ドリトル先生とめでたい幽霊
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第十一幕その六
「けれどね」
「当時はそうじゃなくて」
「織田作さんはそれを使ってまで書いていた」
「そうだったのね」
「そこまでして書いていたんだ」
「作家さんの執念だけれど」
先生歯悲しい目になって言いました。
「悲しいね」
「そうだね」
「そこまでして書くなんて」
「本当にね」
「けれどね、亡くなってね」
それからというのです。
「織田作さんの魂は大阪にね」
「ずっとあるんだね」
「そこまでして書いて」
「大阪を愛していて」
「大阪の人達を」
「それでだね」
「そうだよ、今も大阪にいるのかもね」
こう言うのでした。
「あの人は」
「そう思うと何か嬉しいね」
「あの人が今も大阪におられると思うと」
「何か自然とそう思えて」
「ほっこりするわね」
「そうだね、幽霊といってもね」
そうした存在でもというのです。
「決して悪い存在じゃないから」
「あくまで人間だからね」
「魂だけの存在で」
「身体がないだけで」
「人間の心だからね」
「それでだからね」
「そう、その人が恐ろしいと幽霊も恐ろしい存在になって」
先生は皆にお話しました。
「そして楽しい人、いい人ならね」
「楽しい幽霊になって」
「いい幽霊になるよね」
「必然的にね」
「そうなるね」
「そうだよ、幽霊はね」
まさにというのです。
「人間だよ」
「だから怨みを飲んで死んだ人は怨霊になる」
「そうした人って生きている時から恐ろしいね」
「怨みを持っているから」
「だからね」
「そうだよ、日本の怨霊を見ると」
その人達をというのです。
「生きていた時、死ぬ間際は鬼気迫るものがあるね」
「そうだよね」
「生きながら魔王になっている」
「そして死んでもね」
「魔王になっているね」
「そうだよ、魔王はね」
まさにというのです。
「生きている頃からだよ」
「そうだよね」
「怨みによってそうなって」
「その時に人間でなくなっていて」
「魔王になっているね」
「既にね、だからね」
先生は日本の歴史にも出て来る彼等のことを思いながら言いました、先生はその人達のことに悲しいものも見ながら言うのでした。
「人間が一番怖いというのが日本の考えで」
「幽霊は何か」
「人間との違いは」
「身体があるかどうか」
「それ位の違いでね」
「他にどう違いがあるか」
「ないんだよ」
これがというのです。
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