タイトル案は第一話に記載しています。
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Episord of Zero
それは、ある日突然現れた。
何処かから発生した異形の怪物。
それらは、たちまちのうちに王都を蹂躙し、王城を奪った。
人はそれらを、「魔族」と呼んだ。
特に人類を苦しめたのは、四体の個体だった。
それらの上位個体を、人は「四天王」と呼んだ。
そして、人類から最も遠い地、王城を占拠する上位個体を「魔王」とし、最終討伐目標とした。
そんなある日、追いつめられていた人類に転機が訪れる。
魔法が発現したのだ。炎に氷、そして風。
それらは、人類に戦う力を与えた。
そして......
「これは...何?」
ある少女、アリシアに光魔法が発現する。
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~帝都フィルナス=ルヴェーレ~
「うわぁ。今日が本番かぁ。緊張するなぁ。」
帝都周辺の魔族群の前に立つのは、背の低い金髪の少女、アリシアだ。
光魔法の使用テストのため、魔族の領域に来ていた。
(なんで私なんだよぉ。しんどいなぁ...)
「ま、そんな緊張するなよ。いざとなったら、俺が全部吹っ飛ばしてやる」
少女を励まそうとしているのは、少女と同年代位の、どこにでもいそうな若い少年だ。
「おいおい、お前の貧弱な風魔法で何ができるってんだよ」
その少年を茶化すのは、同じく同年代くらいの、細身で背筋の曲がった少年、レックだ。
「んだとレック、馬鹿にしやがって。俺だってやればできるんだよ」
「おお、そいつは楽しみだぜ」
「あのデカいのを倒してやるよ」
そう言って、少年は比較的大きめの魔族へ突っ込んで行った。
「喰らえ!!!!!!!」
腕から風を発生させて、魔族へとぶつける。
だが、魔族は少し怯んだだけだった。
「っておい!!危ねえな!!」
レックが飛び込み、魔族の攻撃を氷で防ぐ。
「流石に風で物は斬れないだろ、ったく」
「そんなの、やってみなくちゃわからないだろ」
「しょうがねぇ、こいつ倒すか」
そう言って、レックは魔族の前に立ち塞がる。
「いくぜ!!喰らえぇ!!」
拳を氷で包み、魔族へと殴りを入れる。
しかし、魔族は多少怯んだだけで、これも大して効かなかった。
「おい!!お前こそ、氷で威力出るわけないだろ!!」
「くっそぉ、俺の氷が効かねぇとは、こいつやるな」
そんなやり取りを交わしながら、一進一退の攻防を繰り広げる。
「アリシア!!悪い!!力を貸してくれ!!!」
「えー?わかったよ、やればいいんでしょ」
(なんで一体目がこんなデカいんだよぉ。効くかなぁ、この光魔法とかいうやつ)
「は、はああああああああ!!!!!!!」
大きな掛け声で、光を放つ。
「おお、まじか」
その光は、魔族を蒸発させた。
「すげぇな!!こんなに強いと思わなかったよ!!」
少年が驚いた声を上げる。
「やるなぇ、俺の次くらいには強いかな」
レックがニヤけながら言う。
「ぜぇ、ぜぇ、ど、どうだぁ...やったぞぉぉ....」
バタッ、と地面に倒れた。
「これ疲れるんだけど。こんなの何発も打てないよぉ」
「なんて威力だ!!!これはまさに希望の光!!!」
その様子を見ていた人々が、喜びの声を上げていた。
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「なあレック、アリシアどうなるんだろうな」
「さあね、知る由もないことだよ」
レックは相変わらず素っ気ない反応をする。
魔族に攻められ、追い込まれていった人類の指揮系統は曖昧で、光魔法を使えるアリシアを頭に据えようとする動きがあるらしい。
「なんか、ここでこうしているのって、まるで俺達が何もできないみたいだよな」
「別にいいんじゃねぇの。偉くなるのは良いことだろ」
ここは家賃の安い家で、レックと二人で暮らしている。
アリシアとは幼馴染で家が近かったが、今は大きな建物にいる。
レックはまだ幼い頃に住処を追われてここへ来て以来、俺は一応親友だと思っている。
「なあ、何でお前は戦うんだ?」
ふと気になって聞いてみた。
「しょうがねぇな、語ってやるか」
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俺の故郷は、雪が降り積もる雪原で、一面の白さが綺麗なところだった。
俺はその場所が気に入っていたんだが、ある日、魔族が攻めてきて、そこから逃げなくちゃいけなくなった。
それ以来、俺は何かに好感を持つことができなくなった、いや、怖くなったんだ。いつか、失うかもしれないと思ってな。
だから、俺は、故郷と、自分の心を取り戻すために戦うのさ。
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「へえ、そうなのか。まあ、頑張れよ」
「おい、聞いといてそれかよ。じゃあ、お前はなんで戦ってるんだ?」
「そりゃあ.......」
「何だよ」
「誰かを守るため、かな」
「はあ?ひょっとして、アリシアか?」
ニヤニヤしながらレックが聞いてくる。
「別にそんなんじゃねえよ。それと、人がわざわざ暈したことは深く聞かない方がいいぞ」
「おいおい、俺は全部話しただろー?」
「へいへい、全部当たってるよ」
そのまま、俺達は眠った。
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あー、なんでこんなことになってるの??
私が今いるのは今の人類の中心みたいな場所だ。
魔族が攻めてくる前は、人類は王政を敷いていたらしいけど、魔族の侵攻で曖昧になったらしい。
それで、私に白羽の矢が立ったわけだ。
はぁ...やだなぁ.....
「あの、どうしても私がやらないとダメですか?」
とりあえず、そこにいた人に聞いた。
そのとき、
「伝令!!!魔族が攻めてきました!!!!」
「なに!?攻めてきただと!?」
「出撃だ!!ここが落とされれば、今度こそ後がない!!」
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「はぁ...やるかぁ.....」
攻め込んでくる魔族を見つめ、アリシアが溜息をつく。
帝都を取り囲む防壁の外側に、人類の戦力が立ち並んでいる。
「まあ、そんな心配するなよ。いざとなったら俺が...」
「お前は後方支援だ。風魔法で無茶すんな」
「またあんた達と一緒かぁ.....」
なんやかんやで、俺達三人は昔からよく一緒にいた。
「おいおい、俺は人類最強の男だぜ?」
「氷パンチ野郎が何言ってんだよ」
「だっせえなぁ!もっとあるだろ!」
と、そんな風に話していると、いよいよ時が迫ってきた。
「さて、そろそろだな」
人類は、向かってくる魔族に向かって突き進んでいった。
「敵が見えたぞ。レック!氷魔法だ!!」
「へいへい、わかってるよ」
レックが氷魔法を発動し、数体の魔族の進行を阻む。
「今だアリシアー。あ、ミスってもいいように氷二重にしてるぜ」
「いちいち!煽ってくるなぁ!!」
アリシアが光魔法を発動し、魔族のいる辺りへと光が行くが、少しズレていた。
「あー、やっちゃったなぁ.....」
「いや、任せろ!!!」
風魔法で進路を正し、更に勢いを加速させ、魔族にぶつける。
そこにいた数体は、見事消え去った。
「よしっ、まずは一勝!!!」
そう言ったすぐ後のことだった。
体躯が大きく、雰囲気の違う魔族が近寄ってきたのである。
「あいつ強いんじゃないか?」
「さあね、どの道、避けては通れないよ」
「は、はは。やっぱり強そうじゃないかな....」
アリシアが光魔法を使おうとした瞬間、そいつは凄い速さで接近した。
「危ない!!!!」
そう叫んだも間に合わず、アリシアは攻撃を喰らって吹っ飛んだ。
「アリシア!!!!」
「案ずるな、大した怪我はしていないはずだ」
見ると、レックが寸前に氷で守ってくれたらしい。
「....ありがとう」
「いや、なんでお前が感謝するんだよ」
アリシアはどうやら動けなくなっているらしい。
ここは俺達二人で何とかするしかなさそうだ。
「よし、二人で攻めるぞ!!」
「....いや、お前は後方支援だ」
「は?なんでだよ。お前一人で...」
「風魔法じゃ攻撃できないだろ。いいから任せておけよ」
「でも......」
「そう心配するなよ。いざとなったら俺が凍り付かせてやる、なんせ、俺は人類最強だからな」
「死ぬなよ、レック」
「......ああ」
敵の前に立ち、拳を氷で固める。
「俺がこいつを叩き潰す。お前は俺の拳を風で加速させろ」
「ああ、わかった」
魔族とレックはほぼ同時に走りだした。
そして、両者共に攻撃が届く範囲へと迫る。
「喰らえぇぇ!!!!!!」
勢いよく、レックが氷の拳を突き出す。
それをすかさず、風で加速させていく。
「・・・」
接近したまま、両者は動きを止めた。
氷は、確かに魔族に届いている。
そして、片方が倒れた。
立っているのは、僅かに氷の残った右手を下ろし、その場に佇むレックだった。
「倒した...?」
後ろでアリシアが起き上がって呟く。
「ああ、俺の、勝ちだ」
そう言って、レックはその場に倒れた。
「レック!!?」
二人同時に駆け寄る。
見ると、レックの腹は斜めに裂かれていて、血が流れ続けていた。
「大丈夫か!?」
焦って、そんなことを口にする。
「おいおい、これが大丈夫だって?ばーか」
掠れた声で、そんなことを言った。
「何とかして、助けられない?」
アリシアが震えた声で言う。
「悪い、俺はもう駄目だ」
「...そうか。じゃあ、何か言い残したいことはあるか?」
できるだけ明るい表情で尋ねる。
「なあ、人は、死んだらどこに行くと思う?」
「...さあな」
「何も無くなるんじゃ寂しいよな。だから俺は、死んだら幸福な場所に行くことにするよ」
「じゃあな。また会おうぜ」
そう言い残して、息を引き取った。
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ー三年後ー
三年前の魔族の攻勢を何とか乗り切った人類に、再び脅威が訪れる。
そのときの魔族の数よりも、格段に多い数が今、帝都へと向かって来ていた。
「来るぞ!!迎え撃て!!!」
襲来する魔族へ人類が攻撃を始める。
「もっとだ!!もっと喰らわせろ!!!」
人類はやや劣勢で、何とか持ちこたえていた。
(よし、まずは十三体、一気に仕留める!)
「なんだ?あいつは...?」
魔族の群れの中へ突っ込んで行く男に目を向ける。
「喰らえ」
嵐が吹き荒れ、魔族を片っ端から切り刻んでいった。
「あいつ、風魔法で敵を斬ったのか!?」
「そんな馬鹿な!?あれほどの威力が出せるのか!?」
(あれから、レックが死んでから、俺は強くなろうと意気込んだ。その結果、風で敵を斬れるまでになったわけだ。まあ、まだまだあいつには届かないがな。せいぜい、先に行ったあいつにカッコ悪いところは見せないようにしないとな)
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「聖女様!後は頼みます!!」
「ええ、後は任せなさい」
人類の中心にいる、聖女と呼ばれる人間が、手から大きな光を出す。
そして、光をそのまま放り投げて、目の前の魔族を殲滅した。
(あいつ、アリシアか?ずいぶん大層な肩書きを得たよな、まったく)
「よし!!やったぞ!!!」
「いいえ、まだ終わってません。気を引き締めて」
瞬間、空から咆哮が轟いた。
天から舞い降りて来たのは、大きな白い竜だった。
「なんだ...あれ」
「まさか、四天王じゃないか!?」
また、大きな咆哮が鳴り響き、竜の口が光った。
それは雷鳴のように、地面へと落ち、辺りを破壊し尽くした。
そして、竜は地面へと降りて来た。
「くそっ、とにかく、帝都へは近づけさせない!」
急いで、竜の元へと向かう。
そこには、一人の少女がいた。
「そこの人、少し手を貸していただけると。って」
「こいつを倒すぞ、アリシア」
近づいて来たのが俺だとわかった途端、張り詰めていた表情が少し和らいだような気がした。
「どうする?」
「一撃だけ防いで。あとは、私が叩く」
一撃、防げばいいんだな。
巨大な竜の前に立ち、構えた。
竜はその翼を大きく広げ、素早く戻す。
その攻撃は、風だった。竜の暴風が、俺に迫ってくる。
とてつもない威力だ。だが、
拳を固く握り、風を集める。
そして、掻き集めた風圧を、竜の暴風へぶつけた
「くっ..!」
多少押されたが、何とか相殺した。
「あとは任せて」
俺の横をアリシアが通り抜けていった。
「はあああああああああ!!!!!」
そして、竜の周囲は光に包まれていった。
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光が収まり、次に見えたのは、帝都から反対側へ逃げていく竜の姿だった。
とりあえず、帝都は助かったみたいだ。
「アリシア、お前のおかげで、帝都は助かったよ」
「へへ、そうかな」
さっきの戦闘で致命傷を負ったアリシアを抱きかかえて言う。
「もう、自分が弱いせいで誰かが死ぬのは嫌だったから」
「...そうか」
「無くなる前に、聞いて貰っていいかな?」
「ああ、何でも聞くよ」
「やっぱり、死んだあと何もないのは寂しいし、怖いな」
「...そうだな」
「だから、創ろうよ。死んだら幸せな場所に行けるようなものを。私、聖女だから、できると思う。私を神ってことにして、聖典を広めるの。少し恥ずかしいけどね。それで、正しい人は死んだあとで救われることにしたら、いいと思う」
「ずいぶん、人が死んだね。でも、まだ終わりじゃない。次の世代は、もっと強いかもしれない。だから、あなたがみんなをまとめてあげて。うん、軍を作ろう。一番偉い人は何て言うんだっけ?そうだ、大佐とかいいんじゃないかな。」
「わかった。必ず成し遂げて見せる」
「...私は上手くできなかったから。次に光魔法が生まれた人、きっと私よりも強くなれる。だから、その聖典に、みんなの為に戦えるような教えを書こう。もしその人が、それを少しで絵も読んでくれたなら、私は嬉しいな。うん、聖女の次は、勇者にしよう。それで、これ書いてみたんだけど...」
「?」
「第四項。穢れなき魂は、死後救済の地へと導かれる」
そこには、聖典の本文らしきものが書かれてあった。
「じゃあね。人類を頼んだよ、バルタザール」
ああ、必ず。
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ー数十年後 大戦開始前 軍本部ー
あれから、私は軍を結成し、聖典を作成させた。
聖典は、色々手が加わって、アリシアが書いた原典とは違う形になったけれど、人類の為に戦わせるためには良いものになったはずだ。
必ず、人類を救ってみせる。
私と、軍の人々と、そして、勇者で。
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