いいバイト先と思っていたら

　　　　　　　　　　　　　　　　いいバイト先と思っていたら
　黒木真理の姉茉祐は才色兼備で知られている、黒く太めの一直線の眉にツヤのある長い黒髪に高い鼻と色白のホームベース型の顔に大きな蒲鉾型の黒目がちの目を持っている。背は一五九程で長い脚が印象的なすらりとしたスタイルである。有名大学の法学部に通っている。
　その彼女が家で真理に笑顔で話していた。
「八条ホテルのレストランにね」
「アルバイトで入るの？」
「採用決まったのよ」
　自分に似ているがややふっくらとしていて背は四センチ位低い妹に話した。脚も妹の方が短い。髪型は大体同じである。
「バイト代いいしね、あそこ」
「しかもあそこのホテルって」
「設備凄いし奇麗でね」
「そんなところで働けるのね」
「しかも制服いいし」
　茉祐は妹にこのことも話した。
「おまけにご飯も出るのよ」
「賄いね」
「そのレストランのね」
「いいこと尽くめね」
「だから嬉しいわ、それで真理もよかったら」
　妹ににこにことして話した。
「来てね、それとね」
「それと？」
「ホテルの喫茶店のウェイトレスさんも募集してるから」
「私もなの」
「どう？」
　大学に入ったばかりの一つ下の妹に話した、実は同じ大学だが妹は文学部に通っているのでそこが違うのだ。
「そうする？」
「ううん、じゃあね」
「ええ、あそこも制服あるしね」
「その制服もいいのね」
「アルバイト代もいいから。ただまかないはね」　
　これはというと。
「流石にね」
「レストランとは違うわね」
「ええ、そこは残念だけれど」
「そうさせてもらうわね」
　妹は姉の言葉に頷き自分も八条ホテル二人の住んでいる街にあるそこに行ってだった。
　面接を受け書類も書いて出してだった。
　喫茶店のウエイトレスとなった、こうして姉妹でホテルでアルバイトをはじめたが。
　最初毎日満面の笑みで働いていた姉がだった、徐々に暗い顔になっていった。それで真理は家で姉に尋ねた。両親と一緒に実家暮らしである。
「暗くない？最近」
「そう見える？」
「ええ、アルバイトに行く前と後ね」
　こう姉に言った。
「あんなにいいバイト先って言ってたのに」
「バイト代よくて奇麗で制服もよくてね」
「まかないも出てって」
「しかもそのまかないがね」
「あそこのレストランミシェランの星じゃない」
「ええ、だから滅茶苦茶美味しいのよ」
　姉は妹に答えた。