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白き竜の少年

作者:刃牙
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第1章 〜覚醒〜
  脅威‼︎

ハルマたち第6班が活動を開始してから約4ヶ月。最低ランクのDランクと演習で鍛錬を積む日々。今年最初の中忍試験の受験は見送られ、中忍試験の本選が木ノ葉で行われようとしている中、第6班の下忍たちは火の国北部にある日輪寺にやって来ていた。

「……ここが日輪寺でいいんだよな?ボロくね?」

広い敷地内だが、人はいない。庭や寺は綺麗に手入れがされている様子ではあるが、人が住んでいる気配はない。

しかし、それもその筈。日輪寺は10年以上前に未曾有の大災害によって日輪寺の僧侶たちは死亡し、壊滅的な被害を受けている。寺はその後再建されたが、今はかつての信者たちが参拝や墓参りに来るのみとなっているのだ。

「話に聞いてた通りだろ。それより墓の方はどうだ?」

ハルマの問いかけに白眼で墓地の様子を確認していたカナが答える。

「日輪寺の墓はまだ掘り起こされていないようだ」

これこそが3人が日輪寺に来た目的だ。近頃、火の国北部で頻発している墓荒らしを阻止し、犯人を捕らえる事。それが今回の任務である。

第6班にとっては初めてとなるCランク任務。しかし、その任務に担当上忍は別任務でいない。それでも3人は不安を抱えているわけではなかった。Cランク任務で想定される敵は盗賊などのチャクラで戦う術を持たない者たち。自分の力(・・・・)があれば大丈夫だと考えていた。

「そうか。ならここが次のターゲットになる可能性が高いと見て間違いないわけか」

「どうすんだ?交代で見張りにつくか?」

「いや。その必要はない」

ハルマは自信満々に言い切ると巻物を地面に置き、開封する。中身は円の中にそれぞれ犬、猫、鴉の文字が書かれた術式。右手親指を噛み流れた血を術式に塗り、印を結ぶ。

“口寄せの術‼︎"

現れたのは2匹の犬に2匹の猫、そして数を数えるのも億劫になるほどの鴉の大群だ。ハルマが口寄せ契約を結んでいる、特別な忍としての訓練を積んだ動物たちだ。

「口寄せ動物か……」

「墓の方で異常があればこいつらが知らせてくれる。オレたちは寺の中で待機だ」

彼らは寺の北側にある墓地に向かう。墓地で何か異常があれば鴉たちが教えてくれる。そして、3人はカナの案内で現場に向かうという算段だ。

「確かにこれなら広い墓地をカバー出来るな」

カナは納得がいったように頷くと寺院の中に入り、ハルマも続く。

「おい!オレにも分かるように説明しろよ‼︎」









夕と夜の狭間の黄昏時。日輪寺の墓地で宙に黒い歪が発生する。その中から現れたのは鍛え上げた肉体を持つ黒髪の男と口元の見える狐の面を被った白髪の女、そして蛇のような目をした長髪の男。

名は順にドウコ、マヤ、大蛇丸という。

「ここが日輪寺か……人がいないからか、少々薄気味悪いな」

「そうでもないわよ。昔から辛気臭かったもの……ここに埋葬されている忍僧や忍がいなかったら来たくもなかったわ」

辛辣な言葉を投げかけた大蛇丸をマヤは窘める。

「あら?風情があって良いじゃない。ここをゴール地点にする事は初めから決めていた事でしょう?」

「そうねぇ。ここに来ている子たちが血継限界持ちなら言う事はないのだけれど」

大蛇丸は蛇のように長い舌で舌舐めずりをする。

「あら?そうでなくても使い道はいくらでもあるんじゃない?」

「もう人材過多よ。捨て駒はいくらでもいるものねぇ」

大蛇丸の言葉に2人から笑いが溢れる。

「あら!優秀な子たちね!」

3人は自分たちを探っている気配に気付き、マヤが関心したように声を出す。下忍クラスではない。気配の消し方が非常に巧みであった。

やる気を見せたのは大蛇丸だった。

「ここは私がやるわ」

「じゃあ、私たちはDNAの採集をしてくるわね。分かっていると思うけど殺さないでよ?」

「それはあの子たち次第よ」

マヤとドウコが墓地の奥へと消える。



「いつまで隠れているのかしら?」

大蛇丸は印を結び、術を発動する。

「(風遁大突破‼︎)」

強烈な突風が大蛇丸の口から放たれる。風は辺り一帯の墓石を破壊するほどの威力を発揮し、隠れていたハルマらの姿が晒される。

「マジかよ……」

あまりの威力にレツは呆然とした様子で呟く。

「分かってるな?気を抜いたら死ぬぞ……‼︎」

ハルマは写輪眼を、カナは白眼を発動させた。

「よく分かっているじゃない……‼︎」

瞬間3人は首にクナイが刺さり、なす術もなく殺されるイメージが頭を過ぎる。幻術ではない、ただの殺気。否応なく実力差を思い知らされる。

尤もそれで怖気付くような3人ではなかった。レツが弓を引く所作を取る。炎が弓矢を模り、矢が放たれる。

「(火遁変化・焔の矢(ほむらのや)‼︎」

跳躍する事で難なく躱されたがそれは織り込み済み。カナの掌底から放たれる衝撃波が大蛇丸を襲う。

「(八卦空掌‼︎)」

「中々いい攻撃だけど、惜しかったわね……‼︎」

大蛇丸は八卦空掌を交差した腕で受け止めた。刹那、大蛇丸の背後から聞こえたのはチッチッチッチッと鳴り響く独特な音。聞こえた次の瞬間にはハルマの左腕が大蛇丸の胸を貫いていた。

「(千鳥‼︎)」

「(手ごたえがない……⁉︎)」

しかし、貫いたと思った大蛇丸の体は無数の蛇に姿を変える。噛み付いてきた蛇を振り解き、周囲を見渡す。

「変わり身か……‼︎」

変わり身の術は動物や植物と己の身を入れ替える術。しかし、ここに隠れる場所はない。ならば大蛇丸はどこにいるのか。その戸惑いが彼らの動きを止めた。

「まだまだ甘いわね‼︎」

カナとレツの足元の土を突き破り現れた大蛇丸。驚く暇もなく、2人の首筋に手刀を当てる。力なく倒れた2人に目をやる事なく、ハルマを見つめる。

「流石はイタチの弟(・・・・・)といったところかしら」

とんだ勘違いをしている事に気付き、ハルマはフッと笑みをこぼす。クナイを構え、大蛇丸の動きに神経を尖らせる。ろくろ首のように首を伸ばしてきた大蛇丸の動きも見えている。これを躱してクナイで切り裂く。そのイメージが頭の中で固まる。それを実行しようとチャクラを足元に込めた次の瞬間、ハルマの手からクナイが落ちる。

「(……力が抜ける……⁉︎)」

チャクラを練り込めず、首筋に噛み付かれた。激しい熱さと痛みがハルマを襲う。

「ぐっ!がぁあっ⁉︎」

異物が入り込む感覚。首筋だけでなく、下腹部が焼けるように痛む。

首筋から口を離した大蛇丸は首を体の元へと戻そうとする。しかし、首をハルマの手が掴む。

「気安く入り込むな……‼︎ 下郎」

縦に裂けた黄色い瞳孔が大蛇丸を睨み付ける。

「なっ……⁉︎」

大蛇丸の首を投げ、後方に吹き飛ばす。

「私とした事が……とんだ勘違いをしていたようねぇ‼︎」

「ハルマ君……いいえ。白竜かしら?」

不愉快そうに首筋に触れる。三つ巴の印。大蛇丸がつけた天の呪印と呼ばれるものだ。

それに適応しようとハルマは意識を手放し、代わりにハルマの中に封印されている白竜の意識が表出した。敵も味方も関係ない。考えうる中で最悪の展開。

「妾の宿主に気持ち悪いマーキングをしおって。財布にするぞ」

ハルマの体を白いチャクラの衣が覆い、顔や腕には竜の鱗に似たものが浮き出る。

「あら、酷いわね。ただのプレゼントよ」

「まあよい。妾の宿主に唾つけてくれた礼をしなくてはな」

幾つもの氷柱が大蛇丸に襲い掛かる。蛇のように柔らかい肉体を駆使し、躱していたが、氷柱を自在に操る白竜の追撃を躱す事は不可能。瞬く間に大蛇丸を捕らえる事に成功する。

「(封印された状態でこれだけのチャクラ量……‼︎) バケモノめ‼︎」

「お主も大概であろう」

氷柱が大蛇丸を押し潰しにかかる。だが、今の状態は呪印によって僅かな時間、肉体の主導権が変わっただけ。小刻みに震える手から限界が近い事を悟る。

押し潰すのをやめ、チャクラの衣を伸ばしてカナとレツを回収する。

「あら?終わりかしら」

「案ずるな。また会う時があればしっかりと剥いでやるわ」

「それは御免被るわね」

「(水遁・爆水衝波‼︎)」

口から吐き出した大量の水が辺り一面を覆う。氷で身動きを取れない大蛇丸が水の中で苦しそうにしている事を満足気に見つめ、その場を離脱する。

溺死まっしぐらの大蛇丸を助けたのはマヤが放った風遁だった。

「遅かったわね」

「助けてあげたのに礼もなし?」

「あの中にいたのか……? 白竜の人柱力が‼︎」

興奮した声音でドウコが話す。血走った目が空を見つめる。

「そうみたいね。こんな事なら残ってたら良かったかしら」

対照的にマヤは軽い声で笑っている。

「マヤ……準備をするように伝えろ…‼︎」

「まずは白竜を狩る‼︎」 
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