フェアリーテイルに最強のハンターがきたようです
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第2章 天狼島編
第8話 おかえり
「……………ン…」
響くような声が聞こえる。
「…………レン!」
それは止めどなく、どこか心地よいテンポで響き渡る。
「……い…レン!」
漆黒だった視界に、淡い光が差し込んでくる。
「お…い…レン!」
静かに目を見開くと、そこには涙を浮かべた女性たちが、顔を覗き込むようにしているのが見て取れた。
「おい!アレン!」
「ん……エルザ…カグラ…ウルティア…?」
アレンは合わぬ焦点を合わせるように、何度か瞬きをする。だが、いざ焦点があったとき、3人の顔は見えなかった。アレンの胸元や腹に手と顔を埋め、大泣きしていたからだ。
「どうしたんだ…そんなに泣いて…」
そんなアレンの言葉を聞いて、3人は顔をあげ、涙が残る顔でアレンをキッと睨んだ。
「あ、あたりまえだろう…」
「や、やっと会えたのに…」
「死んでしまったのかと…」
エルザ、ウルティア、カグラはそれぞれ意図せずに言葉をつなげていた。
「……すまん」
アレンは一言だけ呟いた。
「「「…許さん」」」
「…え?」
アレンは驚いた。
「「「…馬鹿っ…」」」
3人は再びアレンの身体に身体を埋めた。それに、応える素振りを見せたアレンだったが、身体がうまくいうことを聞かないことに気付き、そのままにすることにした。
しばらくすると、遠くから泣き声のようなものが聞こえた。
それに反応するように、3人はアレンの身体から顔をあげ、アレンも含め、他のメンバーも、その方向へと目線を移す。
何やら、小さい青と黒と白がこちらに向かって走ってくる。
アレンは、ん?といった表情でそれら見つめた。
「みんなー!」
「助けてーナツー」
シャルルとハッピーであった。しかし、そう、アレンはその存在を知らなかったのである。
「なっ…ね、猫が二足歩行で走ってしゃべってるぞ!」
その叫びを聞いて、近くにいたエルザとカグラ、ウルティアは、アレンがハッピーたちの存在を知らないことに気付いた。簡単に、アレンに説明を始める。
そんな叫びを聞いたハッピーは、
「うわっー!知らない血まみれの人がいるー!」
と叫んだあと、はっと何か気付いたような顔をする。キランっとハッピーの眼に輝きが生まれる。
「そうか!お前がハデスってやつだな!こっのー!」
と言って、アレンの顔めがけてドロップキックをかます。
身体を動かせないアレンは「ぐはっ!」と言ってハッピーの蹴りを甘んじて受けたのだが、
「「「何をするか!ハッピー!!」」」
と言って、エルザ、カグラ、ウルティアの拳がハッピーの顔面に炸裂する。
「ぷぎゅー…」とハッピーが地面にめり込むと、ナツが「おい、ハッピーに何するんだ!」と3人に詰め寄るが、3人の睨む気迫にやられ、「あ、すみませんでした」と平謝りして、ハッピーの尻尾を引きずって回収する。そんなコントのようなことを繰り広げていると、ハッピーたちが泣いて走ってきた元凶が現れる。
ハッピーたちの後ろから、悪魔の心臓の残党が押し寄せてきたのだ。
「くそっまずいぞ…」
「まだ、魔力が…」
グレイとリオンが呟く。
「くっ…まだ残ってやがったのか…」
とアレンが何とか身体を起こし、戦おうとしたが…。
「「「あんたはおとなしくしてる!」」」
と3人に押さえつけられる。
「…あっっいっ…て…っ…」
アレンは、突然押さえつけられたことで、背中に激痛が走り、呻き声漏らす。
それを聞いた3人は、はっとしてアレンをいたわる。
「す、すまん」
「ごめんね、大丈夫?」
「咄嗟で…」
エルザ、ウルティア、カグラは心配そうに覗き込む。
アレンは何とか起き上がろうとしたその体力を3人の追い打ちにより完全にそがれ、
「っ…そんなことより、ちょっとまずくないか…」
と、悪魔の心臓の残党集団を見守ることしかできなかった。
そんな風に警戒していたのだが……。
「そこまでじゃ!!」
大きな声が響き渡った。皆がその声の方へと顔を向ける。
そこには、マカロフと、簡易キャンプにいたメンバーが立っていた。
「じっちゃん!」
「みんな…」
ナツとルーシィが嬉しそうに声をあげた。
「なっ、ふ、増えた!」
「あ、あれはマカロフか!?」
「て、てか、あそこを見ろ!」
悪魔の心臓の残党が次々と声をあげる。
「マスターハデスが倒れてる!?」
そんな風に残党どもが驚いていると、
「今すぐ、この島から出ていけ!!」
マカロフが威厳のある声で残党たちに吠える。
すると、残党たちは、「すみませんでしたー」と言って、一目散にその場を離れていった。
そんな様子を見て、皆は嬉しそうに喜んでいた。
まるで、宴のような歓声に、アレンは本当に帰ってきたんだな…と実感した。
そんな風に考えていると、マカロフが歩み寄ってきた。
「マスター…」
「…アレン…よくぞ、無事でいてくれた…」
アレンはその言葉をかみしめるようにして受け止めた。
「約束だったろ?何があっても…」
「アレーーーーーーーーーン!!!!!!!!!」
しかし、マスターとアレンの感慨深い再開は、あるものによって遮られることになる。
その声の主は、アレンの周りにいた3人の女性を押しのけ、思いっきりアレンに抱き着いた。
「がっ…あっ…」
ケガを負っている背中を思いっきり触られ、アレンは痛みにのたうち回る。
「アァーレン!ガァーレン!バァレーン!!!!!私信じてたよー!!絶対に生きてるって!信じてたー――!!!」
「ミ、ミラか!!」
アレンは、自分が知っているミラジェーンとは少し、いや、大分違う様子に、驚いていた。
「そう!ミラジェーンだよー!どうしてこんなに帰ってくるの遅かったのよー-!私、私、もう心配で…うわぁーーーーーん!!!!!」
「お、おい、ミラ、今アレンはケガを負って…」
突き飛ばされたイライラと、アレンに思いっきり抱き着く姿を見た嫉妬心から、ミラを落ち着かせようと、エルザはミラに声を掛けるが、
スッ…。
アレンが手でその声を制止した姿を見て、エルザもはあ…といった感じで動きを止める。
「悪い、心配かけたな、ミラ…」
アレンはミラの頭を優しく撫でる。
「ほんとよ…もう…わたし…ほんとに…どうしようかと…」
そんなミラの様子を見て、カグラとウルティアは、顔を見合わせて笑いを漏らす。
少し遅れてきたカナも、アレンのケガの心配をしながら、嬉しそうにその様子を見ている。
遠目から見ていた、ソラノとユキノは、「アレンさん…」と呟く。だが、今は介入すべきではないと、声を掛けるのをやめた。
話を遮られたマカロフは、もう一人の人物の元へと歩み寄る。
ラクサスであった。
互いにどこか気まずい雰囲気であったが、マカロフが先に口を開いた。
「…よくぞ、戻って、きた…」
暫くの沈黙が流れる。ラクサスは特にそれに答えようとはしなかった。次の瞬間そんな、なんか、なんとなく哀愁漂う雰囲気は、ぶち壊されることになる。
「なーんて言うとでも思ったか!馬鹿垂れめ!!破門中の身でありながら、この天狼島に足を踏み入れるなどー!!!」
「うるせーじじいだなぁー」
マカロフの激高に、どこかうんざりしたようにラクサスが答える。
「まあまあ、マスター、落ち着いて」
「顔でか…」
レヴィがマカロフを宥め、リリーが怒った拍子に顔だけ大きくなってしまったマカロフに軽い突っ込みを入れる。
「だーっはっはっはっは!!!なんだよ、ラクサス!!お前、破門されたのかよ!!一体何やらかしたんだよー!はっはっは…って、うお、やべっ、傷口が…!」
「ほんっっと、うっるせーなー…!」
アレンはミラに抱き着かれながら、ラクサスが破門されたことに大爆笑していたが、それが原因で背中の傷口が少し裂けてしまう。
そんなアレンの姿をみて、ラクサスはさらにだるそうにしていた。
「「「「なにしとんだ、お前はー!」」」」
「ぐへっ!」
大笑いして傷口が開いたアレンを、エルザ、カグラ、ウルティア、カナがどつく。
「だ、大丈夫、アレン!ちょっと!アレンはケガしてるのに!人ともひどいじゃない!」
ミラはアレンをどついた4人に怒る。
「い、いや、違うぞ、ミラ、アレンはな…」
エルザがミラに弁明しようとするが…
「聞いてくれよミラ、さっきもちょっと起き上がろうとしただけで、エルザ達が思いっきり地面にたたきつけてきたんだぜ…」
「まあ、なんてひどい…アレン、私はそんなひどいことしないから、安心してね!」
「おー、ミラは優しいなー…」
アレンは、なんだか性格が変わってしまったみたいに優しい雰囲気のミラに、少し面白くなって、味を占めていた。
――ゴゴゴゴゴゴッッ!!
エルザ、カグラ、ウルティアが、アレンに威圧を掛ける。カナもなんとなく睨みつける。
グレイ、ジェラールにリオンなどは、呆れた様子でそれを見ていた。
「い、いや、冗談だって…ただ、なんか、その、ミラの雰囲気が違うから、楽しくなっちゃって…」
アレンは4人に弁明するように声を掛ける。
「「「「ミラは4年前からこんな感じだー!」」」」
ギャー!!…というアレンの叫び声をBGMに、フリードとビックスロー、エバがラクサスの存在に気付く。
「ラ、ラクサス…」
フリードたちは、小刻みにプルプルと震えながら、ラクサスを見つめる。そして…
「「「ラクサース!!!」」」
3人は泣きながらラクサスに抱き着き、フリードに至っては頬をこすりつけていた。
「うざっ!」
そんな様子を見て、エルフマンが神妙な顔で口を開く。
「相変わらず厳しいな、マスターは…」
ラクサスの破門を、取り消すつもりのないマカロフの様子をみて、発した言葉であったが、アレンは全く違う風に捉えていた。
アレンはエルザ、カグラ、ウルティアから不貞腐れたような視線を受けつつ、ミラに抱擁されながら…
「そうだなー…何やらかしたかは知らねーが…破門『中』か…ふっ」
その言葉からは、いつかは解除する、と言っているようなものだと、アレンは思ったのだ。
「さーて、アレンも傷の方は大丈夫そうだし、試験の続きだー!」
「今からやるの?」
ナツの頓珍漢な言葉に、ハッピーも驚きを隠せない。
「あほか、お前は!そんなボロボロの身体で、どう戦うんだ!」
「あー?余裕だねー魔力なんかなくたって、全員ボコボコにしてやらー!」
「んだとー!」
「やんのかー!」
いつの間にか、ナツとガジルが喧嘩を始めていた。
「ちょ、ちょっと、ガジル、やめなよ」
それをレヴィがさりげなく宥める。
「とりあえず、キャンプまで戻りませんか?」
「少しは休まないと、身体が持たないわ」
ウェンディとシャルルが最もな提案をする。
と、同時にビックスローとフリードがラクサスを抱えて歩き出す。
「そうだな、キャンプに戻ろう。よし、アレン、私が担いでやるから、背中に乗れ」
エルザが膝を着き、アレンを背負うそぶりを見せる。
「なにいってんのよ、私が担ぐのよ、ほら、しっかりして、アレン」
ウルティアがエルザの提案に茶々を入れる。
ミラとカナ、カグラも私が!と言う前に、アレンが口を開いた。
「あー、7年ぶりだし、5人全員に支えてもらおうかな…」
そんなアレンの言葉に、5人は頬を赤らめて、「し、仕方ないな…」と言いながら、アレンを支えながら歩く。
「ふふっ…」
アレンが笑う。
「なんだ、何かおかしいか?」
カグラが口を開いた。
「いや、昔はよ、5人ともちっちゃくて可愛かったのに、まさか、支えて貰うくらい大きくなってて、ちょっと感慨深くてな…」
そんなアレンの言葉を聞いて、5人はさらに顔をぼっと赤らめる。
「だけどよ…」
アレンは途中で言葉を止める。
「だけど、何さ」
カナが先の言葉を聞こうとアレンを急かす。
「大きくなっても可愛いのな、みんな」
そういってアレンはニカッと笑った。アレンは、小さくても大きくても、自分の子どもみたいで可愛いという意味で言ったのだが、残念ながら、5人はそう捉えるはずもなく…。
プシュー――、とオーバーヒート状態となり、キャンプに戻るまで、一言もしゃべれず、一回もアレンの顔を見ることができなかった。
後書き
読んで頂き、ありがとうございます!
天狼島編以降、流れが原作から乖離すると思われます。
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