわ」
リサはスタッフに応えて早速だった。
その若い雄の象を診た、そしてだった。
レントゲン診察までして言った。
「この子、プリティボーイだけれど」
「どうでしたか?」
「公園に逃げ込んできたのよね」
「そんな感じでした」
スタッフも答えた。
「どうも」
「額に銃創があるわ」
「額ですか」
「それで頭の中頭蓋骨に当たって」
そうしてというのだ。
「変形した銃弾があるから」
「それで痛かったんですね」
「ええ、そうよ」
プリティボーイと名付けた彼のことを話した。
「だからすぐにね」
「銃弾を取り除いて」
「元気になってもらうわ」
「わかりました」
こうしてすぐに銃弾を取り除く手術が行われた、そしてだった。
その後で手術後の治療も受けてプリティボーイは元気になってから公園に戻された。その彼を見送ってだった。
リサはスタッフに笑顔で話した。
「象は頭がいいから自分を助けてくれる人がわかるのね」
「だから博士を見て寄り添ってきたんですね」
「私が運転する車にね」
「そうですね」
「だったら応えないといけないわね」
「助けてくれるとわかって助けを求めてきたのなら」
「必ずね」
笑顔で話した、そしてだった。
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