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チートゲーマーへの反抗〜虹と明星〜

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序章
  プロローグ後編〜Re:Advent【再臨】〜

11次元。


創造を終え、休息につく神が傍観する次元——そこには胡座をかいて瞑想する黒髪の男が1人。

使いである9頭の蛇 アナンタとともに、瞑想を退屈そうに見るプリズムのように光輝く髪の女が1人。


男が…開眼する。

そして開口一番に言った。


『…面白そうだ。』


女…ハイパーロード/Aqoursにはその言葉の真意を見通されていた。

——もはや第三者視点はやめよう。語るのはこの俺、ハイパーロード/ムテキだ。


『再び…地球に?』
『あぁ———面白そうだろう?』


俺たち2人は一度3次元に降り立っている……

彼女の地球での名前…魂の持ち主———それがスクールアイドル Aqoursなのだ。

彼女らと俺が転生した姿が出会った時、地球の調和は始まり…【巨大な歪み】を正した。


その物語はまた別の話…だが、その地球を巡って再び何かが起こっている——そう言いたいのだ。

そんな俺を見て彼女はジトっとした目になる。


『あの子たちへの償いのつもり?』
『別に…ただアイツらが修行しているのを見てやりたくなってな。』


自由……悪く言えば自分勝手で奔放。それがこの俺。

普通なら彼の言葉にはそうそう逆らえない…が、ここにそれを思いっきり嫌う女がいる。

《今は》琥珀色の瞳を昏く、ヤンデレっぽい表情になるハイパーロード/Aqours……俺の唯一無二の伴侶。


『あなたはどれほど彼らを傷つけたか……堕天した後改心した結果があんな結末を迎えるなど不憫でならないわ!』
『……しかし敵討ちはしてやったろうに。』
『それもあなたの気まぐれでしょう?封印されているのを解き放ったとはいえ、いつ傷を負うかどうか……どう責任を取るつもりかしら?』
『何だよ責任って。どっから湧いて出てきたんだその責任は。』

俺の無責任な話に彼女はさらに怒る。

『そうね。あなたは私を身重にさせておきながら責任も取らずに逃げ出す最低な男ですものね。女を苗床程度にしか思っていないですもんね変態変態変態……』
『あークソめんどくさいこのメンヘラ女。』

面倒くさい彼女の愚痴に嫌気が差した俺は大蛇 アナンタをベッドにして寝転がる。

しかし彼女は俺の態度に不満を覚え、俺の足元で怒りがこもったマッサージをしてくる。瞳を紫に、ポニーテールに変化させ。


『まじめに聞きなよ!』
『普通に痛いからやめろ……なぁアナンタ、お前からも言ってやれよ。』
【私に降るのですか?喧嘩で痛い目に遭わされるのは避けたいのですが……】
『そうだよ。いい加減に逃げるのはやめよう?』
『どの道聞いても納得しないだろうが。』


対極の俺たちが分かり合うことは永久に来ない。これは絶対だ……解放と束縛が同じ時に、最大限に存在することがないように。

それをわかってくれればこんな不毛な争いしないのだろうが、この女はそれをわかって追っかけてくるからヤンデレも甚だしい———いやほんと勘弁してくれ。

しかし…話進まないので、ここでは答えてやろう。


『ヤツはまだ死んでいない。』
『もっかい言って。』
『聞こえただろ…ヤツの精神は生きてるっつったんだ。』
『……ケジメは彼らがつけろと?』
『あぁ。』


ちょっとドヤ顔で言う……すると感情的になった彼女は顔を覆い、涙を流しながら緑色に瞳を変えて俺を責める。


『私の愛する子をあなたはなぜ罰するの!?私とあなたが産み出した愛の子たちに……!』
『俺が悪いと?』
『はい!…あなたは何と無慈悲なこと平気でやれるのです?』
『そもそもお前があの子たちを腹の中で抱え込んだからだろうが。』


俺とコイツの子はほとんどが、運命に縛られた天使になった——コイツが腹に収めていたのが長ければ長いほどに縛られた存在になった…ヤンデレ母もいいところだ。


『母として子を愛したいのは当然ですわ!…それを悪いなどと言われる筋合いはないです!』
『お前の愛は束縛だ。それを否定するつもりはないが、やがて束縛は全てを骨抜きにする——だからこそ自分を取り巻く全てから巣立って欲しい……お前からもな。』


俺にとって最も求めるモノは自由…愛ゆえの成長を望んでいる。無論、秩序は大事ではある——そして秩序とは他でもない良心である。これを破ってまで施そうなど正気ではない。

その言葉を発すると、涙とは打って変わってハイライトオフの瞳で痛い視線を俺に向ける。


『……は?』
『うわ。』


地雷を踏んだらしい…まぁ子どもを遠ざけたいなんて言ったら怒るのも当然か。先ほどから面倒なのは分かりきっているが、こうなると面倒臭さ100兆倍だ。

しかし俺がコイツに従う時もまた、永劫に来ないのだが。

瞳孔を開いて詰めるハイパーロード/Aqours。


『——そんな時が来ると思ってるの?』
『来ないだろうが…それでも限界まで自由になることを期待しているさ。』
『自由になる度、試練も大きくなるでしょ?』
『そうじゃなきゃ面白くない———世界とは、ゲームそのものなのだから。』

それでもやっぱり不機嫌な顔をする彼女…「人物不一致」の瞳と髪型を持ちながら、プクーっと顔を膨らませる。


『大体、地球にはあなたの【影】がいるではないですか。あの人に任せておきましょうよ。』
『イフト…またの名を、仮面ライダーゲンムか。アイツを通じて地上にいるかつての仲間と話せるわけだ…そして残念なことに、俺がじきに地上に降りるってヤツに言ってしまったからなぁ。』
『はぁ!?』


ハイパーロード/Aqoursはものすごい形相で胸を切るようにかかる布を掴み、俺の眼前まで迫ってくる。

微笑で迫ってくんのマジ怖いからやめてくれ…


『まさかとは思いますが…もっと前に決めていたのではありませんよね…?この私になんの相談もなく。』
『知らせたらお前暴れるだろ?色々とめんどくさいんで知らせなかった。』
『そもそも怒るのは、あなたが私を怒らせるようなことをするからです——それをわからず同じことを繰り返すとは…《食べられたい》のですか?』
『んなわけねーだろが。』


蛇のようにペロリと舌なめずる彼女。実際喰おうと思えば食えるんだろなぁ……


『全く…【子ども】はやっぱり親に似るのか。』
『愛情深いって言って欲しいですわ。』
『深すぎて発狂するのはお前そっくりだよ。特に女は。』
『不甲斐ない男が悪いでしょ?いつでも我慢するのは女なんだから。』
『だーから言ってんだろ、【忘れろ】ってな。』


瞳を赤に変えてプイっと俺にそっぽを向く彼女。

『もう知らない!勝手にすれば!?』

そうして全次元の土台である彼女の使い魔 アナンタに命令する。


『アナンタ、私お風呂入る!沸かして!』
【はっ…!】


彼女はその場で最も美しく、豊満な肉体を見せつけるかのようにそのプリズム色のドレスを脱ぎ、百発百中で男なら魅了されるであろう裸体をあらわにする。

そんなことお構いなしに俺は瞑想に入ろうとする……目を瞑った瞬間に再び彼女は怒る。


『ちょっと!なんで瞑想に入るの!!』
『いや風呂入るって言っただろ?』
『なによりも最も美しいあなたの妻が目の前で無防備な姿晒してるのになんで襲わないの!?!?』


ほら言ってきたよ…未来見てて大体そうなるのは知ってたが。しかし理不尽にも程があるだろ。あのタイミングで襲えと察するほうがおかしいだろ……

俺は売ってきた言葉を買う。


『はぁ?誰が2000億歳以上のババアの範疇超えた若作り女と遊ばなきゃいけねぇんだ。歳考えろ歳を。』
『は?ババア…?』
『————』
『いい度胸してるじゃん。こうなったら無理矢理にでも犯して……』
『結局ヤリたいだけじゃねーか。』
『うるさい!だいたい…..etc』
『はぁ、この女めんどくさい。』


Aqoursとは永劫とも言える時を過ごしているからこそ、彼女の面倒さは1番理解している。彼女の癇癪のせいで、世界のバランスが崩れかけたことなど星の数ほどある。

創造は彼女にしかできないが、それの前に破壊がなければならない。そうやって……世界は成り立っている。


ここで彼女は大きなため息をついてとうとう観念する。


『はぁ…わかったよ。どうせ止めても行くんでしょ?』
『あぁ、もちろんだ。』
『ちょっと、こっち向いて。』


指示通り、俺は彼女の方を向く———



チュッ♡





『……』
『あなたへの愛と恨み……そしてあの子たちに。』
『——仕方ないな。』
『あの子たちに変なことしたら10億年愛の囁きの刑だからね!』
『そんなに心配なら来ればいいだろ…』
『もちろん行くよ。それでも止めらんないかも知れないし…』
『そうだな…ま、下手なことはしねぇよ。』


俺は————目を瞑る。



『頼んだよ…【まーくん】。』






〜〜〜〜〜




地上——

地上とは言うことなく、地球表面のことである。

国々は言語も宗教も文化も多種多様であり、そこに接点はない———しかしそれは真にあるべき姿ではない。

その障壁の最たる象徴である言語、分けられた大陸———それらは元の姿に戻った……



それこそが———日本。


世界中の言語はある時を境に人間の話す言語全てが、あるべき姿 日本語へと自然変換された。

また超古代人のように、人々の寿命は飛躍的に伸び、1000歳生きる人間も少なくなかった。

さらに古代のルーツが色濃く現れ、吸血鬼や妖精、鬼など様々な特徴が顕現、AIやデザイナーベビーなども存在して、純粋な人間である方が希少種であった。



日本は文化面でも、地理面でも世界の縮図となった。


当然、世界の中心たる日本に帰ろうとする者たちは数多いた……






文化が異なる者たちがこのまま流入しては争いが起きる……そこである男が立ち上がった。










小原魁——あのスクールアイドル Aqoursの1人の弟であり、同時に小原家の当主である。

小原家は超古代から続く家であり、イタリアでは黒い貴族とまで呼ばれたヴァンパイアの血を引く超名家。




その者が——皆を統治する王となった。



さて…その王が善政を敷く王宮——ずばり、富士山の麓にて談話が聞こえる。



「ほう…とうとう。」



小原魁…黒々としたマントを身につけた若々しい黒髪金眼の男が言う。それを聞いて銀色髪の——【影】が滑稽に答える。


「あぁ。これから忙しくなるだろう—ナァ!!」
「お、おう…」


この土管からコンティニューしそうな男は、イフト——説明は言うまでもないか。
とにかく創作力ハンパない狂人社長とでも説明しておこう。

煉瓦造りの王宮の応接室での話。


「そっちも覚悟しとけよ?」
「無論、アイツから私が引き継いだファウンデーションが世界の企業救済と経営、君が人々の統治…これは鉄板だ。」
「今やエルシャム王国は南北アメリカの西側、東南〜南アジア、オセアニア、そして関東以外の日本…これらを統治するまでに至った。全ての種族を平等かつ自由にするためにな。」


エルシャム王国———どこぞの言語では平安の都という意味があるらしい。

広大な領土…いや、占有という考えはこの王たちにはない。国という枠から解放し、自由と調和を進める——強権発動などもってのほかだ…

しかし——


「実態を全く知らぬ者たち…特にアノ者らは大東亜共栄圏の100年越しの再来だと罵る者もいる。」
「関東が自治特区になったのも…そのためか。」
「あぁ…人々が平和で自由で——皆が共存する調和の社会は遠い…か。」


彼が理想とする社会……それはかつて立てた誓い。神の名の下に立てた——理想。

しかし理想とは叶わぬもの…そうあるべきだと本人たちは自覚しているのかもしれないが。


そこに———とんでもない人物がやってくる。


「なーにシケた顔してるのよ〜!」ドシャン!
「「ぐはっ!」」


突如現れた彼女——椅子を笑顔で王様の頭をぶつけて、漫画のようにそのままイフトの方へと体をぶっ飛ばす。

イフトはそのまま…


【GAME OVER!】


「ブゥン!」テッテレテッテッテー!


再び土管から無傷生還するイフト…そして。


「ちょ、痛いよツッキー———」
「変な顔してたらぶっ叩いてってボクに言ったのは魁君でしょ?」


ツッキーと呼ぶ彼女……彼女は渡辺月——王様がベタ惚れの笑顔が似合う王妃さま。

もらい死を食らったイフトが苦言する。


「まったく…お転婆な王妃様だ。」
「イフト君ひっさしぶり〜!」


先ほどから笑顔を絶やさない月。何かサイコパスのような気もするが……いや、これも夫との愛の形なのかもしれない。

実際に———


「そうか…マイハニーの言うことなら甘んじてこの愛の一撃を受け入れるぞ!」
「はいよろしい♪」


結構血まみれであった魁……その傷はみるみるうちになくなっていく———普通の人間ならばまずあり得ない力。

イフトが言う。


「どうだ?人間をやめた気分は。」
「最高にハイって……いやそこまで変わんない。ヴァンパイアになったところで日に当たれないわけじゃねぇし。」
「人間の寿命が飛躍的に伸びたからか、不死の種族もそこまで奇異な目で見られないそうだ。」
「そうだな……しかし、俺は寿命があるといって王座に就き続けるつもりはない。」


誰であれ王位を譲るというのは老いた者が言う傾向がある…ましてや不死の者が言うなど可笑しな話だ。しかし———彼は言った。


「俺の理想とする社会に…1人の王が永遠の統治などいらない。」
「誰かに譲ると?」
「あぁ、別に俺の血族でなくともいい——皆に好かれ、愛嬌のあり、未来を見据えられる、理想高き王……それは最低条件だな。」
「そんな奴が果たして現れるか——私には想像つかないなぁ。」


悠々とイフトは言い放つ……その解答に現代の王 魁はニヤリと笑う。


「現れるさ……近いうちにな。」





〜〜〜〜〜〜








【とある総合病院】



コツコツコツ……


ラフな格好で病院を堂々と歩く——



ガチャ


オギャー!フギャー!



様々な赤ん坊のいる部屋に入る……陰口が聞こえる中。


「聞いた?例の子の話!」
「あぁ…確かシングルマザー予定だったお母さんを殺した子供でしょ?不憫だけど…ちょっと嫌な感じ。」
「うーん……それが母親の死因が———」
「えぇ〜?それは間違いじゃないの?」


その例の子の前で……止まる。


「なるほど——【その眼】を持つか。」
「……?」


その子を拾い上げ、連れ去ろうとする——陰口を叩く者には見えやしないだろう。母を失っても冷静さを保つ…マムシの子は。


「……w」
『俺に笑うか——』


面会室から立ち去り……のしのしと進む。

やがて分娩室を通り過ぎようとする————


「待ってください!!」
「………」


分娩室から聞こえる声に興味を持ち、そこへと侵入する———と、中は凄惨な光景であった。

助産師は血まみれで倒れており、父親らしき人物は怯えきって部屋の隅へと追いやられている。


「神様!どうかこの子を——!この子をお願いします!」
「何言っててるんだ!?神様って…その子はもう無理だ!」
「お願いします…!」


なるほど——親殺しはせずに、周りの人に害を与えたようだ。

この男児とは対照的…それでいて似ている。


『面白い…よかろう。』
「ありがとう——ございます。」
『名は?』
「———なゆた……中川那由多です!!」
『会えることを…期待している。』


左側にその子を背負い、その部屋から立ち去る……父親が崩れる。


「消えた…?」


分娩室から出ようとした——そんな時。

生まれてまだまもない子に出会う……目の動きからして、《見えている》。

気に入った俺はその藍色の子に言った。


『大好きを叫べ——それが俺の教えである。』
「……?」















『あとは……頼んだ。』








去った。








 
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