イベリス
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第五十七話 梅雨だからその十一
「それが宿らないよ」
「それが作品なんですね」
「僕が思うにね」
「だから絶対にですね」
「作者さんの義務としてね」
「完結させることですか」
「だから」
部長はさらに話した。
「ハンターハンターはね」
「あれ終わりますかね」
「終わって欲しいね」
部長は心から思って言った。
「何とかね」
「終わって欲しいですか」
「書かないから」
この作品の作者はというのだ。
「昔は違ったけれど」
「昔はちゃんと週刊連載してたんですね」
「最初の作品はあまり長く続かなくて」
そうしてというのだ。
「結構お色気路線だったんだ」
「最初はそうだったんですか」
「それが次の作品が大ヒットしたけれど」
「ああ、あの作品ですね」
「妖怪格闘漫画だね」
「そう言っていいですね」
「あの作品も最初は幽霊探偵ものみたいだったんだ」
最初の作風はそうであったというのだ。
「それが格闘ものになって」
「それで、ですか」
「相当ストレスだったらしくて」
「そこからですか」
「この作品の連載は終わったけれど」
完結させたがというのだ。
「そこから変わったみたいだね」
「描かなくなったんですね」
「そうなってね」
「それで今もですね」
「もう滅多にね」
一年の間に十週位しかというのだ。
「描かなくなったんだ」
「そんな事情があったんですね」
「そうだよ、けれどね」
「部長さんとしてはですね」
「描いて欲しいよ」
心から思って言うのだった。
「ずっとね、それでね」
「終わって欲しいですか」
「完結させるつもりらしいけれど」
作者自身はそう言っているという。
「本気で終わらせたいならね」
「もっと描いて欲しいですね」
「つくづく思うよ」
心からというのだ。
「僕は」
「そうですか」
「全く。どうしたものかな」
部長は口をへの字にさせて言った。
「あの人は」
「完結しない可能性あるわよ」
副部長は言った。
「あの作品は」
「やっぱりあるよね」
「あんな調子だとね」
それこそというのだ。
「それもね」
「覚悟しておいた方がいいね」
「もう描かなくてもいいし」
漫画をというのだ。
「それだけのお金があるし」
「尚更だね」
「相当編集部と揉めたらしいし」
「それで嫌になってるとは聞いてるよ」
「そうした事情もあるしね」
だからだというのだ。
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