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フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです

作者:ブラバ
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第5章 修行編
  第19話 習得

 
前書き
一体アレンは何を言っているんだ?という部分が多々ありますが、私の創造力がしょぼさはご了承ください…。
次回より、英雄感謝祭編となります。内容は大魔闘演舞を参考に構築しておりますが、原作から大幅にかけ離れているため、ご了承ください。
 

 
ナツside
修行8日目。アレンとの修行で、少しずつ自分が強くなっているのが分かった。初日に全力でアレンに殴りかかったときは、全く歯が立たず悔しい思いをした。だが、1週間身体の使い方を教えてもらいながら、ひたすらアレンと殴り合い(アレンには一発も当たらなかった)をしたことで、力の入れ方や殴り方をまだ完全とは言えないが身に着けることができた。アレンに、修行初日に言われた、「ラクサスと同じくらい強くしてやる」という言葉に血が滾った。もちろん、ラクサスに負けているとは思っていない。絶対俺の方が強いと思っている。だが、正直勝負の度に負けているのは理解していたし、だからこそ、俺が本当にそこまで強くなれるのかと砂粒程度の疑問はあったが、この1週間の修行でそんなものは吹き飛んでしまった。身体の使い方を知るだけでここまで力が向上するとは思ってもいなかった。ひたすらに全力で殴り掛かっても意味がないんだと、初めて理解した。
そして、2週目の今日からは、魔法発動時における魔力のロスを減らすという修行を行うらしい。なんだか少し難しそうだが、アレンの言うことであれば間違いはない。俺はハッピーが見守る中、アレンとの修行に真剣に取り組んでいた。
「言葉で説明するとだな、魔導士が魔法を使う際、体内にある魔力を魔法に変換するんだが、その際に必ずロス、つまり魔法に変換できずに放出されてしまう魔力があるんだ。これは俺はもちろん、どんな凄腕の魔導士でも必ず起こりうる。だが、そのロスを、極限にまで減らすことはできるんだ。それができれば、10回しか打てなかった魔法を、12回、13回と打てるようになるというわけだ。わかりやすく説明したつもりだったが、わかるか?」
「………?」
俺はいまいち、いやまるで理解ができなかった。
「ナツには少し難しすぎです…あい」
「なんだとー!!」
ハッピーに馬鹿にされ、少しイラっとした気持ちが芽生える。アレンはその後、何度も言葉をかみ砕いて説明してくれる。
「んー、つまり、沢山魔法が打てるようになるってことか!」
「…ああ、うん。もうそれでいいや」
どうやら、俺はアレンの言葉の意味をきちんと理解できたようだ。
「ナツ、やっぱお前には言葉だけで説明するよりも、やりながら説明した方がいいか」
「おう!燃えてきたぞっ!!」
俺はアレンの言う通りに、ひたすらに何度も火竜の鉄拳を発動させられた。「今まで無意識のうちにやっていた魔法の発動を、体内で魔力が魔法に変換されるのを意識しながら発動してみろ」というアレンの言葉通りに、意識を集中させながら何度も魔法を発動する。
体内の魔力が変換され、魔法となって体外へ昇華される。何言ってんのか全然わからなかったが、俺はひたすらにアレンの言う通りにやって見せた。
2時間くらいが経ったときに、アレンがふっと笑っているのが見えた。こっちは雲をつかむようなことを真剣にしているのに、笑われてしまったことに怒りを覚えた。
「何で笑うんだっ!!」
「いや、すまん、すまん。いやさ、呑み込みが早いなと思って」
予想とは違うアレンの言葉に、俺は思わず目を見開いた。
「やっぱり気付いてなかったか…。少しずつ、本当に少しずつだが、無駄な魔力がそぎ落とされてるぞ」
「ほ、ほんとうかー!!」
俺はアレンの言葉に、嬉しさが爆発した。正直自分ではよくわからなかったが、少しずつたくさん魔法が打てるようになっているらしい。…理由は本当によくわからないが。
「これができるようになったら、次は咆哮や鉤爪など他の技でもできるようにして、その次は戦闘中でもできるようにするぞ」
そうやら、これだけで終わりではないらしい。確かに、すべての魔法で、戦闘中に使えなければ意味がない。俺はニヤッと笑みを浮かべた。
「燃えてきたっ!!ぜってー習得してやるぜ!!」
「ははっ、そのイキだ、ナツ!」
俺は再度、拳に炎を纏わせ、何度も魔法の発動に勤しんだ。

ソラノside
修行15日目。私はルーシィーや妹のユキノと同じく精霊魔導士だゾ。だから、最初の1週間の膂力の修行に関しては、あまり乗り気ではなかったゾ。でも、「なんらかの事象にとって、もし精霊を呼べなかった場合、自分の身を守れるくらいの力はあった方がいい」というアレンさんの言葉を聞き、納得した私は、真剣に取り組み、アレンさんと組手ができる程度には習得できたゾ。…まあ、もちろんアレンさんが手を抜いているという前提条件付き…だゾ。
だが、2週目の魔力ロス最小化の修行は最初の1週目の修行よりやる気がでたゾ。そして今日からの修行である消費魔力の最低化も同じくとっても興味があるゾ。だって、もしそれが取得できれば、精霊の3体同時召喚も夢じゃないからだゾ…。とまあ、これはアレンさんが言っていた言葉をそのまま言ってみたのだが、正直習得方法は謎だゾ。
「よし、んじゃ詳しい修行内容なんだが、とりあえず自身の魔力を感じ取りながら、一回何でもいいから精霊を召喚してみてくれ」
「うん、わかったゾ!」
アレンさんの言葉を通り、私はスコーピオンを召喚した。そして、それを見届けたアレンさんが、口を開いた。
「今、自身にある魔力を感じながら精霊を召喚したと思うが、魔力を消費した間隔はつかめてるな?」
「勿論だゾ」
「修行の内容はいたってシンプルでロスを最低化するときと似ている」
「え?」
アレンさんの言葉に私は思わず首を傾けた。
「だが、意識する点が違うんだ。お前は今、一つの魔法を使用する際に、自分の魔力をどれほど消費すればいいのか理解できているはずだ」
「うん…だゾ」
「そしたら、今召喚するのに使った魔力よりも、若干少なくして発動してみるんだ」
「え?で、でもそれじゃあ…」
必要な魔力量を消費しなければ、魔法は発動しない…つまり、精霊は呼べないということは私でもわかる。
「ああ、魔法はうまく発動せず、空振りに終わるだろう。でも何度も繰り返す中で、自身の魔力を身体の中で膨張させるイメージを持つんだ」
「…膨張?」
私は魔力の膨張という聞きなれない言葉に、疑問を浮かべる。
「まあ、知らないのは当然だ。この領域にまで足を踏み入れて鍛錬を行っている魔導士は少ない。簡単に言うとだな、10の魔力をそのまま消費すると、10の魔力の力を持った魔法が発動するだろう?魔力のロスについては考えないものとしてくれ」
「うん…。わかるゾ」
「だが、魔力の膨張…もっとわかりやすく言えば拡張、それが可能となれば、8の魔力を膨張させて10の魔力と同等の性能を有することができるんだ」
アレンさんはとっても真剣に説明してくれるが、自分にはさっぱり理解できなかったゾ。理屈はわかるゾ。でもどうやってやればいいのかさっぱりだゾ。さっきアレンさんは魔力ロスの最小化の修行を同じと言っていたが、正直あのやり方で一体どうやるのか、皆目見当もつかないゾ。
「まあ、言葉だけで理解するのは難しい。だから、実際に感じてもらいながら説明する。ソラノ、手を出してくれるか?」
「う、うん。わかったゾ」
私は言われるがままにアレンさんに手を差し出す。すると、アレンさんは私の手を優しく握ってくれたゾ。…しかも、指と指を絡ませた恋人つなぎで…だゾ。
「あっ///アレンさん?」
私はとっても恥ずかしくなり、思わず声が出てしまったゾ。アレンさんの手…とても温かいゾ…。
「今、俺はソラノと手を繋いでいる方に魔力を流しているが、わかるか?」
「…うん」
とても温かい魔力が私の手にも伝わっているゾ。次第に魔力はオレンジ色の衣のように視認できるようになったゾ。
「これが、魔力を普通に放出している状態だ。そして、魔力の膨張というのはこういう感じだ」
アレンさんが言い終えると、私の手に流れてくるアレンさんの魔力が、次第に膨張しているのが分かったゾ。
「こ、これは…」
「どうだ?なんとなくイメージはつかめたか?」
「う、うんだぞ…」
そうして、私の手からアレンさんの手が離れる。…もう少し手を繋いでいたかったゾ…。
「膨張のイメージはつかめたかと思う。そして、これを今と同じように、外に魔力を放出した後にやるのは造作もないが、魔力消費の最低化を図るには、魔力を魔法へと変換する直前で行わないといけないんだ」
「直前…だゾ?」
「そうだ。使用する魔力を意識し、それを魔法へと発動する直前。そのタイミングで魔力を膨張させ、本来は充足していない魔力を増大させ、魔法へと還元する」
「…それで、魔力消費の最低化がなる…だゾ?」
私はアレンさんの言葉をかみ砕きながら言葉を発した。
「そうだ。だが、これは相当な技術が必要だ。そう簡単にできるものではない。だから、失敗を恐れずに挑戦してほしい。俺が何度でもアドバイスをしながら見守っているからさ」
アレンさんの言葉に、私は覚悟を決めて挑むことにしたゾ。ちなみに、本当に中々うまくいかずに、泣きべそをかいて、何度もアレンさんに慰めてもらったのは内緒なんだゾ…。

ウルside
修行22日目。私は、先週までの魔力消費量の最低化という、雲をつかむような修行を何とかやり終えた。と言っても、一つの魔法を使用する際に消費する魔力をほんの少しだけ減らせた程度なのだが…。だが、それでもアレンは私を沢山ほめてくれた。「1週間でここまでできるとは思わなかった」というアレンの言葉に私は思わず照れてしまい、ニヤニヤが止まらなかった。…もしかしたら、アレンの期待を超える成果を出し、何でも言うことを聞いてくれるという特典を獲得できるかもしれない。ふふふっ!
…っと、そんなことを考えている場合ではない。修行も4週目に入り、今日からは第二魔法源の解放というものを行う修行らしい。どうやら、すべての魔導士には、本来使っている魔力の器の他にもう一つ、眠っている魔力の器があるらしい。もしそれを引き出すことができれば、より多くの魔力を扱えるようになり、強力な魔法も使えるのだとか。だが、そんな夢のよな話にはデメリットが存在するのは当たり前で、そのデメリットとはいわゆる痛みだそうだ。アレンが言うには、その眠っている魔力の器に、アレンが無理やり魔力を注ぎ込み、こじ開ける。その際に多大な痛みを齎すらしいのだが、その痛みに耐えながら、こじ開けた2つ目の器に自分の魔力を注ぎ込み、第二魔法源を解放するという者であった。なんでも、修行の項目の中で最も苦痛を伴うほどのものらしい。だが、少しではあるものの、その痛みをアレンが抑えながらやってくれるそうだ。本当に優しい男だ。
「んじゃ、始めるぜ。痛みを伴う修行だ。覚悟はいいか?ウル」
「ああ、もちろんだ。始めてくれ」
アレンが私の両肩に手を添える。…アレンの手の、魔力の感触…とても心地いい。私の中にアレンの魔力が流れ込んでくる。私の身体が、アレンの魔力に支配されているような気分だ…。こ、これは実質…、と邪な感情を抱いていたのだが、そんあ心地よさも一瞬で消え去るほどの痛みが私を襲う。
「うっ!ぐううっ!!」
「よし、第二魔法源を発見した。痛いだろうが、耐えるんだ。耐えたうえで感じ取れ。そして魔力を注げ!ぐっ!」
アレンも痛がっている…。私が本体感じる痛みを抑えるため、アレンが肩代りをしてくれている…。それだけで私は頑張れる気がした。
「ぐうううう!!」
「っく!」
確かにこれは辛い…。それも第二魔法源を自らの物とするまで続く。もしこれが一瞬、数秒であれば耐えられるであろう。だが、これが続くと考えると…。いや、ダメだ。思い出せ、アレンと一緒に戦えなかった時の感情を。アレンを失った思ったときに感じた絶望を。必ず、我がものにしてやる。そうして、私は痛みとの長い戦いを始めた。今度は一緒に戦えるだけの力を身に着けるために。

ウルティアside
修行29日目。この修行もようやく佳境を迎えようとしていた。正直、先週の修行は身体的にも精神的にも辛いものがあった。だが、アレンの思いと自分の思い、それをバネに何とか修行をやり通し、第二魔法源を解放することに成功した。そして、5週目の開始日である今日。今日から1週間は魔法力の向上という、より実践的な修行となる。
「さて、確か、ウルティアの魔法は氷の造形魔法と時のアークだよな?」
「ええ、そうよ」
私は胸を張り、自信満々に答えた。私は母のウルから氷の造形魔法を、今となっては黒歴史ではあるがハデスの元で時のアークを習得していた。氷の造形魔法は弟弟子のような存在であるリオンやグレイにも引けを取らない上に、物質の時間を操れる時のアークもある。正直、エルザやミラなどにも負けない戦闘力を有している自信がある。加えて、今日までの修行における基本的な身体能力と魔力の上昇。自分でも強くなっているのがわかる。
「今日から1週間、ウルティアには2つのことをしてもらう。1つは第二魔法源から魔力を自在に取り出せるようにすること。もう一つは、第一魔法源と第二魔法源の魔力を均一に混ぜ合わせたうえで、魔法を発動することだ」
「前者はわかるんだけど、後者のそれは、魔法力が上がるものなの?」
「ああ。どちらも自分の魔力ということに変わりはないのだが、第一魔法源は表面能力…まあ、魔道士であれば無意識に扱えるもので、第二魔法源は潜在能力と称されることが多いんだ。だから、魔力の性質が少し異なるんだ」
「うーん、いまいちピンとこないわね…」
私は聞きなれない言葉と説明に頭を悩ませる。これまでも難しい説明は多々あったので別に初めてではないのだが…。
「極端に言うと、第一魔法源と第二魔法源をうまく合わせて魔法を発動すると、消費魔力は同じでも、『1+1=2』、ではなくて『1+1=3』になるよってイメージだな』
「えっ!それってすごいことじゃない!!」
私はアレンのわかりやすい説明に、思わず驚きを隠せなかった。
「ああ、だが、その前に第二魔法源の魔力を自分の意思で扱えるようにならないとな」
「ええ、わかってるわ」
アレンはその都度適切にアドバイスをくれた。自身の中に第二魔法源の、性質の異なるもう一つの魔力を感じ取り、それを練り上げるように混ぜ合わせる。
「…口で言うのは簡単だけど、これは…」
余りの難しさに、私は悪態をつく。
「ああ、お世辞にも簡単とは言えない。だが、繰り返し行うことが大切だ!」
アレンの言葉通り、私は何度も何度も試行錯誤を繰り返し、修行に臨んだ。

ウェンディside
修行36日目。ようやく修業期間も残り1週間。修行開始前に、「滅竜魔導士は問答無用でハード」といわれた時は、恐怖と不安で押しつぶされそうだったけど、厳しいながらも時に優しく声を掛けてくれるアレンさんのおかげで頑張ることができている。私にも第二魔法源の解放に加え、種類の違う2種類の魔力を練り合わせることができた。最初はよくわからなかったけど、実際にそれをもって魔法を使ってみると、明らかに威力が上がっていて本当に驚いた。シャルルにも、私が強くなっているのが目に見えてわかるらしく、最初はアレンさんに冷たい様子のシャルルだったけど、少しずつアレンさんを認めている様子がわかった。
「さて、今日からは強力な魔法を習得しようってことなんだが、確かポーリュシカさんから預かってるものがあるんだって?」
「あっ!はい!!これです…」
私は、グランディーネがポーリュシカさんに預けていた魔導書を受け取り、中を見る。
「…んー、なるほど…こりゃ中々に強力な魔法だな…そして習得も難しい…」
アレンさんは私から預かった魔導書を見ながら、呟くように言った。私でもまだすべてを読み解けていないのに、アレンさんは一度見て読んだけで理解したようだ。やっぱりアレンさんはすごい人だ。
「でも、それは修行する前の話…」
「え?」
私はアレンさんの言葉に疑問を投げた。それはつまり…。
「今のウェンディなら、習得できるはずだ」
「ほ、本当ですかっ!」
私はとても嬉しくて、大きな声で返事をした。アレンさんは魔導書に書かれた魔法を丁寧にかみ砕いて説明してくれた。魔法の名前や威力、効果…とても優しく、時折「わかるかな?」と本当に丁寧に教えてくれる。なんだか、エルザさんたちがアレンさんに惹かれる理由が少しわかった気がする。私も、少しアレンさんのことが…。でもそんな風にして説明を終えると、アレンさんが申し訳なさそうに声を発した。
「だけど、俺に滅竜魔法は使えないから、明確なアドバイスはできない。それは先に謝らせてくれ」
「そ、そんな、謝るだなんて…。アレンさんがいなかったら、私はここまで強くなれませんでした」
先週の修行で、2種類の魔力を混ぜて魔法力を高めたことで、天竜の咆哮、翼撃、鉤爪、砕牙の4つの滅竜魔法を完璧に近い形にすることができたのだ。
「そうよ。私の目から見ても、ウェンディの成長は著しいわ。正直、アレンの教え方がうますぎると思うくらいよ」
「シャルル…っ!」
シャルルがここまで他人を、それもまだあって間もない人を褒めちぎるなど、初めてであった。
「そういってくれると、助かるよ。でも、似たような魔法を見せ、イメージを掴ませることはできる」
「ん?似たような魔法ってウェンディの魔法に似てるってこと?」
シャルルはアレンさんの言葉に首を傾げていた。
「まあ、似たような魔法って言っても風の魔法だけどね」
「アレンさん、風の魔法を使えるんですね!すごいですっ!!」
「ほんと、なんでもありねっ!」
私はアレンさんが剣術含め、影分身以外にも魔法が使えたことに驚いた。シャルルは少し呆れたような様子だったけど、すごすぎて呆れる、といった印象を受けた。
「んじゃ、ちょっとやって見せるから離れてくれ」
アレンさんの言葉を受け、私とシャルルは少し離れた位置に移動する。すると、アレンさんは何やら高速で両手を使っていろんな形に指を絡ませていた。そして、口で大きく息を吸い込み、一気に息を吐き出すように口を開いた。
「風遁・突破!」
その瞬間、アレンさんの前方に強大な風が吹き荒れ、暴風が辺りを巻き込みながら突き進んでいった。そして、アレンさんの前方は、地面が剥き出しになり、いくつものひび割れが起きていた。それは、どれほどの威力、暴風であったかを物語っている。修行を終えて力が増した私の、天竜の咆哮を超える威力があることが瞬時に分かった。
「「……っ!」」
私は驚きで言葉がでなかった。横にいるシャルルも同じように口をあんぐりと開けて驚いている。
「と、まあこんな感じで…ん?どうした?」
アレンさんは固まっている私たちを心配そうに見つめている。
「ど、どうしたじゃないわよ…あんた、こんなすごい風の魔法使えたの?」
「ああ、そういえば、人に見せるのは初めてだったかも…剣振る方が威力出るし、あんまり使いどころなくてさ…はは」
「…剣の方が強いって…どういう身体構造してるのよ…」
シャルルは、呆然としながらしゃべっている。
「っすごいです!本当に!」
私は感情を隠さず、ありのままに言葉を発した。
「ありがとう、ウェンディ…。でも君には今見せたような風を起こして回転させるだけじゃなく、イメージとしては風の壁と、加えて風の波動を形成しなくちゃならない」
「っ!はい!それが、滅竜奥儀の一つ、【照破・天空穿】の習得に必要ということですよね!」
私は、アレンさんの言葉に握りこぶしを作って、やる気を見せる。
「よし!それじゃあ、一つひとつ、確実にイメージをつかむところから始めようか!」
「はいっ!!お願いします!!」
あと1週間、私は全力でアレンさんとの修行を頑張ろうと、魔力を込めてイメージを膨らませながら魔法を発動した。

アレン完全指導の下行われた、1か月半にも及ぶ修行が幕を閉じた。それぞれの難度の違いによる辛さや到達点は違えども、ただの一人も途中での脱落者がいなかったことにアレンは心から称賛を口にした。たった1か月半とはいえ、皆の顔には成長の様子が見られ、もちろん魔力や魔法、魔導士としての成長も垣間見れた。自身が強くなっているということは、それぞれ自分自身が一番よく分かっている。それが自信としても顔に現れていた。
さて、そんな修行終了の翌日…メンバーは再度酒場に集まっていた。
「さて、皆1か月半、本当にお疲れ様。皆それぞれ著しい成長を見せてくれた」
アレンは笑顔で皆に言葉を掛けた。
「何言ってんだ。アレンの教え方がうまかったからだよ!」
「ああ、その通りだ。まさか、魔法があれほど精査で奥深いものだとはな」
「今まで特に深く考えずに魔法を使っていた自分が恥ずかしいくらいです」
ナツ、エルザ、ジュビアが、感謝を添えながら言葉を返す。他の参加者も皆、アレンに各々の気持ちを伝えており、酒場は大きな盛り上がりを見せていた。
「皆が頑張ったから、強くなったんだ。そこは自信を持ってくれ。そして、そんな中でも、俺の予想をはるかに超え、力をつけたものが…2人いた。最初は1人だけ選ぼうと思ったんだが、さすがに選べなくてな…今回は2人を選抜することにした!」
アレンの言葉に、更なる盛り上がりを見せた。
「おおっ!2人もいるのか!!一人は俺としてー、あと一人は誰だ!!」
「おめーが選ばれるわけねーだろっ!ナツ!!」
「なんだとー!!やんのかグレイ!!」
「やめんか!アレンの声が聞こえんだろう!!」
ナツとグレイの喧嘩に、エルザが鉄拳を振り下ろす。
「…さて、まずは1人目…」
皆固唾をのんで見守る。
「…ウルティアだ!!」
「あ、あたし…!!」
フェアリーテイルの酒場は大歓声に包まれた。
「すごいじゃない!ウルティア!さすがは私の娘だ!!」
「あ、ありがとう、母さん…でも本当に?」
ウルティアはウルの言葉に答えながら、アレンに聞き返す。
「ああ、本当だ。ウルティア、お前は時のアークの魔法を…覚醒させるに至ったからだ。覚醒した時のアークで、任意で少し先の未来を見ることができるようになった。それが選出の理由だ」
アレンの言葉に、ギルド内が大きく揺れた。
「み、未来を見れる⁉しかも任意で…本当かよ!」
「す、すごいな…」
「覚醒…させたのか…ウルティアが…」
ビックスロー、ジェラールが驚きの声を上げた。エルザも同じように驚きを見せるが、そこには少し悔しさも含まれていた。ハデス戦でアレンが見せた魔法の覚醒。それと同じものをウルティアがやって見せたのだ。
「…ウルティア。修行最終日、俺の分身と最後に手合わせをしたのを覚えているな?」
「ええ、覚えているわ…」
ウルティアは思い出すように口を開いた。
「俺は、分身体とは言え、ウルティアを本気で攻撃した。それこそスピードもパワーもだ。だが、俺はただの一撃もウルティアに攻撃を当てることができなかった」
その言葉に、皆の顔に驚愕の表情が生まれる。いくら分身体とは言え、アレンの本気の攻撃をすべて躱し、ただの一撃も喰らうことがなかったなど、到底信じられなかった。
「ま、まじかよ…アレンが…一回も攻撃を当てられなかったのか…」
「……まじか…」
リオンとラクサスが、驚きながらウルティアを見つめる。
「もしあの時、同時に…時のアークで未来を見ながら、氷の造形魔法で俺を攻撃できれば、分身体の俺を倒せていた。しかも、傷一つ負わずに…な。同時発動はこれからの目標というか課題だな」
分身体とは言え、アレンを倒せるかもしれない…。しかも自身は傷つかずに…。その言葉に、その場にいる殆どの者がアレンの分身体にただの一撃も与えられなかったものにとっては、衝撃の言葉だった。
「とまあ、一人目がウルティアであるのはこれらが理由だ。そして、2人目だが…それは…」
先の驚きがまだ皆の中に渦巻く中、2人目の発表が為されようとしていた。
「…ジュビアだ!」
「わ、わたくし…!!」
アレンの言葉に、酒場に再度歓声が上がる。
「す、すげーじゃねーか!!ジュビア!!」
「かあーー!!俺じゃねーのかよ!!」
グレイとナツがそれぞれ声を張り上げる。
「グ、グレイ様…私は、やったのですね!!」
グレイに正面切って褒められ、ジュビアはとても嬉しそうにしていた。
「理由は…ジュビアが一番わかってると思うが…」
「…はい」
アレンの言葉に、ジュビアは少し引け目を感じながら言葉を発した。その理由を知りたいと、皆がアレンの言葉を今か今かと待っていた。
「…単純に、俺の分身体を倒しやがった…」
その言葉に、酒場が一瞬凍り付く。ジュビアは、少し恥ずかしそうにウネウネと身体を動かしていた。
「「「「「「「「「「えーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」」
アレンを倒した。それは、その場にいるものに驚きを与えるのに、そう難しいことではなかった。
「ア…アレンを、倒したのか!」
「私でも倒せなかったのに…」
ジェラールとカグラは困惑し、声を上げた。
最終日の分身体との手合わせは、初日同様、皆が行っていた。だからこそ、その凄さが身にしみてわかったのだ。
「魔法力の、特に攻撃力に関しては、ジュビアがこの中で一番成長した。いやー、まさか負けるとは思ってなくて、ジュビア用の分身体が倒されて消えた瞬間、正直度肝を抜かれたよ」
「驚きで発狂しておりましたね」
ミノトがその時のアレンの様子を淡々と話す。アレンは、ははっと笑って見せるが、皆の表情には、驚きしか浮かんでいない。
「で、でも…私が倒せたのは分身体ですし、それにギリギリでしたから、あれを勝利と呼ぶのは…」
ジュビアが自身の思いを釈明するが、それは皆の驚きの声と称賛でかき消される。
「かんけーねー!あのアレンを倒したんだ!すげーじゃねーか!!」
「尊敬するぞ、ジュビア!」
「本当にすごい!」
ナツ、リオン、リサーナがジュビアの近くに生き、声を掛ける。ジュビアは照れくさそうにしていた。
「これは余談なんだが、他にもラクサスとミラ、エルザは俺の分身体を倒してるぞ!」
その言葉を聞いて、ラクサスは「ふんっ」と目をそらし、ミラは「えへへ」と笑いながらピースをしていた。
「おお、さすがラクサスだ!!」
「姉ちゃんも倒したのか!!お、漢ー!」
「違うでしょうが!」
フリードはラクサスにすり寄りながら、エルフマンは興奮したようにミラに声を掛けた。
「さて、2名を選抜して発表したが、選ばれなかったからと言ってダメというわけではない。皆それぞれに成長を見せてくれた!」
アレンの言葉に、皆が抱き合ったり、ハイタッチをしたりして、喜びを分かりあっていた。
そうして、アレンが思い出したかのように言葉を発する。
「あ、そうだ。約束通り、ウルティアとジュビアに関しては、俺がなんでも一つだけ言うこと聞いてやるからな」
その言葉に、ギルドの皆が「はっ!」と反応する。特に、一部女性陣から睨むような視線が2人に突き刺さる。
「ふふっ、そうねー。アレンになにしてもらおうかしらー♪」
ウルティアはそんな女性陣に向け、挑発するような目線を向ける。
「お、おい。ウルティア、あまりアレンを困らせるようなことをお願いするな…」
「あら、カグラ。それを決めるのはアレンよー、あなたじゃないわっ」
ウルティアは何かを含んだような笑みを浮かべ、カグラに笑いかける。
「ジュ、ジュビアは…グ、グレ…」
ジュビアに関しては、完全に一人妄想の世界に入り込み、両手で頬を隠すようにして顔を真っ赤にしていた。
相も変わらず、騒がしいギルドであったが、ここに、1か月半にも及んだフェアリーテイル修行期間が終わりを迎えた。
…そして、この修行が、後にギルドメンバー全員の命を救うことになるとは、アレン含めみな、夢にも思わなかったのであるが、それはもう少し先の話…。
 
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