そんなこと出来るか
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第三章
「今やしゃ孫と話したが阪神タイガースを優勝、十連覇させてくれるか」
「そんなこと出来るか」
悪魔は老人に怒った声で言った、見れば鳩の顔だがそこに血管がある。
「悪魔に出来ないことを約束する考えはないわ」
「何っ、出来んのか」
「わしはこれまで百人にそう言われて召喚されとるぞ」
ハルパスはこうも言った。
「どいつもこいつもふざけるな」
「わしは大真面目じゃぞ」
「大真面目に途方もないことを言うな」
「別にパレスチナを平和にしろとか言っとらんぞ」
「そっちの方がまだ出来るわ」
「あそこ以上か」
「そうじゃ、というか爺貴様人間としてはかなり年寄りだが幾つだ」
ハルパスは右手、鳥の翼のそれで彼を指差して問うた。
「一体」
「もう九十六じゃ、阪神ファン暦球団の歴史分じゃ」
「それだけファンなら知っとるだろ」
「何をじゃ」
「阪神に憑いておる呪いだ」
このことをというのだ。
「あれのこと知らぬとは言わさんぞ」
「あっ、甲子園には魔物がいるっていうわね」
黒羽がここでこのことを思い出した。
「そうだったわね」
「うむ、だから高校野球で信じられぬ試合が多い」
治平は高校野球もよく観る、それでこう言ったのだ。
「甲子園にはまさにじゃ」
「魔物がいるわね」
「その通りじゃ」
「あの魔物はサタン様でもないとどうにもならぬわ」
ハルパスは怒った声のまま言った。
「日本の八百万の神々でもそう言うておるぞ」
「そういえば西宮大社に毎日お願いしてもじゃな」
「ひいひいお祖父ちゃん他にも色々神社行ってもお願いしてるわね」
「どの神社に行ってもな」
「お寺にもね」
「あらゆる神仏にお願いしておる」
またやしゃ孫に話した。
「そうしておるがのう」
「優勝してないわね」
「去年は天理まで行ってな」
「あそこの神様にもお願いしたわね」
「あの大きな神殿を一周してな」
そうしてというのだ。
「そうしたが」
「駄目だったわね」
「そうじゃのう」
「あらゆる神仏に頼んで駄目ならわかれ」
ハルパスの声は完全に怒ったものだった。
「悪魔でも無理だ」
「無理か」
「魔物だけでもな」
魔王はさらに言った。
「阪神はもう一つ憑いておるから余計だ」
「あれか」
「そうだ、あれだ」
すぐに察した治平に告げた。
「カーネル=サンダースだ」
「あの日本一の時か、わしも道頓堀まで行って飛び込んだ」
「あの時バースに似ていると言ってあのおっさんも堀に入れたな」
「それで中々見付からなかったのう」
「あの男の呪いもあるのだ」
魔物だけでなくというのだ。
「魔物と同じだけ凶悪な呪いがな」
「あらゆる神仏でも敵わぬか」
「魔王ですらな、わし一人でどうにかなるか」
「ううむ、では今回の契約は」
「結ぶ筈があるか」
やはり怒った声だった。
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