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レーヴァティン

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第二百四十話 運河の街でその五

「寒いからか」
「はい、一度に出しますと」 
 料理人は久志に答えて述べた。
「すぐに冷えますので」
「それでだよな」
「一皿ずつです」
「持って来てくれるんだな」
「そうしています」
「他の地域じゃ一度に出して食うけれどな」
「寒い地域ではです」
 どうしてもというのだ。
「すぐに冷えるので」
「だからだよな」
「この様にします」
「そうだよな」
「コースですね」
 料理人は笑ってこの言葉を出した。
「まさに」
「そうだな、一品一品出すのがな」
「左様ですね」
「それじゃあそのコースをな」
「今宵は召し上がられますね」
「ああ、しかしこの街よりもな」
 ペテルブルグよりもとだ、久志は言った。
「カレリアは寒いな」
「北の半島全てが」
「島の方もな」
「左様です」
「それな、あったかいもん出してもな」
 そうした食べものや飲みものをというのだ。
「実際紅茶だってすぐ冷えるな」
「ここでは何もかもがです」
「あっという間に冷えるな」
「ですから料理もです」
 これもというのだ。
「一品一品出しまして」
「冷えたものを食わない様にしてるな」
「左様です、お酒も」
「ウォッカだよな」
「凍らないものを」
「本当に何でも凍るんだな」
「油でさえも」
「とんでもないな」
「そこはもう念頭に置いてです」
「料理もしてるんだな」
「そうなのです」
「そのことわかってたけどな」
 久志もそれはと述べた。
「けれどここまで実感したことはな」
「はじめてですか」
「ああ、それでバイキングの連中はここより寒い場所にいるか」
「そこで生まれ育ち」
「戦ってきてるな」
「この寒さとです」
 そうしてというのだ。
「波に育てられてきました」
「過酷な自然にか」
「だからこそ強いのです」
「一人一人がな」
「そうなのです」
「連中なりに集団戦闘もするしな」
 久志はこのことも話した。 
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