イベリス
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第四十三話 麦わら帽子その五
「そうなのです」
「そうですか」
「実は今も両目で見ています」
速水は微笑んで話した。
「これでも」
「左目も見えているんですね」
「そうです、ですからご安心を」
ここでも微笑んで話した。
「私は両目が見えるのです」
「両目が見えていますか」
「普段左目を出していないので見えているかわからないですね」
「実は」
咲は正直に答えるべきと思い実際にそうした。
「そうでした」
「ですが普段からです」
「左目でもですか」
「もの見ています」
「それで両方共一・五ですか」
「そうです、ですから」
それだけの視力だからだというのだ。
「眼鏡はしておらず」
「コンタクトもですか」
「使っていません、そしてサングラスもです」
「かけられないですか」
「そうです、そして帽子もです」
こちらもというのだ。
「着けません」
「そうされているんですね」
「それでも日射病や熱射病への備えはしています」
そちらはというのだ。
「熱中症対策は忘れていません」
「真夏でもですね」
「実は夏でもこの服装ですが」
「スーツなんですね」
「生地は薄くしています、むしろ肌を日光に晒すことは」
「されないですか」
「余計に熱くなるので」
だからだというのだ。
「半袖はです」
「なられないですか」
「それでスーツです」
「それを着られていますか」
「そしてコートも」
「そちらもですか」
「コートも着なければ」
さもないと、というのだ。
「私は占いの力を最高に発揮出来ないのです」
「そうなんですか」
「タロットカードの力を」
咲に真剣な顔で話した。
「そうなのです」
「それはどうしてなんですか?」
「青いスーツ、白いコートとブラウス、赤いネクタイとコートの裏地にです」
それにというのだ。
「黒い靴と髪の毛で」
「四色ですね」
「そこに黄色、五色ですね」
「あれっ、その色って」
咲は黄色まで聞いてはっとなって言った。
「確か中国の」
「五行思想ですね」
「そうですよね」
「そうです、私は中国の五行も入れているのです」
「そうだったんですか」
「この五色が揃ってこそです」
それ故にというのだ。
「私は万全の力を出せるのです」
「そんな秘密があったんですね、ただ」
ここまで聞いてだった、咲は。
速水の四色はわかった、だが残り一色がどうしてもわからず彼に問うた。
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