| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

仮面ライダーAP

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

外伝 ライダーマンG&ニュージェネレーションGライダーズ
  第1話 時代の残滓達

 
前書き
◆今話の登場ライダーと怪人

番場遥花(ばんばはるか)/ライダーマンG
 警視総監・番場惣太(ばんばそうた)の1人娘であり、シェードによって右腕を改造された過去を持つナイスバディな女子高生。ライダーマンGに変身した後は、改造された右腕に様々なアタッチメントを装着して戦う。マシンGチェイサーに搭乗する。年齢は17歳。

明智天峯(あけちてんほう)/ゴールドフィロキセラ
 ノバシェードの首領格であり、金色のフィロキセラ怪人に変身している男。物腰は丁寧だが性格は残忍そのものであり、自分達に刃向かう遥花を抹殺するべく、彼女を因縁の地へと誘い込む。年齢は30歳。

上杉蛮児(うえすぎばんじ)/シルバーフィロキセラ
 天峯の側近であり、銀色のフィロキセラ怪人に変身している男。粗暴かつ野蛮な戦闘狂であり、改造人間としてのアイデンティティに強いこだわりを持っている。年齢は26歳。

武田禍継(たけだまがつぐ)/ブロンズフィロキセラ
 蛮児と同じく天峯の側近であり、銅色のフィロキセラ怪人に変身している男。寡黙で冷徹な人物であり、羽虫を潰すような感覚で多くの命を奪ってきた。年齢は28歳。
 

 
 ――2019年9月1日。
 東京都稲城市風田改造被験者保護施設跡。

「ここに居るのは分かってる……! 出てきなさい、ノバシェードッ!」

 かつて仮面ライダーAPと、仮面ライダー羽々斬(ハバキリ)の最終決戦が繰り広げられたこの場所に――1台のレーサーバイク「マシンGチェイサー」が駆け付けて来る。真紅に彩られたそのボディには、「G」の意匠が刻まれていた。
 そのバイクに跨っていた1人の美少女は、艶やかな黒髪を靡かせて颯爽と飛び降て来る。彼女の眼前には、文字通り「何もない」更地が広がっていた。

「……っ」

 かつて彼女――番場遥花(ばんばはるか)を含む改造被験者達を収容していた、風田改造被験者保護施設。それが存在していた頃の記憶が鮮明に甦り、遥花は独り眉を顰めている。

「……ふふ、あなたにとっても懐かしい場所でしょう? この地は」
「……! 出たな、ノバシェード! 光学迷彩でかくれんぼだなんて、『シェードの後継者』も子供っぽいことをするのね……!」

 ふと、何もかも見透かしたような声が響き渡り。遥花の前に突如、3体もの異形の怪人が現れる。
 両腕から無数の触手を伸ばしているその醜悪な姿は、10年前に初めて観測された個体と同じ、「フィロキセラ怪人」そのものであった。

「ハハァッ! 本当にノコノコと追っかけて来やがったぜ、このバカ女!」
「……愚か者め。わざわざ殺されに来るとは」

 金、銀、銅。それぞれ3色の体色を持っているフィロキセラ怪人の亜種達は、いずれも下卑た笑みを浮かべて、眼前の遥花を舐めるように見つめている。

 金色の怪人「ゴールドフィロキセラ」こと、明智天峯(あけちてんほう)
 銀色の怪人「シルバーフィロキセラ」こと、上杉蛮児(うえすぎばんじ)
 銅色の怪人「ブロンズフィロキセラ」こと、武田禍継(たけだまがつぐ)
 彼らの眼は遥花の真摯な表情を、冷酷に嘲笑っていた。

 新時代「令和」を迎え、17歳の女子高生になっていたこの当時の遥花は、確かに3年前よりもさらに女性らしい身体付きに発育している。
 桃色と白のパーカーを内側から押し上げる巨峰と、くびれた腰。絹のような黒髪に、白い柔肌と桜色の愛らしい唇。そして、男の劣情を掻き立てる巨尻。全てが「男好き」する要素に満ち溢れていた。

 彼女がいわゆる「半改造人間」であることが周知されている現在でさえ、告白やスカウトが絶えないほどの美貌とプロポーションなのだ。
 警視総監の娘にして現代の「仮面ライダー」、という身の上でなければ、強引な手段で関係を持とうとする男達の影は増える一方だったことだろう。新体操部での練習中や水泳の授業中、邪な視線に完全包囲されたことも一度や二度ではないのだから。

「未だに能力無効化の手術を受けていない『仮面ライダー紛い』って奴が、どんなもんかと思って見てみりゃあ……ハハァッ!」
「右腕以外はただの人間、と来たものだ。生身に毛が生えた程度の分際で、正真正銘の改造人間に刃向かおうなどとは片腹痛い。まさか我が同胞達を次々と捕まえているという『仮面ライダー紛い』とやらが、このような小娘だったとはな」
「小娘で悪かったわね……。あなた達のような連中がのさばってたら、この『右腕』も捨てるに捨てられないのよ」

 だが、怪人達――特に蛮児と禍継が着目しているのは、世の男を狂わせる「女」としての容姿ではない。右腕以外は生身という、改造人間としての「脆弱さ」を嗤っているのだ。
 それでも遥花は激情に駆られることなく、真っ直ぐな眼差しで怪人達を射抜いている。

「……これ以上罪を重ねたら、『身体』だけじゃなく『心』まで引き返せなくなる。今からでも、止めるつもりはないの?」
「ご存知でないようでしたら、教えてあげましょう……番場遥花。そう言って降伏を呼び掛けて来た者達は皆、こうやって殺されているのですよ!」
「……ッ!」

 明智天峯――もといゴールドフィロキセラが、しなる触手を鞭のように飛ばして来た瞬間。遥花は軽やかに地を蹴ると、下着が見えることも厭わずミニスカートをはためかせて、颯爽とジャンプする。
 その回避行動を読んでいたゴールドフィロキセラは、触手をさらに激しくしならせ、滞空している遥花の首を狙った。が、彼女は宙を舞っている状態のまま、くの字に仰け反り触手の追撃をもかわしてしまう。

 当然ながらその素早さに、改造されている右腕は関係ない。紛れもなく、遥花自身が磨き上げてきた身体能力によるものであった。

「ヒュウー! あのバカ女、なかなかイイ動きするじゃねぇか。しかも清楚なツラしてるくせして、随分とスケベなパンティ穿いてやがる」
「今の身体能力……恐らくは新体操で培ったものだろう。女性ならではのしなやかな柔軟性……侮れん動きだ」

 鮮やかに触手をかわすその挙動に、シルバーフィロキセラは口笛を吹いている。寡黙な態度を崩さないブロンズフィロキセラも、遥花の運動神経を素直に認めていた。
 仰け反った勢いのまま後方に回転した遥花は、豊満な胸と尻を揺らしながら、体勢を乱すことなく着地する。やはり対話による解決は、困難であるようだ。

 ――近年、世界各地でテロ行為を繰り返している武装組織「ノバシェード」。
 3年前に全滅したシェードの後継者を自称している彼らは、正確にはシェードと密接に繋がった組織というわけではない。

 元々はシェードに対抗するためとして、世界各国の軍部によって改造人間にされた被験者達の集まりなのだ。シェードの怪人という「本場」の人間兵器には及ばず、それでいて生身の人間ではない。
 そんな最も中途半端な立場であるが故に、適切な処置や支援を得られなかった者達が、寄り集まって生まれた組織なのである。

 3年前の戦いでシェードが全滅した後に発足した、城茂(じょうしげる)内閣。その新たな日本政府による主導の元、現在は改造人間の能力を無効化する手術によって、被験者達の社会復帰を支援する動きが広まっている。
 そうした救済の手は日本国内に留まらず、世界各国にも差し伸べられているのだ。サイバネティクスにおける世界的権威・結城丈二(ゆうきじょうじ)博士は、今日も世界中を飛び回っているのだという。

 だが、全世界の被験者全てが漏れなくその恩恵に預かれているわけではない。能力無効化の手術を施行できる医師や設備が有限である以上、どうしても「後回し」にされてしまう者達がいる。
 そういった者達は人間社会に溶け込めないまま、無害であることを証明することすら出来ず、改造人間を恐れる人々からの迫害に晒され続けなければならないのだ。その責め苦に耐え切れず、自ら命を絶ってしまうケースも決して少なくはない。

 そして、そのような恵まれない者達の中には当然、そのまま時代の犠牲になることを拒む者も居た。
 改造人間であるが故に人間社会に入れず、シェードが滅びた今となっては怪人にもなれない。ならば「新たなシェード」を自分達で創り、そこを安住の地にするしかないのだと。

「あなた達は……本当に、それでいいというの」

 それが、ノバシェード。令和という新しい時代に取り残され、際限なく悪の道に進まざるを得なくなった者達の、哀しきエデンなのである。
 彼らは自分達の居場所を築くため、人々に助けを求める資格すら、自ら投げ捨ててしまったのだ。
 
 

 
後書き
 久方振りに、新章開幕でございます(´-ω-`) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧