私はいじわる 小悪魔が住みついた
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5-⑽
卒業式の日、私はお母さんと一緒に買ってもらった服を着て、学校に向かった。途中、香菜ちゃんと会って歩いていたんだけど、気が着くと昂君が後ろの方を離れて、やっぱり、お母さんと歩いていた。でも、お母さんは昂君から又、離れていた。
私達が校門のところで写真を撮っていたら、昂君も来たけど、お母さんは遅れている。
「昂 写真撮ろうよ なんで、お母さんと一緒に歩いてへんの―」
「恰好悪いやん」と、さっさ中に入って行ってしまった。
「そやから 写真・・・」声かけても、知らんぷりして行ってしまった。
ようやく昂のお母さんがたどり着いて、ウチのお母さんに
「もう、昂ったらね 私 パンプスでしょ 普段、スニーカーだから 久々で足が痛いから、ゆっくり歩いてって言って居るのに・・サッサッと行っちゃって 一緒に歩くの 恥ずかしいのよ あの子」
「奥さん 男の子って そんなもんよ 慎也もそうだったわ 憎まれ口ばっかーでね つまんないわね」と、慰めていた。
そのうち、鈴花ちゃんもやってきて、スカート穿いていた。グレーのチェックのブレザーにボックス型のスカート。私、スカートの鈴花ちゃんを初めて見た。そして、お母さんは相変わらずの半分刈り上げでもう半分は長くリボンと編んで垂らしながら、薄いグリーンのパンタロンスーツで・・。なんか、やっぱり目立つ。
「鈴花 スカート穿くんや 初めて見た」
「アホ ウチかて女の子やでー それにな 真珠 コレッ」と、スカートをチラッと上げて見せてきたのだ。何層もヒラヒラの付いた白い・・。
「なんなんや そのヒラヒラしたんは・・」
「おかあ がな 見えた時に、可愛いでしょって ウフッ 悩殺」
「あのさー 鈴花のお母さん・・って」なんと言っていいのかわからなかった。
「鈴花 そんなの見せんじゃぁないよー 見えた時の為」と、お母さんに言われていた。
その横を蘭ちゃんも、すーっと通って、最近は私にも無視してるみたいで、言葉を交わすことは無い。蘭ちゃんは赤いワンピースでそれもふわっとしたフレァなスカート。側のお母さんは紋付の着物姿だった。
「なに あれっ ピアノの発表会かしら 最近ますますブタになってさー」と、鈴花ちゃんは相変わらず嫌いみたいだ。ボロカスに言う。私は、聞こえないかとヒヤヒヤしていた。でも、鈴花ちゃんのお母さんは、蘭ちゃんのお母さんに愛想よく、頭を下げて、挨拶していたみたい。
校門を入るとPTAの役員さんらしき人と保健の先生が卒業生の胸に桜のコサージュを胸に刺してくれていた。式場の体育館に入る廊下で卒業生は、並ばされて待っていたんだけど、その時、鈴花ちゃんは男の子2・3人から冷やかされていた。
「鈴花も女の子だったんだなー かわいいねぇー 今日は、足を振り上げないんかー」
「てめえ等 それ以上 近づくと ぶっ飛ばすぞー ウチの最後の女の子らしいの 眼に焼き付けとけー」と、応酬していた。
式の途中、泣き出している子もいたけど、私は、悲しくなかった。最後、教室に戻った時も、先生から、最後の通知表を、一人ずつ前に呼ばれて一言声を掛けられて、渡されていった。その時、私は あの声が聞こえてきて、ハンカチを眼にあてながら出ていって
「先生 私 お別れするのが悲しくって・・涙が・・もっと、教えてほしかったです」と、心にも無い言葉を・・。しばらく、先生は私を見つめていたが、私の頭に手をやって
「織本 じゃぁ もう1年 留年するかー」と、ばれていた。私は、「べぇー」と、ベロを出して席に戻ってきた。次は昂君だったので、すれ違いざま「アホ」と・・
席に戻った時も、鈴花ちゃんが
「真珠 いつ女優になったん くっさい芝居 ウチのを見てな―」と、鈴花ちゃんの番の時
「高松 中学にいったら、その乱暴な言葉は気をつけなさいよ」と、先生が、
「あらー 先生 今まではわたくしの仮の姿のことよー 本当は 家でもとっても、女の子らしくてお上品ですのよ」と、戻る時、上体を前に倒すように・・見せていたのだ・・それも、先生に・・
鈴花ちゃんが私のほうを向いて、ウィンクしていた時、
「ウン その なんだー 高松も留年 するかー 風紀指導だなー」と、先生が笑いながら、言って居た。
それでも、最後に教室を去る時に、先生にお別れを言ったら涙が出てきてしまった。校門の近くに来るとみんなが写真を撮っていて、その中に、蘭ちゃんの姿が・・スカートをひるがえしながら、みんなを引っ張ってきていて写真を撮っていたのだ。そして、蘭ちゃんのお母さんが、数人のお母さんに
「ウチの子 中学は聖女子学院に行くのですわよ 特進クラスに受かっちゃたものですから・・だから、あの子、みんなとお別れが悲しくってね」と、自慢にしか思えなかったのだが、まわりの人に
「蘭ちゃんは頭が良くて・・可愛くて、お上品ですものねー」と、嫌味なんだろうけど、持ち上げられていた。それでも
「そーなんですのよー あの子 親に似ないで 良かったですわー」と、私は、あきれていたら、蘭ちゃんが昂を見つけて
「昂君 写真 一緒に 撮ろうよー お別れやん」と、
「なんで 女何かと・・ 香菜、真珠 登校班 帰るぞ」と、校門を出て行った。私達、戸惑いながら、後に続いて、私は、心の中で
「よしっ 昂 偉い やっぱり、ウチの昂やー」と、叫んでいた。
そして、校門を出たとこで、昂君が待っていて
「早くしろよ 写真撮るんやろ」って
その日、私は「やっぱー 昂 恰好良い だーい好き」と、部屋に貼ってあるあこがれの人のポスターをはずして、洋服ダンスの奥にしまったのだ。
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