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イベリス

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第五十話 たい焼きとカラオケその三

「熱気や寒気が籠って狭い場所に百万も人いるから」
「その盆地に」
「人口密度は東京より少ないと思うけれど」
「東京はまた多過ぎね」
「ええ、世界中から人が集まってるから」
 それだけにというのだ。
「もうね」
「人口密度は相当ね」
「京都よりも多いと思うけれど」 
 それでもというのだ。
「京都はその地形があるから」
「暑いのね」
「そして寒いから」
「暮らすにはなの」
「私はお勧めしないわ」
「そうなのね」
「それなら夏暑くても大阪がいいでしょ」
 この街の方がというのだ。
「まだね」
「そうなのね」
「ええ、ただ私達は東京にいるから」
「この街の方がなのね」
「いいかもね」
 こう言うのだった。
「気候的には」
「それでなのね」
「そう、やっぱりね」
「そうなるのね」
「ええ、それで東京の夏に合わせて」
 そうしてというのだ。
「暮らしていくべきだけれど暑いことは暑くて」
「実際暑くなってきてるから」
「だからね」
 その為にというのだ。
「ここはね」
「お茶飲むのね」
「紅茶ね」
「甘いものには飲みものでね」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「紅茶よ」
「ここはそうね」
「そう、そしてね」
 それでというのだ。
「水分もよ」
「補給ね」
「脱水症状、熱中症にもなるし」 
 愛はこのことは真剣に話した。
「おまけにね」
「おまけに?」
「脳梗塞にもなるからね」
「脳梗塞って」 
 そう言われてだ、咲は愛に怪訝な顔になって返した。彼女にとってはどうにも想像出来ない話であったからだ。
「あの、それは」
「ないって思うでしょ」
「ちょっと以上にね」
「お年寄りがなるって思ってるわね」
「違うの?」
「若くてもなるわよ」
「十代でもなの」
 従姉に聞き返した。
「なるの」
「ええ、二十歳になってすぐになった人いるのよ」
「そうなの」
「そうよ、四十代からが確かに多いけれどね」
「確か上杉謙信さんが」
 咲は読書の中で得た知識を出した。
「そうだったのよね」
「あの人脳出血だったって話もあるわね」
「そこは諸説あるのね」
「けれど脳梗塞でもね」
 この症状でもというのだ。
「おかしくないわね」
「やっぱりそうなのね」
「あの人は毎晩大酒飲んでいたから」
 それが趣味であったのだ。 
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